フォーク・クルセダーズの「帰ってきたヨッパライ」と高石友也の「受験生のブルース」を聴いた時の衝撃は忘れられません。高石は立教大学の学生でした。
まだ中学生だったと思いますが、深夜放送で聴いた時は、翌朝学校で評判になっていました。その後次々と当時アングラソングと呼ばれるものが流行り出しました。「ケメ子の唄」とか「わたしがケメ子よ」なんて言う歌も流行りました。
その後、高石友也が歌った「坊や大きくならないで」がヒットしました。最初何のことを言っているのかわかりませんでしたが、やはりどこにでも詳しい人間がいるもので、友人に「これは戦争反対の歌だよ」と教えられ納得しました。この歌はマイケルズの方がヒットしたようですが。
そんなこんなで、フォークソングというものに少し興味を持ち始めました。高校生にもなると、いっぱしに社会の矛盾に目覚め、権力がどうの、体制がどうの、社会主義がどうのなどという議論が学校中で盛り上がるようになり、私の関心もそちらのほうに移っていくようになりました。そうした中、深夜放送ではフォークソングが流行っていました。特に関西フォークと呼ばれる、反体制的な歌で学生運動の集会でも必ずフォークソングが歌われるようになりました。その先頭を走っていたのが高石友也でした。
高度成長を遂げる一方で様々なひずみや矛盾が露呈してきた時代に、学生を中心とする反体制運動が活発化してきて、呼応するよかのようにアングラフォークというものが流行ってきたのです。
高校生当時はもっぱらフォークはラジオで聴き、せっせとお金を貯めて洋楽のレコードを買い、そして映画を観るので精いっぱいで、とてもフォークのレコードまで手が回りませんでしたが、しばらくしてからようやく、岡林信康や五つの赤い風船などのレコードを買うことが出来るようになりました。その中に高石友也のレコードもありました。
なんでこのレコードだったのかは憶えていませんが、たぶん「坊や大きくならないで」と「明日なき世界」が入っていたからだと思います。
Side A
1.坊や大きくならないで
2.小さな箱
3.ランブリング・ボーイ
4.学校で何を習ったの
5.労務者とは云え
6.お捨てメリンダ
7.もしも平和になったら
Side B
1.明日なき世界
2.生き残り
3.ときは流れる
4.血まみれの鳩
5.一人の手
6.チューインガム一つ
7.俺らの空は鉄板だ
A-1はベトナム戦争の当事者のベトナム人が作曲した歌。息子よ大きくならないで、大きくなったら戦争に行かねばならぬ、ということですが、高石友也の歌詞は直接的にそのようには歌っていません。マイケルズの歌詞でははっきりそう歌っていますが。
坊や、おやすみなさい
草も木も緑も 街も村も燃えてゆく
坊やおおきくならないで
そっとおやすみ 静かに
赤い煙がのぼる
昨日も今日も 明日も続くの
坊やおやすみ
坊や、おやすみなさい
お父さんはもう 戻っては来ないの
坊や大きくならないで
そっとおやすみ 静かに
お前が大きくなると
煙のむこうに 消えてゆくの
坊やおやすみ
A面は全曲外国の歌です。トム・パクストンが2曲。ボブ・ディランその他。訳詞が高石友也、片桐ユズル、中山容など。高石友也の訳詞は実にうまいです。
ちなみに「受験生ブルース」も原曲はボブ・ディランでそれに中川五郎が詩をつけて、高石友也が付け加えたという作品です。「おいで皆さん聞いとくれ」はボブ・ディランの「NORTH COUNTRY BLUES」の出だし「Come gahter 'round friend」の訳です。
「ランブリング・ボーイ」はトム・パクストンの歌で岡林信康もカヴァーしており、この当時は定番の合唱ソングでした。
「労務者とは云え」はボブ・ディランの知られざる曲「Only a Hobo」で、片桐ユズルと高石友也が詩をつけた曲です。こんな歌に目をつけるところが凄い。
「明日なき世界」は悲劇的なソングライター、P.F.スローンの曲でバリー・マクガイアが歌ってヒットしました。反ベトナム戦争、反核の歌ですが、高石友也の訳詞が素晴らしい。
「生きのこり」はやさぐれ男のはぐれ唄ですが、これが何とも聞かせます。作曲者不詳。岡林もカバーしています。
「血まみれの鳩」は「五つの赤い風船」の歌。
「一人の手」はピート・シーガーの曲。確か日本でも本田路津子が歌ってヒットしていたと思いますが、歌詞が違います。
「チューインガム一つ」はチューインガムを盗んでしまった女の子がお母さんにこっぴどく叱られ、そのお母さんが悲しい顔して泣いているのを見て、なんであんなことをしてしまったんだろうと、子供ながらに悩む歌。
今聴いても十分通用する歌ばかりです。高石友也はその後ナターシャセブンというバンドを結成して活躍後、ソロ活動で現在も活躍中です。近年はマラソンやトライアスロンでも活躍しました。現在75歳。まだまだ元気そうです。
懐かしい青春の1ページでした。
それでは今日はこの辺で。