先日のキネ旬シアターは『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』でした。
監督・脚本:井上淳一
出演:井浦新、東出昌大、芋生悠、杉田雷麟、コムアイ、竹中直人
製作:2023年 日本
1980年代に故・若松孝二監督が名古屋に作ったミニシアター「シネマスコーレ」を舞台にした、映画に魅了された若者たちの青春を描いたドラマです。
2018年公開の前作『⽌められるか、俺たちを』は1969年を時代背景にしていましたが、今作はそれから10年後の1980年代が舞台です。この時の脚本も井上淳一です。
時代は変わりました。シラケ世代でビデオが普及し、映画館から客足が遠のいてきた時代です。そんな時代に逆行するように、若松孝二は名古屋にミニシアターを作ります。その名も「シネマスコーレ」、ラテン語で「映画の学校」という意味です。支配人を任されたのは池袋の文芸座を辞めた⽊全純治でした。彼はその時は「これからはビデオの時代」とばかりにビデオカメラのセールスマンをやっていました。
木全は若松監督に翻弄されながらも持ち前の明るさで劇場の経済的危機を乗り越えていきます。そしてそこには映画に魅了された若者たちが集まってくるのです。
一人は在日朝鮮人の女子大生で映画を作りたいのですがうまくいきません。やむを得ずシネマスコーレでバイトを始めます。
もう一人は河合塾に通う浪人生で、映画好きで、中でも若松孝二の大ファンでシネマスコーレに通い続けます。そして若松監督がシネマスコーレに現れた時に思わず「弟子にしてください」と言って、東京について行ってしまいます。そこから監督の厳しすぎる指導が始まります。実はこの予備校生がこの映画の監督•脚本の井上淳一なのです。最近では映画『福田村事件』の脚本も書いています。
この二人と若松監督、⽊全支配人が絡んで映画は進みます。
⽊全純治さんは1973年に池袋文芸座に入社し文芸地下の日本映画を担当していたそうです。1973年というと、私が上京した年です。そして池袋の文芸座と文芸地下には毎週のように通っていました。文芸座が洋画で地下が日本映画でした。あの当時、確か入場料が150円とか200円だったと思います。しかも毎週オールナイトで5本立ての日もありました。貧乏学生にはありがたい場所だったのです。その他にも格安の名画座がたくさんありました。映画には⽊全純治本人もチラッと出演しています。
若松孝二監督の作品もかなり観ました。ピンク映画が多かったのですが、政治色の強い映画も何本か製作していました。『赤軍-PFLP・世界戦争宣言』『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』など、なかでも2008年の『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』が印象深かったです。この時の主演で坂口弘を演じたのが、今回の映画の主演井浦新です。その後も若松監督の作品に何本も出演していました。
とにかく懐かしい映画のタイトル、ポスター、それに様々な映画監督や有名人の名前が飛び出して来るなど、映画好きにはたまりません。映画の中で若松監督が自分の映画が売れずに悔しがって「なんで大林のつまらん映画が売れるんだ。だから日本の映画界は駄目なんだ」みたいな発言をする場面には思わず笑ってしまいました。館内も大ウケでした。
それでは今日はこの辺で。