今日の「聴き比べ」は『黒の舟歌』です。
元は作家の野坂昭如が歌った歌でした。1971年に『マリリン・モンロー・ノー・リターン』のB面として発売されましたが、『黒の舟歌』の人気が高く、後にAB面逆にして再発されました。
野坂昭如はメディアへの出演も多く、その歯に衣着せぬ物言いが当時の学生などにも人気があり、歌手としての野坂も決して上手いとは言えませんが、面白かったのです。
この『黒の舟歌』は作詞が能吉利人(ノーキリヒト)で作曲は桜井順です。能吉利人は桜井順のペンネームです。
また、藤田敏八監督の『バージンブルース』にも出演してこの曲を歌いました。
野坂昭如と言えばデビュー作の『エロ事師たち』が今村昌平監督によって映画化され、その後も『火垂るの墓』『アメリカひじき』で直木賞を受賞しました。そして何といっても有名になったのが『四畳半襖の下張り』裁判闘争でした。結局有罪になってしまいました。参議院議員も経験しました。『朝まで生テレビ』での大島渚との論争ならぬ喧嘩も面白かったです。2015年に亡くなっています。本当に多才で面白い人でした。
黒の舟歌
作詞:能吉利人
作曲:桜井 順
男と女の 間には
深くて暗い 川がある
誰も渡れぬ 川なれど
エンヤコラ 今夜も 舟を出す
*Row and Row
Row and Row
振り返るな Row Row*
お前が十七 俺十九
忘れもしない この川に
二人の星の ひとかけら
流して泣いた 夜もある
* 繰り返し
あれから幾年 漕ぎ続け
大波小波 ゆれゆられ
極楽見えた こともある
地獄が見えた こともある
* 繰り返し
たとえば男は あほう鳥
たとえば女は 忘れ貝
真っ赤な潮が 満ちるとき
なくしたものを 思い出す
* 繰り返し
おまえと俺との 間には
深くて暗い 川がある
それでもやっぱり 逢いたくて
エンヤコラ 今夜も 舟を出す
* 繰り返し
この曲がもっともっと売れたのが長谷川きよしの歌唱によってでした。1975年でした。盲目の歌手・ギタリスト、長谷川きよしはデビュー曲『別れのサンバ』が大ヒットとなって、1974年には加藤登紀子とのデュエット、『灰色の瞳』もヒットしていました。
その加藤登紀子もカバーしました。
最近、ちょっと気になっている浜田真理子さんのカバーです。
それぞれに趣があって、改めていい曲だったことを再確認しました。
「お前が十七、俺十九・・・」、この詩には深い思い出があり、余計にしんみりしてしまいます。心の傷が疼きます。
それでは今日はこの辺で。