Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

映画『ガラスの城の約束』を観る

昨日のキネ旬シアターは『ガラスの城の約束』でした。

f:id:lynyrdburitto:20190816104047p:plain

 

監督:デスティン・ダニエル・クレットン

原作:ジャネット・ウォールズ

主演:ブリー・ラーソンウディ・ハレルソンナオミ・ワッツ

制作:2017年 アメリカ、2019年 日本公開

 

アメリカの人気コラムニスト、ジャネット・ウォールズのベストセラー回顧録を映画化したものです。

 

あらすじを簡単に。

 

ジャネットは姉、弟、妹の4人兄弟姉妹。父親はレックス、母親はローズマリー。両親は勝手気ままで夢ばかり追いかけている父親と売れない画家の母親。

 

ジャネットはニューヨーク・マガジンのコラムニストで、ある日レストランで婚約者と食事をした帰り、道路で暴れている父親・レックスとゴミ箱漁りをしている母親・ローズマリーを見かけます。ジャネットは見て見ぬふりをします。しかし、レックスは気付きました。

「ガラスの城の約束」の画像検索結果

 

それをきっかけにジャネットは過去を思い出していきます。現在と過去が繰り返し描かれます。家族のことは婚約者にも話していませんでした。

 

幼い頃、両親は夢ばかり追いかける人達でした。レックスは「ガラスの城を建てる」と言い、失業する毎に引っ越し、車上生活も。ローズマリーは絵に夢中でネグレクト状態。生まれたばかりの赤ん坊の世話まで子供達もが看ました。それでもレックスは子供達には愛情を注いでいました。子供達も憧れの父親でした。父親は自分勝手でわがまま放題ですが、博識で技術もあり、何より子供には優しい父親でした。

 

f:id:lynyrdburitto:20190822131726p:plain

しかしレックスは次第に酒に溺れ、暴力的になりました。子供達も成長するにつれ、そんな父親を鬱陶しく思うようになりました。兄弟たちは皆で家を出る約束をします。そのためアルバイトをして金を貯めました。まず姉のローリーが高校卒業後、家を出ます。そして次女のジャネットも高校を卒業を機に家を出て両親との関係を断ちました。

 

両親と遭遇してからジャネットは母親とも会い、両親に婚約者を紹介もしました。しかし、レックスは婚約者が気に入らず喧嘩してしまいます。婚約者はジャネットの家族を快く思いませんでした。

f:id:lynyrdburitto:20190822131813p:plain

 

二人の婚約パーティーの会場に両親が現れます。そこでジャネットは両親が莫大な土地を所有していたことを知ります。そんな土地を所有していながら極貧生活をしなければならなかったことに腹を立て、「帰って、もう会わない!」と言って追い返します。

 

後日、ローズマリーから連絡があり、レックスの危篤状態だと知らされます。そして見舞って欲しいと頼まれます。兄弟からも会ったほうがいいと言われます。それでもジャネットは頑なに拒みます。

 

しかし、過去のレックスとの思い出が次々と思い出され、ジャネットは婚約者にも父親の本当の姿を正直に話し、別れを告げレックスの元へ向かいます。レックスは「ガラスの城」を作れなかったことを詫びますが、ジャネットは「それでも楽しい夢を見られたよ」と応えます。そしてレックスは亡くなります。

 

後日、ローズマリーをはじめ家族が一人身になったジャネットの家に集まり食事をしました。そこでレックスの思い出話に花が咲きました。ジャネットは「私は何て恵まれているんだろう」と涙を流します。

 

子供は当然ながら親を選べません。親は場合によっては子供を思いのままに育てられるかもしれません。しかし、それも子供の頃の話です。子供が成長し、親に対する疑問が出てくれば親の敷いたレールとは別な道を歩き始めるのが自然です。

 

この映画の主人公、ジャネットも兄弟の中では一番の父親に対する理解者でした。父親も一番自分に近い存在だと思っていました。それが自分から離れていくという寂しさは耐えがたいものがあったのでしょう。

 

父親は娘がコラムニストで成功していると聞いても所詮ゴシップ記事を書いていることに不満があります。娘にはもっと書きたいものを書いて欲しいという願いがあります。またその能力を信じてもいます。また婚約者に対しても、金持ちを狙って投資話を持ちかける金融屋という職業にも不満です。もっといい男がいるはずだと。

 

娘の方は父親のことを大口ばかり叩いて、結局は貧乏暮らしで、子供達にもそれを押し付けた勝手気ままなダメ親父としてしか見られなくなっていました。

 

ところが死を目前にした時に、父親は自分の人生を反省し沈黙します。娘は優しく、何でも知っていた父親の昔の姿を思い浮かべます。そして自分に注がれた愛情の深さに気付き、そして許し合います。

 

自分の経験からも、若い頃は父親の言動に反抗し、煙たがった時期もありましたが、亡くなってみると、その頃の出来事も笑い話で済ませることが出来るようになりました。

 

親らしく、などと思わずありのままに振舞った方がよいのだと思います。子供は親の嘘を見抜きます。昔は親は親らしくなどと言われて育った世代もすでにおじいちゃん、おばあちゃんになりました。時代は移ります。滅茶苦茶やっても、死んでから笑い話に花を咲かせてくれればそれで十分ではないでしょうか。レックスは幸せ者だったと思います。

親子とは近くて遠くて、そして近い関係だということを思わせてくれた映画でした。

 

ガラスの城の約束 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

ガラスの城の約束 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

 

 

 


映画『ガラスの城の約束』予告編

 

それでは今日はこの辺で。