先日のキネ旬シアターは『BILLIE ビリー』でした。
脚本・監督:ジェームズ・エルスキン
出演:ビリー・ホリデイ、リンダ・リップナック・キュール
製作:2019年 イギリス 2021年 日本公開
言わずと知れたアメリカの女性ジャズ・シンガー、ビリー・ホリデイの実像に迫ったドキュメンタリー映画です。
ビリー・ホリデイの伝記を書くために10年間取材を続けながらも、謎の死を遂げ、未公開となった女性ジャーナリスト、リンダ・リップナック・キュールが残した録音テープを基に、ビリーの僅44年の短い、しかしとてつもない波乱万丈の生涯を解き明かしたドキュメンタリーです。
彼女の人生はご承知の通り、少女売春、激しい人種差別、薬物中毒、アルコール中毒、度重なる逮捕、恋愛、失恋、同性愛等々、まさに壮絶な人生でした。ダメ男にばかり惹かれ、そして捨てられ、麻薬を止められない、それでも歌うことが彼女の救いでした。貴重な映像と共に彼女の歌声が蘇ります。
インタビューではトニー・ベネット、シルヴィア・シムズ、カウント・ベイシー、アーティ・ショウ、チャールズ・ミンガス、カーメン・マクレエなどジャズ界の大御所たちが登場します。そして生前のビリーの貴重な映像も見れます。
人種差別を強烈に告発した名曲『奇妙な果実 (Strange Fruit)』のカラー映像化された歌唱を観ることが出来ました。「奇妙な果実」とは木にぶら下がった黒人の死体のことです。「南部の木には奇妙な実が成る」という歌い出しで始まります。
この映画はビリーの半生を描いた映画ですが、同時にリンダの不審死の追求でもあります。警察は当初自殺と判断しましたが、妹は「自殺はあり得ない、誰かに殺害された」と主張しています。そして現在もその謎は解けていません。リンダはビリーの人生に共感を覚えたようです。そして膨大なる録音テープと記事を残していました。今回の映画はその貴重なインタビューとビリーの生きざまを垣間見ることが出来ました。僅44年の生涯ですが、200年分ほどあったのではないでしょうか。図らずもビリーは「1日で100日分ぐらい生きたい」と言っていました。
今日はビリーのレコードでも引っ張り出して聴いてみましょう。
それでは今日はこの辺で。