Flying Skynyrdのブログ

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この人の、この1枚 『この世で一番キレイなもの/早川義夫』

早川義夫は1960年代、ロックバンド「ジャックス」のリーダーとして関西フォークブームに乗って活躍しましたが、2枚のアルバム『ジャックスの世界』『ジャックスの奇蹟』を発表した後あっさりと解散しました。それまでに日本にはこんなバンドはいなかったのではないでしょうか。後に六文銭高石友也のナターシャセブンに加入するギタリストの木田高介も在籍していました。またセカンドからはつのだひろが加入しました。早川義夫の上手くはないですが強烈な絶叫型ヴォーカルでメッセージソングとラブソングを歌う姿は当時では珍しかったのです。パンクロックの原型かもしれません。

その後、URCのディレクターになり岡林信康加川良を担当します。岡林信康の『見るまえに跳べ』では5曲も早川義夫の曲が提供されました。「ラブ・ゼネレーション」「NHKに捧げる歌」「堕天使ロック」「ロールオーバー庫之助」「無用の介」です。全曲メッセージソングです。当時の岡林からすれば当然のことですが、オリジナルの「愛する人へ」は早川義夫の影響だと想像します。

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1969年にはディレクターを務める傍ら、ソロアルバム『かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう』を発表します。このアルバムからは「サルビアの花」が多くに人にカバーされヒットしました。が、オリジナルは決してきれいな歌ではなく、男のどろどろとした嫉妬のようなものを歌い上げています。

 

そして1972年に音楽界から引退し、書店を開業し23年間も沈黙を守ります。

1996年、突然音楽界に復帰し、アルバム『この世で一番キレイなもの』を発表します。

01.この世で一番キレイなもの

02.君のために

03.君に会いたい

04.お前はひな菊

05.H

06.サルビアの花

07.雪

08.桜

09.赤色のワンピース

10.いつか

 

ほぼ全曲ラブソングです。心の底から湧き出てくるような言葉の数々。中年男が、いや中年男だからこそ書けるのかもしれません。

「君のために」の梅津和時のサックスと渡辺勝のむせび泣くようなギター、早川義夫の上手くないが朴訥なヴォーカル、感激します。

「この世で一番キレイなもの」の一節、「キレイなものは どこかにあるのではなくてあなたの中に 眠っているものなんだ いい人はいいね 素直でいいね キレイと思う心がキレイなのさ」、じーんと来ます。

サルビアの花」はセルフカバーです。歌い方がちょっとおとなしくなったでしょうか。熟練したのかな。

「赤色のワンピース」は学生時代の恋人との思いで。鶴川から秋葉原まで電車で話したこと、お茶の水の画材屋・レモンに行ったこと、同棲したこと。情景が目に浮かぶようです。自分のことと重ね合わせ切なくなります。早川義夫のピアノ弾き語りです。

ラストの「いつか」は名曲です。詩を載せます。

 

誰もが 心の中で 歌を歌ってる

本当のものをつかむため

 

沈黙の中で 血が騒ぐ

空にいっぱい 夢を描き

僕はじいっと待っていた あふれてくるのを

まっすぐな声で 歌うことを

生きてゆく悲しみ 生きてゆく喜び

 

いつだってひとりなんだ 涙を落とせ

終わってはいないさ もっと叫べ もっと歌え

 

何も変わらない 時が流れて行く

弱さが 素晴らしいのさ

 

どんなに飾っても 隠しきれない

心の底が 見えてしまう

人は見えた通りの ものでしかない

弱い心が 痛みを感じて

やさしさはそこから 生まれてくるのだ

 

みにくさやいやらしさを 素直にあらわせ

やさしさを歌おう もっと見つめろ もっと歌え

 

心を立たせろ 虹を立たせろ

言葉を立たせろ 音を立たせろ

足りないのではなくて 何かが多いのだ

愛を歌え 願いを歌え

美しいものは 人を黙らせる

 

大空に映し出せ 鏡に向けて吠えろ

それが生きること もっと身を削れ もっと捨てて行け

もっと突き詰めろ もっと歌え

 


早川義夫 赤色のワンピース


早川義夫 いつか


早川義夫 ♪サルビアの花

「もとまろ 」バージョン


もとまろ サルビアの花

その後も、コンスタントのアルバムを出し続けます。どれをとっても素晴らしく、心打たれるアルバムたちです。

  

  

 

 最後の作品は2008年に発売された作品で、2007年に亡くなったヴァイオリニストHONZIとのライブ盤です。佐久間正英との3人。

 

なお、ジャックス時代と最初のソロもCDで出ています。

  

 

ジャックス時代の名作「ラヴ・ジェネレーション」です。岡林信康もアルバム『見るまえに跳べ』でカバーしています。歌詞の「信じたいために疑うのだ」は岡林の「自由への長い旅」へ受け継がれることになります。


Jacks - Love Generation

悩み多き40代、早川義夫の歌にずいぶん助けられました。

 

それでは今日はこの辺で。