Flying Skynyrdのブログ

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映画『いつかの君にもわかること』を観る ーキネマ旬報シアター

 先日のキネ旬シアターは『いつかの君にもわかること』でした。

 

監督・脚本:ウベルト・パゾリーニ

出演:ジェームズ・ノートン、ダニエル・ラモント、アイリーン・オヒギンス

製作:2020年  イタリア・ルーマニア・イギリス 2023年  日本公開

 

実話にヒントを得た親子のヒューマンドラマです。

 

窓拭き清掃員のジョンは33歳。4歳の息子マイケルと暮らしています。ロシア人の妻はマイケルが生まれてすぐに家を出て行ってしまい、ジョンは男手一人で息子を育てています。子育て、家事、仕事と忙しく生活は楽ではありません。しかし、マイケルには自分と違った幸せな人生を歩んでほしいと愛情を目いっぱい注ぎます。ジョンも同じように幼い頃に養子に出されていたのです。

そんなジョンですが重大な秘密がありました。それは彼の寿命が残りわずかということです。このことはマイケルにも話していません。幼い息子に死の意味が理解できるとは思わないからです。献身的なソーシャルワーカーからは思い出ボックスを作るように勧められます。

 

ジョンは自分が死ねばマイケルはひとりぼっちになってしまう。彼は息子を守るために養子縁組の手続きをすることを決め、新しい親を探し始めました。ジョンはマイケルに「どこか別の家に住んでみたい?」と聞くと、マイケルは「今のお家がいい!」と答えます。

ジョンは紹介された家族候補と面会を続けます。当初はすぐに見つかるだろうとタカをくくっていましたが、マイケルと一緒にいろいろな家族と面会を重ねるとどの家にも一長一短ありで、マイケルにとってどんな家庭がいいのだろうと悩み、決断ができなくなりました。

病気は刻一刻と進んでいきます。仕事も思うようにできなくなり、ジョンは苛立ちます。しかし、マイケルはそんな父親にやさしく接します。居眠りをしているジョンに毛布を掛けてくれたり、34歳の誕生日には35本目のろうそくを渡してくれるのでした。

いつかの君にもわかること | キノフィルムズ

いよいよ体の自由もままならなくなったジョンはマイケルに「死」の意味を伝える決断をします。マイケルにも理解できるようにやさしいたとえ話で説明します。それがマイケルに理解できているのかはわかりません。そして思い出ボックスにたくさんの手紙と思い出の品を詰め込み、遂に養子に出す家を決め、マイケルを連れて行くのでした・・・。

 

この映画ではジョンがどんな病気なのか、余命はどれほどなのか、また妻が何故子供を置いて出て行ってしまったのか、などの詳しい説明は一切ありません。ただジョンの顔つきとマイケルの表情や態度から十分に読み取れます。詳しい状況説明が無い分、悲しみが映像から伝わってきます。特にラストのストップモーションによる唐突なエンディングは悲しみが後から押し寄せてくるのでした。

 

自分が同じような状況に置かれたらどのような選択をするだろうか、などと今更あり得ないことを考えてしまいました。マイケルの可愛さが唯一の救いでした。

 

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それでは今日はこの辺で。