先日、アリソン・ムーラー(Allison Moorer)の記事を書いていて、ふと、そういえばアリソンのお姉さんの記事は書いたっけかな、と調べてみたら、案の定書いていませんでした。すっかり書いたつもりになっていました。完璧に認知症予備軍です。
ということで、今日はアリソンのお姉さんのシェルビー・リン(Shelby Lynne)の『この1枚』を書いてみたいと思います。
この2人の姉妹は、とんでもない過去を背負って生きています。それは彼女たちの父親が強度のアルコール中毒で母親を虐待していました。母親はたまらず姉妹を連れてモーテルに逃げ込みましたが、すぐに見つかり、父親は2人の目の前で母親を射殺しました。そしてその後、自らも命を絶ちました。シェルビーが17歳の時でした。
そんな二人を救ったのが歌でした。シェルビーはカントリーシンガーとなって4つ違いのアリソンを育てました。そしてアリソンもシェルビーと共に歌を歌うようになりました。
私が初めてシェルビーの歌を聴いたのは1999年のアルバム『I Am Shelby Lynne』でした。
それまでにカントリー系のアルバムを6枚ほどリリースしていましたが、今ひとつヒットしませんでした。
ところがこのアルバムからポップロックに路線を変更すると、これが功を奏して一躍ヒット、そして2001年のグラミー賞最優秀新人賞を獲得してしまいました。
続く2001年の『Love,Shelby』もヒット作になりました。
思春期の出来事は彼女達姉妹の大きなトラウマになっているようです。これらのアルバムも重く沈んだ曲がいくつも見受けられます。
そして2008年に通算10枚目のアルバム『Just A lIttle Lovin'』がリリースされました。今日の『この1枚』です。
01.Just a Little Lovin
02.Anyone Who Had a Heart
03.You Don't Have to Say You Love Me
04.I Only Want to Be with You
05.The Look of Love
06.Breakfast in Bed
07.Willie and Laura Mae Jones
08.I Don't Want to Hear It Anymore
09.Pretend
10.How Can I Be Sure
レコーディング・メンバーは
シェルビー・リン(Shelby Lynne,vo,g)
ロブ・マテス(Rob Mathes,key)
グレッグ・フィールド(Gregg Field,ds)
ケヴィン・アクスト(Kevin Axt,b)
ディーン・パークス(Dean Parks,g)
カート・ビスケラ(Curt Bisquera,ds on 06,07)
プロデュースはフィリップ・ラモーン(Philip Ramone)です。
このアルバムはイギリスの女性シンガー、ダスティ・スプリングフィールド(Duty Springfield)に捧げられたものです。
ダスティのアルバム『Dusty in Memphis』から3曲が選曲されています。その他にプレスリーでおなじみの『この胸のときめきを』や『A Girl Called Dusty』『The Look of Love』『See All Her Faces』などのアルバムの他、シングルヒットからも選曲されており、シェルビーのオリジナルは「Pretend」の1曲のみとなっています。
想像するにシェルビーはダスティの歌で救われたのではないでしょうか。バリー・マンやバート・バカラック、トニー・ジョー・ホワイト、ランディ・ニューマンらの楽曲を静かに、暗く、深く、そして切々と歌い上げます。彼女の歌唱力ならではのアルバムになっています。
2017年にシェルビーとアリソンのデュエット盤が出ました。また次の機会に書いてみたいと思います。
Shelby Lynne - Just A Little Lovin' (WAV, DR14)
You Don't Have to Say You Love Me - Shelby Lynne
Shelby Lynne / The Look of Love
Shelby Lynne / I Only Want to Be with You
それでは今日はこの辺で。