先日のキネ旬シアターは『やさしい女』でした。
監督:ロベール・ブレッソン
出演:ドミニク・サンダ、ギイ・フランジャン
製作:1969年 フランス 1986年 日本公開
今日のキネ旬シアターでの映画はロベール・ブレッソン監督の『やさしい女』です。この映画が日本で公開されたのはフランスでの公開から17年後の1986年のことでした。残念ながらその時は観ていませんでした。日本でも映画ファンには人気のあった監督の作品なのに17年も公開されずにいたのが不思議です。またビデオ化もされていませんでした。したがって今回初見でした。
ブレッソン監督作品は学生時代にどこかの名画座で観た『バルタザールどこへ行く』が印象的でした。ロバの話ですが、そのロバを取り巻く人間模様の描き方が興味深かったのです。また『スリ』は多分テレビで放映されたときに観た記憶があります。これらの映画はすべて白黒でしたが、ブレッソン映画初のカラー作品がこの『やさしい女』です。
主演のドミニク・サンダは日本でも人気のあった女優です。その彼女のデビュー作品がこの『やさしい女』です。ドミニク・サンダが主演の映画が長年お蔵入りになっていたというのも解せません。彼女はこの映画の翌年にはベルナルド・ベルドリッチ監督の『暗殺の森』、1971年にはヴィットリオ・デ・シーカ監督の『悲しみの青春』、1974年にはルキノ・ヴィスコンティ監督の『家族の肖像』など巨匠と呼ばれた監督の作品に出演しており、日本のCMにも出演しました。
さて、今回の映画『やさしい女』はドストエフスキーの短編小説が原作になっています。昨年がドストエフスキー生誕200年ということで、それを記念して上映されたようです。デジタル・リマスター版です。ブレッソン監督は『スリ』と1971年の『白夜』でドストエフスキー作品を映画化しています。
話の方は、質屋を経営する男が店にやってきた若い女に一目惚れします。3度目に店に来た時に初めて口をききました。そして男は女に求婚します。断る女性を説得し結婚します。そして二人の質素ですが幸せな生活が始まります。
しかしある日、常連客の老婦人の持ってきた品物に彼女が高額な値段をつけたことから、男と女に亀裂が生まれます。女が客の男と話す姿を見て激しく嫉妬もします。男は悩みます。女も悩みます。そして悲劇が・・・。
映画のオープニングがラストシーンになります。話は男の回想と現在(男がお手伝いさんに話しかける)が交互に進行します。
登場人物はほぼ3人(夫婦とお手伝いさん)。会話はほとんどありません。音楽は劇中でレコードをかける場面のみ。
ドミニク・サンダ、この時17歳ということになっていますが、1948年生まれという説もあって、そうなると20歳ということになります。いずれにしても、劇中ほとんど無表情で、眼力だけで表現する、彼女の美しさに脱帽でした。
男と女の間の深い溝、何故か野坂昭如の『黒の舟歌』を思い出してしまいました。
「男と女の間には、深くて暗い川がある、誰も渡れぬ川なれど、エンヤコラ今夜も船を出す」
どうしても理解し合えない深い溝が男と女にはあるのでしょうか。
それでは今日はこの辺で。
ギイ・フランジャン
ギイ・フランジャン