リック・デリンジャー(Rick Derringer)は1960年代半ばから自身のポップ・バンド、マッコイズ(The MaCoys)のギタリスト兼ヴォーカリストで活躍しました。その容姿からアイドル的存在でした。このマッコイズは「ハング・オン・スルーピー」というナンバーワンヒットを飛ばします。この頃はまだリッキー・ゼーリンガー(Richard Zehringer)と名乗っていました。
1970年にリック・デリンジャーはマッコイズで一緒だった弟のランディ・ゼーリンガー(Randy Zehringer,ds) とランディ・ホッブス(Randy Jo HobbsB)と共に,ジョニー・ウィンターのバンド、ジョニー・ウィンター・アンド(Johny Winter And)に参加します。
さらにリックはジョニー・ウィンターの弟、エドガー・ウィンターのバンド、ホワイト・トラッシュ(White Trash)、そしてエドガー・ウィンター・グループ(Edger Winter Group)へ参加します。
そしてギタリストとしてばかりではなくプロデューサーとしての腕も磨いていきます。ジョニー・ウィンターとエドガー・ウィンターのアルバムではプロデューサーとしてもクレジットされています。
1973年にファーストソロアルバム『All American Boy』をリリースします。
このアルバムの中からシングル 「ロックンロール・フー・チー・クー」が全米23位を記録する大ヒットになりました。元々この曲はアルバム『Johnny Winter And』に収録されていた曲で、本アルバムではセルフカバーになります。ジョニー・ウィンターの時にはベスト100にも入りませんでした。
エドガー・ウィンター、ジョー・ウォルシュ、デヴィッド・ブロンバーグ、ボビー・コルドウェル、ポール・ハリス、ジョー・ララなど豪華ゲスト陣参加です。
1975年にはセカンドアルバム『Spring Fever』をリリースします。
前作に引き続き、エドガー・ウィンター参加。さらにジョニー・ウィンター、そしてチック・コリアまで参加です。
何といってもこのジャケット、まさにアイドルです。中身もポップになりました。
1980年代は主にプロデュースとギタリストとしてのレコーディング参加が多くありました。
そして90年代に、ブルースを引っ提げて帰ってきました。その中で私が特にお気に入りのアルバムを2枚紹介します。
まず1枚目は1998年の『Blues Deluxe』です。
01.Let The Good Times Roll
02.Runnin' Blue
03.Blues Power
04.Key To The Highway
05.Blues Deluxe
06.Hide Away 1962
08.Funky Music
09.Something Inside Of Me
10.Still Alive And Well
11.Bright Lights, Big City
12.Checking Up On My Baby
バンドメンバーは
セゴヴィア・ベイダー(Segovia Bader,b)
ブラッド・カイザー(Brad Kaiser,ds)
スチュアート・ブランク(Stuart Blank,key)
プロデュースはセルフです。
オープニングから強烈なブルース、カッコいい。
02はボズ・スキャッグスのセカンドアルバムから。いかにも初期のボズらしい曲。
03はクラプトンとレオン・ラッセルの曲。クラプトンのファーストソロに収録。リックはクラプトンの大ファンです。
04はビッグ・ビル・ブルーンジー。これもクラプトンがデレク&ドミノスのアルバムに収録した曲です。
05はべたべたのスローブルース。いいですね。
06はフレディ・キング作。
07はハウリン・ウルフの曲で、先日紹介したマイク・ブルームフィールドがエレクトリック・フラッグ時代にアルバムに収録しました。
08はオリジナル。
09はこれも先に紹介したフリートウッド・マックのダニー・カーワンの曲。これはカーワンちゃんには及びません。
10はオリジナル。
11はジミー・リードの曲。アップテンポブルース。
12はソニー・ボーイ・ウィリアムソン。
全面ブルース、ロックンロール。文句なしです。
もう1枚は2000年の『Jackhammer Blues』です。
01.Shake Your Moneymaker
02.Wrapped up in Love Again
03.You've Got to Love Her With a Feeling
04.Street Corner Talking
05.Somebody Loan Me a Dime
06.Just a Little Bit
07.All Your Love (I Miss Loving)
08.Red Hot
09.Crying Won't Help You Now
10.Parchman Farm
11.Texas
このアルバムではスチャート・ブランクが抜けて、代わりにマーク・ロバートソン(Mark Robertson,organ,on 03,05,11)が参加しています。
プロデュースはセルフです。
01はエルモア・ジェイムスの曲。ブルース・ロックンロール。ノリノリです。
02はアルバート・キング。リックのギターが唸ります。
03はウォルター・ジェイコブスのブルースナンバー。
04はサヴォイ・ブラウンの同名のアルバムから。こんな曲を取り上げるところが心憎い。
05はフェントン・ロビンソンの代表曲。ボズ・スキャッグスもカバーした名曲中の名曲。
06はバリー・ゴールドバーグとスティーヴ・ミラーです。
07はオーティス・ラッシュの名曲。ジョン・メイオールとブルース・ブレイカーズでのエリック・クラプトンの名演があります。
08はカントリーのビル・エマーソンの曲。見事なロックンロールに仕上がっています。
09はサム・リングという人の曲。ロックンロール。
10はモーズ・アリソンの超有名曲。多くのアーティストがカバーしています。カクタスでも有名。
11はマイク・ブルームフィールドとバディ・マイルスによるエレクトリック・フラッグの曲。
全曲カバーです。選曲がここでも素晴らしい。
90年代から2000年代にかけてベテランのロック・ミュージシャンのブルース回帰が流行りました。最近ではローリング・ストーンズまでブルースアルバムを出しています。やはりロックの原点はブルースなのでしょう。
このようなブルースロックアルバムを聴いていると落ち着きます。
2000年代になると、BBAならぬDBA(Derringer, Bogert & Appice)なるバンドを結成します。
ティム・ボガート(Tim Bogert,b)とカーマイン・アピス(Camine Appice,ds)という往年のリズムセクションと組んでアルバムまで出しました。タイトルは『Doin' Business As... 』です。ジェフ・ベックも真っ青です。
伏線は1983年のカーマイン・アピスとのDNAというバンドだったと思います。アルバムもリリースしています。『Party Tested』です。
リック・デリンジャーは今でも元気に大活躍です。71歳、頑張ります。
Killing Floor by Rick Derringer
Rick Derringer - All Your Love I Miss Loving
Somebody Loan Me a Dime - Rick Derringer
Rick Derringer Rock & Roll Hoochie Koo
それでは今日はこの辺で。