今日のキネ旬シアターは『ドント・ウォーリー』でした。
監督:ガス・ヴァン・サント
原作:ジョン・キャラハン自伝
主演:ホアキン・フェニックス、ジョナ・ヒル、ルーニー・マーラ
制作:2018年 アメリカ 2019年 日本公開
事故により、四肢麻痺になった漫画家ジョン・キャラハンの自伝を基に映画化したものです。
車椅子姿のジョン・キャラハンは講演会で自分が車椅子生活、そして漫画家になった経緯を語ります。
ジョンがまだ歩けた最後の日。知り合った男デクスターと酒を飲み酒場を梯子します。そして泥酔したにも関わらず男の運転する車に同乗し、事故を起こしてしまいます。
デクスターは無事で、さっさと帰ってしましましたが、ジョンは病院へ運ばれ、命だけは助かりましたが全身に麻痺が残ると言われました。
彼は後悔し、今後の生活に不安を感じます。そんな時にセラピストのアヌーが訪れ励まします。リハビリで車椅子の練習も始めますが、手足もいうことをきかないためうまく酒も飲めず、介護者に当たり散らします。それでも何とか介護者付添いの下独り暮らしを始めます。しかし、酒をやめることはできませんでした。完璧なアルコール依存症でした。
彼はかつて自分を捨てた母親を恨んでいましたが、それでも会いたがっていました。そしてある時母親の面影を感じ取り、酒をやめる決心をし、禁酒会のセラピーに参加しました。そこでドニーという主催者と知り合います。ドニーもまたアル中から立ち直った男でした。ジョンはこの集会所が気に入りました。そして思うように動かない手と口を使って漫画を描き始めました。彼が描いたのはユーモアがあって風刺の効いた一コマ漫画でした。
ジョンは漫画を描き終わると街中を歩き回り、皆に見せて回りました。これが評判を呼ぶようになりました。新聞社もこれを取り上げて掲載しました。そんな時、偶然アヌーと再会します。彼女を食事に誘い漫画も見せて意気投合し、そして恋人同士になりました。
ジョンの漫画は賛否両論でした。掲載してくれない新聞もありました。ある日、ジョンは禁酒会で話す機会があり、自分のこれまでの人生での恨み言を話しました。交通事故の原因だったデクスターのことも話しました。ドニーは「彼だけが悪いのか?自分には責任はないのか?」と問います。
また自分を捨てた母親への恨みを吐き、「誰からも愛されなかった」と嘆きます。ドニーは彼たちを許しなさいと説きます。ジョンはドニーの話を聴きながら、彼らを許すことに決めました。そして、今まで迷惑をかけた人たちに詫びることにしたのです。
そして、あまりいい思い出もない義父母や迷惑をかけた人たちに会って近況を話しました。デクスターにも会いに行きました。デクスターは自分の罪の意識から泣いてしまいました。母親の肖像画に向かって「許します」と言います。
そしてドニーに会い報告すると、ドニーは最後に許すべきは自分自身だと言います。他の新聞社からも掲載の依頼が入り出しました。ドニーは自分の辛い過去を話し、自分も他人を助ける仕事がしたいと泣きました。二人は別れ、後にドニーはエイズで亡くなります。
そして冒頭の講演会のシーンに戻ります。客席にはアヌー、デクスターや禁酒会のメンバーが顔を揃えていました。ジョンは今の自分が幸せであることと、みんなに感謝の気持ちを述べました。
アルコールに限らず依存症の根っこには辛い経験や過去があるのかもしれません。映画のジョン・キャラハンも幼い時に母親に捨てられたという辛い思い出から逃れるために酒を浴びました。他の禁酒会のメンバーにもそれぞれの理由がありました。それらを話すことによって、己が解放されていくのかもしれません。
私も酒好きですが、幸いなことに今のところ依存症にはなっていないようです。これからも気をつけて飲むようにしましょう。
どこか見覚えのある漫画でしたが、これをジョン・キャラハンが書いていたというのを初めて知りました。勉強になりました。あの不自由な手でこれを書いていたというのも凄いです。
恋人役を演じたルーニー・マーラはとても魅力的な女優でした。どこかで見たような気がしていましたが、『ローズの秘密の頁』に出ていました。
それでは今日はこの辺で。