Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

聴き比べ『旅の夜風』

今日の「聴き比べ」は『旅の夜風』です。

懐かしの昭和の歌謡曲です。昭和13年発売と言いますから、私など知るはずもありません。当時で80万枚の売り上げと言いますから驚異的です。

作曲は万城目正、作詞は西城八十、歌ったのは霧島昇ミス・コロムビアのデュエットです。ミス・コロムビアというのは本名が松原操という女性歌手で、コロムビアが彼女を売り出すために考えた名前でした。戦後に登場したコロムビア・ローズ(初代から3代目まで)の前身ともいうべき名前でした。

この曲はご存じ、映画『愛染かつら』の主題歌でした。映画との相乗効果もあったというところなのでしょう。

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監督:野村 浩将

主演:田中絹代、上原 謙

制作:1938年 松竹

 

この監督、俳優陣で『続・愛染かつら』『愛染かつら・完結編』が1939年に制作されました。

元は前編・後編から成っていたのですが、フィルムが完全な形で存在せず、前編と後編を再編集し総集編という形でビデオ化されているようです。私が学生時代に観たのもおそらく総集編でしょう。

 

その後、戦後になって、1948年に『新・愛染かつら』が制作されました。監督は久松静児、主演は水戸光子龍崎一郎でした。

その後も、1954年に京マチ子鶴田浩二でリメイク版が制作されました。監督は木村恵吾でした。

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1962年には岡田茉莉子吉田輝男によるリメイク版が制作、翌年には同じ顔触れで『続・愛染かつら』が制作されました。監督はいずれも中村登でした。

 

またテレビドラマでも「昼メロ」などで何度も放映されました。

 

それほど日本人受けするストーリーだったのでしょう。子連れの看護婦と大病院の院長との身分の違いによる悲恋物語。すれ違いの連続、いかにも日本人好みのするストーリーです。当時の女性の地位の低さというのも背景にあって、この看護婦への思い入れというのがあったのかもしれません。

 

さて、肝心の歌の方ですが、歌ったのは男女混成のデュエットでした。当時としては珍しかったのではないでしょうか。

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私も昭和40年代に親が観ていた懐メロの番組で霧島昇が一人で歌うのを聴いたことがありますが二人で歌っているのは観たことがありませんでした。

 

旅の夜風

作詞:西條八十

作曲:万城目正

 

花も嵐も 踏み越えて

行くが男の 生きる道

泣いてくれるな ほろほろ鳥よ

月の比叡(ひえい)を 一人行く

 

優しかの君 ただ独り

発(た)たせまつりし 旅の空

可愛い子供は 女の生命(いのち)

なぜに淋しい 子守唄

 

加茂の河原に 秋長(た)けて

肌に夜風が 沁(し)みわたる

おとこ柳が なに泣くものか

風に揺れるは 影ばかり

 

愛の山河 雲幾重(いくえ)

心ごころは 隔てても

待てば来る来る 愛染かつら

やがて芽をふく 春が来る

 


旅の夜風 霧島昇さん ミス・コロムビアさん

 

1962年の『愛染かつら』のリメイク化の際に主人公の「高石かつ枝」名の歌手を募集したところ山崎宏という女性が合格し、その後高石かつ枝を名乗り藤崎良とデュエットで映画の主題歌をレコーディングしリバイバル・ヒットしました。この高石かつ枝はこの後もヒット曲を出して紅白歌合戦にも出演しました。結婚により引退しましたが、懐メロ番組などには顔を出していました。とてもかわいらしく、歌もうまかったのを憶えています。


旅の夜風 高石かつ枝・藤原良 Takaishi Katsue・Fujiwara Ryou


旅の夜風(高石かつえ)

 

1965年のテレビ版『愛染かつら』では青山和子神戸一郎が主題歌を歌いました。主演は長内美那子吉田輝男でした青山和子と言えば『愛と死をみつめて』の大ヒットで日本レコード大賞を受賞していました。


旅の夜風  神戸一郎・青山和子

 

1974年のテレビ版では都はるみが主演の藤巻潤とデュエットしました。

 

皆さん歌が上手くて素晴らしいです。

 

それでは今日はこの辺で。