先日のキネ旬シアターは『CLOSE/クロース』でした。
監督・脚本:ルーカス・ドン
出演:エデン・ダンブリン、グスタフ・ドゥ・ワール、エミリー・ドゥケンヌ
製作:2022年 ベルギー・オランダ・フランス 2023年 日本公開
兄弟のように育った幼馴染みの少年2人に起こる心の変化と後悔を描いた作品です。カンヌ映画祭のグランプリを受賞した作品です。
花き業を営む農家の息子レオと幼馴染のレミ。二人は昼も夜も一緒に遊んだりして大の仲良しです。
13歳になって2人は同じ中学校に入学します。入学の初日、2人はピッタリとくっついて座ります。それを見た女の子たちが「2人は付き合ってるの?」と聞きます。レオは即座に否定し「親友以上、兄弟同然なんだ」と説明しますが、彼女たちは納得した様子はありません。
その後も何かといじられるレオは徐々にレミとの距離を置くようになります。ある朝、レオはいつも2人で登校していたにもかかわらず、その日はレミを待たずに1人で登校します。レミは傷つきます。2人はその場で大喧嘩をします。そのまま仲直りができず、時が過ぎてゆき、ある日とんでもないことが起こるのです。
課外授業の日、バスの中にレミの姿がありません。帰りのバスの中で先生が皆に家族の人が迎えに来てるから一緒に講堂に集合するようにと告げます。不吉な予感を感じたレオは母親に何があったのかを問いただします。母親はなかなか答えられずにいましたが、「レミはもういないの」と答えるのでした。レオは夢中でレミの家に向かいます。しかし、誰もいません。
レオはレミの死を自分の責任だと思い込みますが、誰にも悩みを打ち明けられず、アイスホッケーの練習や家業の手伝いに精を出し、なんとか冷静を保とうと努力しますが、おねしょをしたり、一人で寝られず兄の布団に潜り込んだりと精神状態は不安定です。そして、とうとうレミの母親に会いに行き、「僕のせいなんだ」と告白します。
母親は一旦はレオを撥ねつけたものの、その後レオをしっかり抱きしめ二人で泣くのでした。時が経ち、レオはレミの家を訪ねましたが、家は空き家になっていました。レオは我が家の花畑を疾走します。そして立ち止まり、振り返ります。果たしてその目には何が映ったのでしょうか。
あらすじを書いているうちにすっかりネタバレになってしまいました。失礼しました。
映画はほとんど語りません。レミは何故死んだのか。レオは何故レミを遠ざけたのか。想像するしかありません。ただ、思春期に味わう子供時代との微妙なズレ。レオとレミは一緒に寝るほどの中の良さ。そこには性的なものはありません。ただただ無邪気に仲が良かったのです。しかし、同級生たちのからかいによってレオに性的なものへと心の変化が生まれ、レミとの間に亀裂が生じてしまったのです。そしてそんな自分にイライラしていたのです。
思春期の微妙な心の揺れ、自分にも経験があります。ちょっとした一言が相手を深く傷つける事はありますが、この映画のように自分の取った言動が元で自殺されてしまったらどうでしょう。それこそ一生心の傷として癒えることはないでしょう。いじめの言葉はやがて自分を苦しめることになるのです。
ラストのレオが見つめるものは、果たして何だったのか。深い後悔なのか、それとも全てを吹っ切った表情なのか。
それでは今日はこの辺で。