今日の「聴き比べ」は『君に捧げるラブ・ソング』です。
この曲は岡林信康大先生の1979年の『街はステキなカーニバル』に収録された曲です。
この曲は岡林先生がデビューしたときからずっと彼の写真を撮り続けた川仁忍というカメラマンに捧げた曲だったのです。
最初にこの曲を聴いた時には素晴らしいラブソングが出来たな、と思いました。当然男女間のラブソングかと思っていました。ところが、約10年後、川仁さんによる岡林先生の写真集『信康』が出版され、その時にその本のあとがきで岡林先生がこの曲の出来た経緯を書いていました。
それは、川仁忍さんがくも膜下出血で倒れ、その病室に見舞いに行った時に、何も言えずただ立ち尽くすだけだった。その時の思いを歌にしたということでした。
その後、川仁さんは退院して自宅療養になりましたが、医師からは仕事は一切まかりならぬと止められていました。ところが『街はステキなカーニバル』のアルバム写真は絶対に自分が撮ると岡林先生らの反対を押し切って撮影を行いました。そして嬉しそうな顔をしたそうです。そしてその後、川仁さんの病気を知らない出版社から岡林先生のグラビアの仕事を請け負い、再び仕事をしてしまいました。そして2週間後に亡くなってしまったのです。
岡林先生はこの曲が出来上がった時に病室で川仁さんに聴かせたところ、「女の子に受けそうな曲だね」と言ってプイッと横を向きながら惚けたように言ったそうです。まじめにコメントされたら泣きだしていたかもしれないと、書いています。
そんな曲とはつゆ知らず、しばらくはこの曲の美しさに浸っていました。しかしそれを知らなくても十分な名曲だと思います。
君に捧げるラブ・ソング
作詞・作曲:岡林信康
悲しみにうなだれる 君を前にして
そうさ何も出来ないでいるのがとてもつらい
せめて君の為に歌を書きたいけど
もどかしい思いはうまく歌にならない
今 書きとめたい歌
君に捧げるラブ・ソング
君の痛みの深さは わかるはずもない
何か二人遠くなる 目の前にいるというのに
そうさ僕は僕 君になれはしない
ひとり戦うのを ただ見つめているだけ
今 書きとめたい歌
君に捧げるラブ・ソング
二人はためされてるの 君は僕の何
これで壊れてゆくなら 僕は君の何だった
何も出来はしない そんなもどかしさと
のがれずに歩むさ それがせめてもの証し
今 書きとめたい歌
君に捧げるラブ・ソング
今 書きとめたい歌
君に捧げるラブ・ソング
オリジナルバージョンが無いようなのでテレビで。
君に捧げるラブソング / 岡林信康 1980年代の「夜のヒットスタジオ」動画
この曲を最近お気に入りの浜田真理子がカバーしています。アルバム『Live. La solitude』です。これもピアノの弾き語りで素晴らしいカバーです。
何度聴いても心が打たれます。
それでは今日はこの辺で。