先日のキネ旬シアターは『ぼくが生きてる、ふたつの世界』でした。
原作:五十嵐大『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
監督:呉美保
脚本:港岳彦
製作:2024年 日本
作家・五十嵐大の実話を元にした同名原作の映画化です。
宮城県の小さな港町で暮らす五十嵐家に男の子が誕生し、「大」と名付けられます。両親ともに「ろう」で、その両親に育てられた健常者の大にとって、母の通訳をするのは当たり前のことでしたが、成長と共に周囲からは「障碍者の子」として見られていることに気づき、周囲からの特別な目に苛立ちを覚えます。母への感情を抑えきれず、誰も知らないところで暮らしたいと、逃げるように東京へ向かいます。
東京へ出てからも職を転々とし、なかなか定職に就けません。ようやく偶然に小さな編集社に勤め、記事を書くことを覚えていきます。さらに、ろうの人たちとの交流もあって母親への反抗心は次第に変化していきます。
東京へ出て8年が過ぎた頃、父親がくも膜下出血で倒れたとの連絡で久しぶりに帰郷します。その帰省中に伯母から母親が大を妊娠した時に両親から、ろうの夫婦から生まれる子はろうに決まってる、絶対堕ろせと言われたけど母親は大を生んだんだという話を聞かされるのです。それを聞いた大は母親への感謝の気持ちを大きなものとしてゆくのです。
大が生まれたときから歩き始め、小学校、中学校、高校とそれぞれの時代が何の不自然さもなく描かれてゆきます。中学時代の反抗期には母親への罵倒に胸が痛みますが、東京へ出てからの心の成長ぶりに心が温まり、思わず涙が溢れそうになりました。
母親役の忍足亜希子さんが素晴らしかった。彼女自身もろう者俳優です。
劇中、コーダという言葉が出てきますが、コーダとはChildren of Deaf Adultsのことで、ろう者の親を持つ健聴者の子供のことを指します。以前観た映画にもありました。
それでは今日はこの辺で。