今日の「この人の、この1枚」は38 Specialの『Tour de Force』です。
38specialはレーナード・スキナード(LYnyrd Skynyrd)のヴォーカリスト、ロニー・ヴァン・ザント(Ronnie Van Zant)の実弟であるドニー・ヴァン・ザント(Donnie Van Zant,vo,g)が中心になって結成されたバンドです。
大元は1968年にドニーとジェフ・カーリシ(Jeff Carlisi,g)とケン・ライオンズ(Ken Ryons,b)にスティーヴ・ブルックリン(Steve Brookins,ds)とカーリシに代わってドン・バーンズ(Don Barnes,vo,g,key)が加わって結成されました。1968年頃のことでした。しかし、このバンドは一旦解散します。
そして1974年頃に再び集まり、そこにカーリシが戻り、新たにジャック・グローディン(Jack Grondin,ds)が加わって正式にスタートします。トリプル・ギターにツイン・ドラムという編成です。
兄・ロニーの貢献もあって1977年にはA&Mと契約を結び、その年にファーストアルバム『38 Special』がリリースされ、翌年にはセカンドアルバム『Special Dlivery』がリリースされました。
この2枚はいわゆるサザンロックと呼べるサウンドでした。私がこのバンドに注目したのは、当然ロニー・ヴァン・ザントの弟だということが一番でした。期待するのはレーナードのようなサウンドでした。
ファーストアルバムがリリースされる直前にケン・ライオンズが脱退、代わりにラリー・ジャンストローム(Larry Junstrom,b)が加入していました。さらにバッキング・ヴォーカルで2人の女性ヴォーカルが加わりました。一人はロッシントン・コリンズバンドでリードヴォーカルを担当するデール・クランツ(Dale Krantz,bvo)でした。
1979年に3作目『Rockin' Into The Night』をリリースします。
この辺りから様子が変わってきます。時代的にも80年代を目前にして産業ロックが流行りだしていました。彼らもその流れを取り入れ、ポップなメロディとサウンドに変化し始めました。タイトル曲はサヴァイヴァー(Survivor)のメンバー、ジム・ピートリック(JIm Peterik)が書いた曲で、これがヒットしました。
そして1981年、1982年にそれぞれ『Wild-Eyed Southern Boys』『Special Forces』をリリースし立て続けに大ヒットします。ここでもジム・ピートリックの曲や共作が数曲取り上げられています。
そして1983年に『Tour de Force』がリリースされました。
Side A
1.If I'd Been the One
2.Back Where You Belong
3.One Time for Old Times
4.See Me in Your Eyes
Side B
1.Twentieth Century Fox
2.Long Distance Affair
3.I Oughta Let Go
4.One of the Lonely Ones
5.Undercover Lover
プロデュースはロドニー・ミルズ(Rodney Mills)、ドン・バーンズ、ジェフ・カーリシです。
このアルバムも全米22位を記録するヒットとなりました。このアルバムを含む前3作はいずれもプラチナ認定され、代表作となりました。このころにはすっかり産業ロックの代表選手になって、南部の泥臭さはなくなっていました。個人的にはちょっと複雑な気持ちでした。
その後は中心メンバーのドン・バーンズがバンドを去ったりして、メンバーが入れ替わりましたが、現在はそのドン・バーンズが戻り、逆にドニーが健康上の理由でバンドを去っています。
振り返ってみれば、70年代に確立したサザンロックというカテゴリーが80年代には消滅するというきっかけを作ったバンドだったのかもしれません。皮肉にもサザンロックの代表バンドのレーナード・スキナードの弟分がその役割を果たしたのです。ロニーは天国から見守っていたのでしょう。
38 Special - If I'd Been The One
38 Special - Back where you belong
38 Special-Undercover Lover (Music Video)
それでは今日はこの辺で。