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映画『あんのこと』を観る ネタバレあり

先日のキネ旬シアターは『あんのこと』でした。

 

監督・脚本:入江悠

出演:河合優実、佐藤二朗稲垣吾郎、河井青葉、広岡由里子

製作:2024年  日本

 

2020年6月の新聞に実際に掲載された「ある1人の少女の壮絶な人生を綴った記事」に着想を得て、実話を元に映画化された作品だそうです。

 

主人公となる女性・香川杏は母子家庭に生まれ、幼いころから母親に壮絶な虐待を受け、小学校で不登校、12歳で売春を強要され、薬物依存症になった21歳の女性です。当時は東京のボロ団地のゴミ屋敷に住み、ホステスの母親と足の不自由な祖母と暮らしていました。

 

2018年秋のある日、杏は薬物の容疑で逮捕され、取り調べの刑事の多々羅と知り合います。多々良は杏に生活保護や多々良が主催する更生自助グループを紹介します。それまで大人を信用していなかった杏は次第に心を開いてゆきます。紹介されたシェルターに入居し、小さな老人ホームで仕事も初め、夜間中学にも通い始めます。仕事を紹介してくれたのは自助グループを3年前から取材する雑誌記者の桐野でした。

 

しかし、2020年の新型コロナウィルスで非正規雇用だった杏は解雇され、夜間中学も休校となってしまいました。さらに、多々羅が逮捕されます。理由は自助グループの女性に性的関係を強いたという容疑でした。その原因となる記事を書いたのが桐野でした。桐野は多々羅の様子をずっと伺っていたのです。2人を失った杏は再び希望をなくしてゆきます。

 

そんなある日、シェルターの隣人である三隈沙良が訪ねてきます。沙良は幼い息子・隼人を強引に預け、失踪してしまいます。杏は止む無く隼人と暮らすことになり、困惑しますが、やがて隼人の世話をするうちに愛情が生まれ、生きがいとなっていくのです。

 

ところが、母親が杏の居所を突き止め訪ねてきます。母親は隼人と共に団地に連れ帰ります。そして再び売春を強要します。クタクタになって家に戻ると隼人の姿がありません。杏はパニックになり、母親に問いただすと児童相談所が連れていったという。杏は母親に包丁を向けますが祖母に制されます。シェルターに戻った杏は覚せい剤を打ち、ベランダから飛び降り自殺を図るのでした。記者の桐野は「自分があんな記事を書かなければ杏ちゃんが死ぬことはなかった」と呟くのでした。

 

とてもとてもショッキングな映画でした。こんな悲惨な人生もあるんだ、そして世の中にはこんな毒親が存在するんだ、という現実を突きつけられました。暴力による虐待、覚醒剤を打つ、売春を強要する、とてもじゃないが考えられません。

しかし、ある人物達との出会いによって娘は更生してゆきます。根は素直な娘だったのでしょう。年寄りには優しく、幼い子供にも愛情を注ぎます。しかし、それも長くは続きませんでした。信頼した人物に去られ、見つけた生きがいからも引き離され、全く希望を失った娘は死を選ぶしかなかったのでしょう。

 

この新聞記事は記憶にないところを見ると多分読んでいないのでしょう。どのような記事だったのかはわかりませんが、ドキュメンタリー風の映像にすることによって、よりリアルになったのではないかと思います。

 

やさぐれ刑事の多々羅は性的加害で逮捕されますが、杏への気持ちに偽りはなかったと信じたいです。多々羅役の佐藤二朗と主役の河合優実の演技が見事でした。

 

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それでは今日はこの辺で。