昨日のキネ旬シアターは『ベン・イズ・バック』でした。
監督:ピーター・ヘッジズ
主演:ジュリア・ロバーツ、ルーカス・ヘッジズ、キャスリン・ニュートン
制作:2018年 アメリカ 2019年 日本公開
ピーター・ヘッジズ監督の息子ルーカスとジュリア・ロバーツが出演して話題になった映画です。日本では規制が厳しいためあまり馴染みがありませんが、アメリカでは社会問題になっているオピオイド鎮痛薬の服用で「オピオイド・クライシス」と呼ばれる薬物依存症の息子とその母親の姿を描いています。
例によってネタバレです。
クリスマス・イブの日、母親ホリーは子供達と共に教会でクリスマスで歌う讃美歌の合唱練習に参加しました。その帰り自宅に戻ると、長男のベンが自宅に戻っていることに気がつきました。ベンは薬物依存症に罹っており施設に入っていました。本来ならクリスマスの日に面会する予定でしたが、許可が出たということで帰って来たのです。しかし家には誰もおらず、迎えてくれたのは愛犬のポンスだけだったのでした。
ベンを見て驚いたホリーはそれでも駆け寄り、ベンを抱きしめました。妹のアイヴィは戸惑い顔で再婚した父親ニールに電話します。ホリーはベンとアイヴィの父親とは離婚し、新たに黒人のニールと結婚し2人の子供がいます。
ニールも帰宅するといい顔をしませんでした。ホリーも少し疑いを持ち、家の中の薬や宝石を隠しました。それを知ったベンは怒り施設へ帰ると言い出します。ホリーは検査を受けることと、自分がずっと監視するという条件で1日滞在を許すことにしました。検査の結果は陰性でした。
ベンは妹たちのクリスマス・プレゼントを買いたいと言い、ホリーと一緒にショッピングモールに出かけました。そこでホリーたちはベンが薬物依存症になるきっかけとなった医者に出会います。しかしその医者は認知症になり彼らを憶えていませんでしたが、ホリーはあなたのせいで息子は麻薬中毒になったと怨みを込めて囁きます。
さらにベンは昔自分に薬を売っていたスペンサーを見かけ激しく動揺します。そしてホリーに近くの薬物依存の自助グループのミーティングに連れて行って欲しいと頼みます。ベンはそのミーティングで自分が過剰摂取で死にかけたこと、母親のお陰で助かったこと、今は77日間薬を断っていることなどを話しました。
ミーティングの帰りにベンはある女性に声をかけられます。ベンは憶えていませんでしたが、その女性にかつて薬を売ったことがあったのでした。その女性は「明日施設に入るので、今日は最後の薬をやりたいと」持ちかけてきました。ホリーは洋服店で試着室に入ってカギをかけたベンの様子を疑い、彼の持ち物を調べたところ、麻薬の入った包みを差し出しました。これは女性から取り上げたものだと釈明します。しかしホリーは信じられず、自分たちの墓地に連れて行き、「どうせ薬で死ぬ、どの墓に入りたいか言いなさい」と怒鳴ります。
気まずい雰囲気になりましたが、帰宅すると家族と共に教会に行き、ベンは妹弟たちが讃美歌を歌うのを聴いて涙を流しました。その教会にはマギーという、薬物中毒で死んだ少女マギーの母親ベスが来ていました。ホリーはお悔やみを告げます。
教会から帰宅すると家の中が荒らされていました。調べると金目のものは無くなっていませんでしたが、愛犬のポンスがいなくなっていました。去年のクリスマスにも同じようなことがありました。ベンの昔の仲間の仕業だということは明らかでした。ニールに「お前が帰ってきたせいだ」と言われ、責任を感じたベンはポンスを捜しに家を出ました。ホリーはそれを追いかけ、一緒に探すと言います。
ベンは心当たりを一件づつ当たっていきます。その中にはベンの高校教師もいました。彼は交換条件付きに薬をもらったと告白します。ホリーは思わず嘔吐します。次に訪ねたのがマギーの父親でした。実はマギーが死んだのはベンが薬物を売っていたからでした。父親はベンを見つけるなり、窓ガラスを割り、車を壊そうとしました。ホリーは急発進して逃げ出しました。
途中でスペンサーを見かけ問い詰めたところ、ポンスを連れ去ったのは密売人のクレイトンという男だとわかりました。ベンは薬物の購入資金をクレイトンから借金していました。ベンは借金返済のためホリーに金を貸して欲しいと頼みました。ホリーは躊躇いながらも現金と大事な宝石を与えました。ベンは施設からの外出許可は嘘であること、麻薬は少女から取り上げたのではなく、自分が持っていたことなどを正直に話しました。ホリーはベンを抱きしめます。そして自分もついていくと言いますが、ベンは母親を危険な目に遭わせるわけにはいかないと、隙を見てひとりで現場に向かいます。
残されたホリーはベスのところに行き相談します。ベスは車と麻薬の過剰摂取時の応急措置の用具を貸し与えました。途中スペンサーが禁断症状で苦しんでいるのも見つけるとベンから取り上げた麻薬を与え、ベンが何処に行ったかを聞き出します。そしてアイヴィに電話してIPS情報でベンの行き先を探し出しますが、近くまで行くとベンの携帯はゴミ箱に捨てられていました。
一方、ベンはクレイトンと会って借金は返すと金を渡しますが、金だけの問題じゃないと言われ、代わりに麻薬の密売を命令されます。そして無事取引を終えると、ポンスを返してもらいました。同時に報酬として麻薬1袋を受け取ってしまいました。そして、ポンスを連れて街はずれの廃屋に向かいました。到着すると、車のフロントにポンスを見つけたら連絡して欲しいとホリーの携帯番号を書いたメモを残し、ポンスを車の中において、廃屋に入っていきました。
ホリーはベンを見つけられず、錯乱状態になりながら警察に駆け込みます。そしてメモを見つけた人から連絡があり、廃屋に向かいます。車を見つけドアを開けると、ポンスが駆け出し、廃屋の2階へと上がっていきました。そこにはベンが横たわっていました。ホリーはベスに教わった通りに器具を使って応急措置をしました。人工呼吸を繰り返しながら、ホリーは必死に呼びかけます。するとベンの呼吸が戻ったのでした。
映画の前半は薬物中毒の恐ろしさが描かれていましたが、後半はサスペンス映画のようでした。母親役のジュリア・ロバーツが熱演でした。母親の強さと優しさをよく表現できていました。
妹役のキャスリン・ニュートンがかわいかったですね。
それにしても鎮痛剤で薬物中毒になってしまうというのは驚きでした。アメリカでは薬物中毒死の43%がこのオピオイドによるもので重大な問題になっています。2017年にはトランプ大統領がオピオイド・クライシスに対して非常事態を宣言しました。医療と薬物中毒は紙一重です。
それでは今日はこの辺で。