昨日のキネ旬シアターは『ビル・エヴァンス タイム・リメンバード』でした。
監督:ブルース・スピーゲル
出演:トニー・ベネット、ジャック・デジョネット、ジム・ホール他多数
制作:2015年 アメリカ 2019年 日本公開
ジャズ・ピアニストの巨匠と呼ばれた、ビル・エヴァンスの生涯を追ったドキュメンタリー映画です。
ビルとトリオを組んだ今は亡きドラマーのポール・モチアンや、ジム・ホール、ジョン・ヘンドリックス、それにトニー・ベネット、ジャック・デジョネットなどのインタビューを織り交ぜながらビル・エヴァンスの素顔に迫ります。
若い頃のビル・エヴァンスの写真はインテリ然として、まるで銀行員のようです。しかし、その行動はハチャメチャだったようです。
1958年には短い間でしたがマイルス・デイヴィスのバンドに加わり、歴史的名演と言われた『カインド・オブ・ブルー』のレコーディングに参加します。
その後、ポール・モチアンとスコット・ラファロと共にトリオを結成、あの『ワルツ・フォー・デヴィ』を録音します。しかし、そのすぐ後にスコット・ラファロは交通事故で亡くなってしまいます。ビル・エヴァンスのショックは大きなものがありました。
さらに10年以上も支えてくれた元恋人エレインと最も敬愛する兄のハリーの自殺。これらがビルの薬物使用に拍車をかけ、最後はそれが原因で51歳の若さで亡くなります。薬物との戦いが彼の一生だったと言っても過言ではないかもしれません。
関係者の証言では「彼は死にたがっていた。」と薬物摂取を止めなかったのは結局は自殺したようなものだと言っています。一時は息子のために生きると言っていましたが、結局は死を選んだようなものでした。
私がまだ高校生の頃、学校近くのジャズ喫茶で初めてジャズというものに触れ、友人の勧めで生涯で2番目に買ったジャズのレコードがビル・エヴァンスでした。『ニルヴァーナ』というハービー・マンとビル・エヴァンス・トリオの競演盤でした。ジャズとはなんと難しい音楽だろうというのが第1印象でした。静かな静かなジャズでした。
そんなことが懐かしく思い出されました。
ビル・エヴァンスは数々の名演と呼ばれるリーダーアルバムを世に残しました。
『Portrait in Jazz』
『Explorations』
『Waltz for Debby』
『Sunday at the Village Vanguard』
『Undercurrent』
等々。
ビルがピアノに覆い被さるように背中を丸めてピアノを弾く姿はまるでなにかにとりつかれた者のようです。静かで研ぎ澄まされたようなピアノの音色は芸術品です。
ジヤズ・ヴォーカリストのトニー・べネットに対し「美と真実だけを追求しろ。他はどうでもいい」という言葉を残しています。この言葉はトニー・べネットの座右の銘になっているそうです。
ビル・エヴァンスのドキュメント映画が制作されるなんて思ってもいませんでしたが、さすがにアメリカです。貴重なドキュメンタリーを観ることが出来ました。大満足です。難を言えば丸ごと一曲をノーカットで聴いてみたかったですね。大音量で。
映画『ビル・エヴァンス タイム・リメンバード』4/27GWロードショー
それでは今日はこの辺で。