監督:イバーノ・デ・マッテオ
主演:マルゲリータ・ブイ、アンドレア・ピットリーノ、バレリア・ゴリノ
制作:2016年・フランス・イタリア、日本公開2017年
夫ののDVから逃れてローマからトリノにやって来た母子の物語です。
ある日、13歳の息子ヴァレリオが学校から帰ると父が母に激しい暴力を振るっているところを目撃し、失禁してしまいます。
母親アンナはヴァレリオを連れ、家を後にして親友カルラの住むトリノ絵とへとやってきます。カルラは独身で子供もいないため大歓迎してくれます。
しかし、アンナの就職はなかなか決まらず、ヴァレリオも学校で友達もできません。母親の干渉にも嫌気がさしてきます。
ある日、前夫からアンナの父親経由でヴァレリオ宛に手紙が届きます。アンナは無断でそれを読んで隠しておいたのですが、ヴァレリオがそれを見つけて読んでしまい、家を飛び出してしまいます。やっと探しあてたアンナをヴァレリオは激しくなじります。
アンナは思春期のヴァレリオをどのように扱っていいのか悩みます。ようやくアンナの就職が決まりましたが、それはビルの清掃婦で3交代制で、夜勤もあります。ますます母子はすれ違いが多くなります。
そんな中ヴァレリオはいつも公園で客を拾っている町の売春婦ラリッサに淡い恋心を抱きます。売春婦と言ってもおそらく十代でしょう。彼女には相手にされませんが、しつこく付きまとううちに、とうとう会う約束をしてくれました。そして遊園地などへ行って楽しい一日を過ごします。彼女は移民で故郷にいる弟を思い出していたのでしょう。
ある夜、ヴァレリオがいつもの公園に行くと、ラリッサが客引きをして車の中で売春をしている場面を目撃してしまいます。ヴァレリオは判ってはいても激しいショックを受けます。そして車の窓ガラスを割って逃げてきてしまいます。そして母親にも当たり散らし、悶々とした日々を過ごします。
見かねた近所のカフェの主人が事情を聞きます。この主人はヴァレリオが慕っている元サッカー選手で、自動車事故で子供を死なせてしまった過去を持っています。主人は彼女に手紙を書いて謝ったら、とアドバイスします。ヴァレリオは手紙を書いてラリッサに私に行きますが、彼女はいませんでした。やむを得ず、いつも立っている場所に手紙を置いてきました。しかし、その手紙は彼女に渡ることはありませんでした。
手紙を書いたことで、モヤモヤが治まったのか、母親にもこれまでのことを謝り、休日に2人で外出します。母子は新しい人生に向けて歩き出しました。
この映画は子供を持った中年女性の自立と思春期の少年の成長を描いた作品です。この女性が救われたのは、受け入れてくれる親友の存在です。この親友がいなければ、逃げ出すという決断が出来たかどうか。専業主婦から一転して仕事を探す難しさ、これは万国共通です。また思春期の男の子とどのように接していいのか迷う姿がなんとも痛々しいです。
もう何十年も前のことですが、自分の思春期を思い出してみて、この少年の気持ちが痛いほど理解できました。どうにもならないモヤモヤみたいなものがこの時期にはあります。そんなはけ口を悪いとは思っていても母親にぶつけてしまう。特にこの少年には母親しかいないわけですから猶更です。
しかし少年は近所の主人に父親を見、また友達が出来ることによって変わってゆきます。母親はそれを見守っているだけでいいのだと思います。
ラストに懐かしい歌が流れてきます。シャーリー・バッシーの「This Is My Life(私の人生)」です。映画「007シリーズ」でも使われたヒット曲です。なんか昔の映画を観ているような不思議な気分にさせられました。
主演のマルゲリータ・ブイは先日自宅で観た『母よ、』で主演した女優です。息子役のアンドレア・ピットリーノはかわいい少年で人気が出ることでしょう。
話はそれますが、少年時代や学生時代に洋画を観て感じたのは、日本と比べて、食事の美味しそうなこと、家や街の近代的なことにいつも羨ましい思いで観ていましたが、最近では逆に日本の方がよほど街なども発展しており、そういう面での羨ましさは無くなりましたが、反対に古き良きものが残っているという羨ましさが出て来ました。不思議なものです。
シャーリー・バッシー。現在80歳。大歌手でした。
Shirley Bassey This Is My Life Lyrics
それでは今日はこの辺で。