Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

フォークソング、岡林信康のことなど

私が初めて日本のフォークソングなるものに出会ったのは、確か中学生の頃に流行ったザ・フォーク・クルセダーズの「帰ってきたヨッパライ」と高石友也の「受験生ブルース」だったと思います。当時は両方とも面白い曲だなあと感心しましたが、その程度の感想でした。その後TBSのテレビ番組『ヤング720』という番組に高石友也岡林信康なる人物を連れて出演しました。そして確か「チューリップのアップリケ」を唄ったと思います。なんて暗い歌なんだろうと思いました。当時それが被差別部落の歌などとは知らず、ただ貧乏な女の子の歌なんだというふうにしか思えませんでした(被差別部落の女の子の作文が元になっていた)。

やがて高校に進学して、誘われるままいろいろな集会などに参加すると、最後は大概は合唱で締めくくられるのですが、その時の歌が「友よ」だったり「We Shall Over Come」だったり「遠い世界に」だったりでした。それで「友よ」という歌は岡林信康が作った歌なのだということが分かったのです。ラジオの深夜放送などを聴いていると岡林の歌が数多くかかるようになってきました。そして岡林や高石、五つの赤い風船高田渡遠藤賢司、ジャックスなどの関西フォークと呼ばれる連中の歌を夢中で聴くようになりました。中でも岡林の歌にはどんどん引き込まれました。「くそくらえ節」「がいこつの歌」「山谷ブルース」「手紙」等々、当時の全共闘運動、学園闘争、ベトナム反戦運動、反差別運動などの社会情勢とマッチングしながら若者の間で多くの支持を得ました。新宿西口フォークゲリラなどもこの頃でした。岡林は「フォークの神様」と祭り上げられ絶大な人気を誇りました。しかし彼はその人気のプレッシャーやプロテストソングの欺瞞性や弾き語りフォークの限界などから蒸発してしまいます。

彼のデビューアルバム『わたしを断罪せよ』はフォークアルバムの大傑作ではないでしょうか。

『手紙』

わたしの好きなみつるさんは

おじいさんからお店をもらい

二人に一緒に暮らすんだと

嬉しそうに話してたけど

わたしと一緒になるのだったら

お店を譲らないと言われたの

お店を譲らないと言われたの

 

わたしは彼の幸せのため

身を引こうと思っています

わたしと一緒になれないのなら

死のうとまで彼は言った

だからすべてをあげたこと

悔やんではいない別れても

悔やんではいない別れても

 

もしも差別がなかったら

好きな人とお店が持てた

部落に生まれたその事の

どこが悪い 何が違う

暗い手紙になりました

だけどわたしは書きたかった

だけどもわたしは書きたかった

 

これは差別を苦にして自殺した女性の遺書を元にして岡林が作詞作曲したものです。

 

そして今度ははっぴいえんど大滝詠一細野晴臣鈴木茂松本隆)をバックに従えボブ・ディランのようにロックでカムバックします。アルバム『見るまえに跳べ』です・「私たちの望むものは」「それで自由になったのかい」「今日をこえて」「おまわりさんに捧げる歌」「性と文化の革命」などのメッセージソングを大音量のロックで演奏しました。一部の昔からのファンからは非難されましたが、私はしびれました。ますます岡林の大ファンになりました。

このアルバムはジャックスの早川義夫がプロデュースしはっぴいえんどがバックを務めたこれまた日本のロックアルバムの大傑作です。「自由への長い旅」という名曲も含まれています。ジャックスの曲も何曲がカバーしています。

『私たちの望むものは』

私たちの望むものは 生きる苦しみではなく

私たちの望むものは 生きる喜びなのだ

私たちの望むものは 社会のための私ではなく

私たちの望むものは 私たちのための社会なのだ

私たちの望むものは 与えられることではなく

私たちの望むものは 奪い取ることなのだ

私たちの望むものは あなたを殺すことではなく

私たちの望むものは あなたと生きることなのだ

 

今ある不幸せにとどまってならない

まだ見ぬ幸せに今飛び立つのだ

 

私たちの望むものは 繰り返すことではなく

私たちの望むものは 絶えず変わっていくことなのだ

私たちの望むものは 決して私たちではなく

私たちの望むものは 私であり続けることなのだ

 

今ある不幸せにとどまってならない

まだ見ぬ幸せに今飛び立つのだ

 

私たちの望むものは 生きる喜びではなく

私たちの望むものは 生きる苦しみなのだ

私たちの望むものは あなたと生きることではなく

私たちの望むものは あなたを殺すことなのだ

 

今ある幸せにとどまってならない

まだ見ぬ不幸せに今飛び立つのだ

 

私たちの望むものは

私たちの望むものは

私たちの望むものは

・・・・・・

 はっぴいえんどのロックに乗って最後は絶叫、大合唱、感動でした。

 

 

これらは当時のライブの雰囲気がよくわかります。『狂い咲きコンサートは』伝説の日比谷野音でのライブです。レコードで3枚組です。

正直、私は彼の歌がきっかけとなって貧富の差や部落差別など社会の矛盾や社会主義共産主義革命を勉強したような気がします。そして行動することが大事なのだということを学んだような気がします。

しかし、その後70年安保の敗北によって全共闘運動などの反体制運動は下火になっていきます。フォークの世界も反体制的な歌よりも個人の内面を表現する歌へとシフトしていきます。社会から個へ、『私達』から『私』への変化です。よしだたくろう井上陽水かぐや姫などが人気を博して来ます。そのような中で岡林は『俺らいちぬけた』というアルバムを発表して再び姿を消します。

このアルバムは個人的には好きなアルバムです。「申し訳ないが気分がいい」「つばめ」「俺らいちぬけた」など名曲がそろってます。佐藤信黒テントの演劇に提供した曲も2曲入っています。劇に出演もしていたはずです。

『申し訳ないが気分がいい』

抜けるような空が痛い

風が髭に遊んでゆく

申し訳ないが気分がいい

すべてはここにつきるはず

どうしてこんなに当たり前のことに

今まで気づかなかったのか

 

緑が瞳をえぐりだし

谷川と鳥たちの歌

申し訳ないが気分がいい

すべてはここにつきるはず

どうしてこんなに当たり前のことに

今まで気づかなかったのか

 

土と緑と動くものと

水と光とそして私

今初めて彼らを知り

今初めて私を知る

今この時 私は私を

人と、人と名付けるのだ

 

これは彼が都会を離れ、田舎で暮らし、自然の豊かさに触れた様子を歌ったもので、人間性を取り戻していく様子が歌われています。

姿を消した後、彼は京都の山奥で農業生活に入り、たまにライブ活動をしていました。

そんな折、私がちょうど大学入学が決まって東京へ上京することになった4月に、岡林のコンサートがあるとわかりました。早速チケットを購入して友人のS.S君と出かけました。

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このライブは『4人の会』といって加藤和彦、西岡たかし(赤い風船)、はしだのりひことの共演でした。それでも初めて生で見る彼の姿に興奮しました。どんな曲をやったのかはさすがに憶えていませんが、ディランの「I Sall Be Releast」と「俺らいちぬけた」「申し訳ないが気分がいい」「ホビット」あたりはやったというかすかな記憶があります。

私も高校生の頃、従姉からもらったクラシックギターでギターを少し覚え、大学に入って少ない小遣いでフォークギターを買い岡林のコピーを始め、やがて自分で曲を作ったりしていました。恥ずかしい!

その後、彼は松本隆のプロデュースで名盤『金色のライオン』を発表。

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そして演歌へと目まぐるしく変わります。このころ美空ひばりにも楽曲を提供しています。

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中野サンプラザでのコンサートでは美空ひばりが飛び入りゲストで参加しました。その存在感の大きさにびっくりしました。このコンサートもS.S君と観に行きました。

現在も彼はアルバム、ライブ活動と積極的に音楽活動を行っています。私はプロテストフォークの終焉とともに日本のフォークミュージックからは遠ざかりますが、もちろんたくろうや陽水などは聴いていましたが、そこまで夢中にはなれませんでした。代わりにボブ・ディランザ・バーズなどのフォーク・ロックそしてカントリー・ロックへと興味は広がっていきますが、この辺の話は長くなりますので続きはまたの機会ということで。

しかし岡林信康だけは楽曲が好きだということもあって随分長く聴き続けました。特にお勧めは『ラブソングス』と『街はステキなカーニバル』ですね。ナイーブさとアナーキーさとが絶妙に入り混じって最高です。

特に後者の「君に捧げるラブソング」、これを聴いて泣いてください。

 

この他にも彼には素晴らしい曲がいっぱいです。

数年前には60年代から70年代初頭にかけての彼のライブ音源がCD化されました。すべて購入し懐かしく聴いています。 

商品の詳細 岡林信康 ライブ中津川フォーク・ジャンボリー (紙ジャケット仕様) 商品の詳細 商品の詳細

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こうして振り返ってみると、私の高校時代は映画と音楽によって社会に目を向けることが出来るようになったのだとつくづく感じます。映画や音楽、本が人に与える影響の大きさを改めて気づかされます。感謝、感謝です。