監督:関根光才
原作:北國浩二の小説『嘘』
製作:2024年 日本
一つの嘘がきっかけで、それぞれの秘密が明らかになっていくというヒューマン・ミステリー、ということです。
絵本作家の千紗子は長い間、絶縁状態だった父親が認知症になり徘徊したとの連絡を受け、介護施設が見つかるまでということで片田舎の実家へ帰ってきます。父親はすでに自分の娘がわからず、ひたすら仏像を彫っています。千紗子は嫌気が差しながらも、仕事をしながら介護の日々を送っています。
ある日、役所に勤める幼馴染の友人・久枝と居酒屋で愚痴をこぼしながら飲んでいると久枝の子どもが問題を起こしたとのことで急遽帰宅することになり、久枝は飲酒にも関わらず車を運転します。その途中、ゴツンと何かにぶつかったような音がし、外に出てみると少年が倒れていました。千紗子はすぐに警察に電話しようとしますが、久枝は自分は公務員の身、自分が捕まったら母一人子一人の息子はどうなる、なんとか見逃してほしいと懇願します。千紗子は迷った挙げ句とりあえず少年を家に連れて帰ります。
翌朝、少年が目を覚ますと、自分の名前はおろか、何があったのかもすっかり記憶をなくしていました。身体にはあちこちに痣があります。すると、久枝から電話があり、すぐにテレビを付けてと言われます。テレビでは少年が川に落ち行方不明とのニュースが流れています。そして、両親はすでに帰ったというのです。千紗子は虐待を疑います。両親の所在を調べ上げ、民間の保護団体の職員になりすまし会いに行きます。そして両親の虐待を確信し、自分が少年の母親になることを決意します。
少年も千紗子になつき、父親にも興味を持ち千紗子親子の仲も少しづつ温かい空気が流れるようになるのです。千紗子には実際に5歳の男の子を海の事故で亡くした過去があったのです。その時も父親にも非難され、それ以来父親とは疎遠になっていたのです。それまでも厳しく育てられ、反感を持ち続けていたのです。
そんな親子関係も少年の存在が千紗子の気持ちを変えていったのです。そして幸せな暮らしが少しの間続きました。しかし、ある日突然、少年の父親が訪ねてきたことによってその暮らしは崩壊します。少年の父親は息子を一億円で売ってやるというのです。そして千紗子が断ると暴力をふるい始め、そこでとんでもない事が起きるのですが・・・。
親子間の確執、親の介護、子どもの虐待、家族の有り様、これら現代社会が抱える問題を描いた作品です。が、焦点が定まらず食い足りない印象を受けました。もう少し少年の問題、もしくは介護問題に絞ったほうが見応えがあったような気がするのですが。
それでは今日はこの辺で。