Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

映画『歓びのトスカーナ』を観る

昨日のキネ旬シアターは『歓びのトスカーナ』でした。

監督:パオロ・ヴィルズィ

主演:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ミカエラ・ラマッツォッティ

制作:イタリア、フランス、2017年公開(日本)

 

イタリアの名匠パオロ・ヴィルズィ監督の作品でイタリアのアカデミー賞と言われるダビッド・ディ・ドナテッロ賞で17部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、主演女優賞など5部門を受賞した作品だそうです。

 

トスカーナとはイタリア中部にある州で州都はフィレンツェ文化遺産や自然景観に恵まれた地方らしいです。

ストーリーはそのトスカーナ州にある診療施設が舞台です。心の病を持った女性たちがここで療養しています。

ある日一人の患者が入所してきます。ドナテッラです。やせ細った体にタトゥがたくさんしてあります。その暗く沈んだ様子が気になった同じ入寮者でおせっかいな自称伯爵夫人ベアトリーチェは彼女に興味を持ち色々と話しかけます。ドナッテラは初めのうちは煩がっていましたが、徐々に話すようになっていきます。

しばらくして施設外の畑作業で収入を得た2人は施設のバスではなく、公共のバスに乗り脱走してしまいます。2人は終点まで乗り作業で得た報酬でショッピングセンターに行き買い物を楽しみます。作業所から連絡を受けた療養施設の職員たちが捜索に来ますが、2人はうまく逃げます。そして男に誘われレストランで食事をすることになりますが、男がレストランで座席の交渉をするために車から離れると、ドナテッラがいきなり車を運転し、走り出してしまいます。そして高級レストランで食事しますが、勿論そんな金などありません。ベアトリーチェは伯爵婦人を装い店を出ようとしますが、結局車の持ち主に見つかり逃げ出します。

やむを得ずドナテッラの故郷の母親に会いに行きます。しかし、母親は病気持ちの老人の愛人になり、老人が死ぬのを待って遺産を狙っているような生活をしていました。2人は耐えられず飛び出し、街の若い連中の車に乗りクラブへと行きます。しかし、そこはかつてドナテッラが働いていたクラブで、そこのオーナーと不倫していたのです。そして子供を産んでいたのです。しかしオーナーは親子を見捨てたのでした。失望したドナテッラは子供と共に橋の上から身を投げたという過去があったのです。ドナテッラはそのオーナーを見つけると飲み物を投げつけ、逃げるように去っていきます。

一方のベアトリーチェは陽気に酒など飲んでおり、頭にきたドナテッラは彼女の頭を酒瓶で殴り怪我をさせて警察に連行され、結局精神病院に入れられてしまいます。ベアトリーチェは元夫の弁護士宅を訪れ、元夫に過剰な睡眠薬を飲ませ、眠っている間に金と宝石持ち出します。その間、パソコンでドナテッラの事件を調べ上げ、彼女に子供を会わせてあげようと決意します。

ドナテッラが収監されている病院の職員を買収してドナテッラに手紙と宝石を渡すよう計らいます。脱走したドナテッラとベアトリーチェは落ち合って、ドナテッラの子供を引き取った夫婦の家へ行きます。そしてベアトリーチェが夫婦にドナテッラと子供を合わせて欲しいと頼みますが断られます。ドナテッラは家の裏に回るとそこで子供が遊んでいました。彼女がじっと見ていると子供が気が付き寄って来そうになりますが、母親に呼ばれて行ってしまいます。

2人は行く当てもなく公園のベンチで休みます。そしてドナテッラは自分の過去を話し始めます。じっと聞き入るベアトリーチェ。会えてよかったと抱き合い確かな友情が芽生えます。

2人に療養施設の追ってが迫ってきます。ベアトリーチェはドナテッラに早く逃げろと促し自分は囮になって捕まります。ドナテッラは逃げる途中でバイクに撥ねられます。施設の職員が探しに来ますが彼女は逃げてしまっていました。

翌朝ドナテッラは海岸で目を覚ますと、息子と家族が遊びに来ていました。息子が近寄ってきたので、「誰かわかる?」と聞くと、「このまえ家を覗いていた人」と答えます。2人は両親の前で海に入って暫くの間遊びます。そしてドナテッラは黙って去っていきます。

連れ戻されたベアトリーチェは施設で以前のような元気もなく暮らしていました。窓から外を眺めていると、門にふらふらになってたどり着いたドナテッラが倒れています。職員に抱きかかえられるように入ってくるドナテッラにベアトリーチェは微笑みながら小さく手を振ります。

 

ベアトリーチェは誇大妄想、自己顕示が強く虚言癖があるということでこの施設に入所しているようですが、とにかく速射砲のようにしゃべくりまくります。周りはもう馴れっこになっているのか相手にしません。一方のドナテッラは過去に深い心の傷を持ち精神安定剤なしには生きられない女性。この2人が旅をする間に次第にお互いを理解し合い友情を育んで行くという話で、一見よくあるドラマとなりそうですが、しかしこの映画の根底には2人が精神に異常をきたしており、一般社会には受け入れられないという問題が流れています。映画の中でも患者を社会に戻すか否かの判定が慎重に取り扱われています。

ドナテッラが結局は療養施設に戻ってくるというのはベアトリーチェとの友情によるものとも受け取れるし、どこにも行くところが無いという絶望にも受け取れます。コミカルなタッチで描かれているこの映画の、このラストシーンは逆に深刻さを感じさせます。

 原題は「狂った歓び」というような意味です。正常と異常、正気と狂気、の境目とはなんでしょう。特に今の時代においてこの命題の解答を見つけるのは至難の技です。何しろすぐにキレれたり、暴言を吐いたり、平気で嘘をついたり、耳を疑うような発言をしたりする人たちが日本の政治・社会を主導しているほどなのですから。この人たちの言動こそ狂気だと言いたいくらいです。また、このような人たちが作っている社会こそひょっとしたら狂気の世界なのかもしれません。狂気の世界ならば異常が正常、狂気が正気、そんな自己矛盾が起きてしまうのではないでしょうか。

今回の映画を観ていてこの超難問を突きつけられたような気がしました。

 

ドナテッラ役のミカエラ・ラマッツォッティはパオロ・ヴィルズィ監督の奥様です。

なぜか若い頃のミック・ジャガーに似ています。そう思うのは私だけでしょうか。


映画『歓びのトスカーナ』予告編

 

それでは今日はこの辺で。

この人の、この1枚 『レヴォン・ヘルム&ザ・RCO・オールスターズ(Levon Helm & The RCO・AII-STARS)/レヴォン・ヘルム&ザ・RCO・オールスターズ(Levon Helm & The RCO・AII-STARS))』

昨日の続きです。

ザ・バンドの活動休止に伴って、リック・ダンコは早速ソロアルバムの制作に取り掛かりました。そんなん中、もう一人のメンバー、レヴォン・ヘルムもabcレコードと契約し、ソロアルバムの制作に取り掛かりました。そして、リック・ダンコとほぼ同時期にファーストアルバムをリリースしました。厳密にはソロアルバムではなく、レヴォン・ヘルムがリーダーのグループを結成したのです。それがザ・RCO・オールスターズです。

なお、ザ・バンドとリック・ダンコについては過去の記事を参考までに。

lynyrdburitto.hatenablog.com

lynyrdburitto.hatenablog.com

このバンドのメンバーは次の通りです。

ブッカーT&MG’Sから

ブッカーT.ジョーンズ(Booker T.Jones,key,per)

スティーヴ・クロッパー(Steve Cropper,g)

ドナルド・"ダック"・ダン(Donald "Duck" Dunn,b)

ドクター・ジョンこと

マック・レべナック(Mac Rebennack,key)

ポール・バターフィールド(Paul Butterfield,harp)

フレッド・カーター・J(Fred Carter,J,g)

ホーンセクションとしてBS&Tから後にブルース・ブラザースに参加する

アラン・ルビン(Allan Rubin,trumpet)

ルー・マリニ(Lou Marini,sax)

トム・マローン(Tom Malone,trombone)

それと

ハワード・ジョンソン(Haward Johnson,sax,tuba)

サウンド・エンジニアが

エディ・オフォード(Eddie Offord)

そして

レヴォン・ヘルム(Levon Helm.vo,ds)

以上12人です。

 

1977年、アルバム『レヴォン・ヘルム&ザ・RCO・オールスターズ』がリリースされます。

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変形ジャケットになっており、中袋を抜くとこのようになります。

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Side A

1.Washer Woman

2.The Tie That Binds

3.You Got Me

4.Blues So Bad

5.Sing, Sing, Sing (Let's Make A Better World)

 

Side B

1. Milk Cow Boogie

2.Rain Down Tears

3.A Mood I Was In

4.Havana Moon

5.That's My Home

 

A-1 ドクター・ジョン(マック・レベナック)の作品。ドクター・ジョン得意のR&Bです。ノリがいい曲です。

A-2 これはドクター・ジョンとボビー・チャールズの共作。彼もウッドストックの住人で仲間です。レヴォンがちょっと声を変えて歌っています。

A-3 ブッカーTとドナルド・ダック・ダンの作品。スローテンポのR&B。

A-4 レヴォン・ヘルムがアレンジにかかわった作品。これもスローテンポのR&B。ヘンリー・グローバー作。

A-5 R&B、ブルースのアール・キングの作品。

B-1 ブルースマン、ココモ・アーノルドの作品。バターフィルドのハープが聴きどころです。

B-2 これもヘンリー・グローバーの作品。1940年~50年に活躍したR&Bマ ン。

B-3 メンバーのフレッド・カーター・Jrにの作品。彼は一時期、ザ・バンドの前身、ホークスにも在籍していました。

B-4 チャック・ベリーの作品。淡々と流れるメロディー。

B-5 ドクター・ジョンレヴォン・ヘルムの共作。ゆったりとした、いかにもウッドストック・サウンドという感じです。

 

この翌年、1978年、レヴォン・ヘルムはリック・ダンコ来日から約1か月後にRCO オールスターズのメンバーを引き連れて来日を果たしました。これもリック・ダンコに引き続き観に行きました。リック・ダンコの時のように居眠りに気を付けながら。ステージの華やかさに圧倒されました。

 

この年にレヴォン・ヘルムセカンドアルバムを発表します。今度は単独名義です。RCO オールスターズが解散したかというと、そうではなくMG’Sのドナルド・"ダック”・ダンがプロデュースしスティーヴ・クロッパーも参加、ホーン・セクションも今まで通りで、新たにマッスル・ショールズの有名なミュージシャン、デヴィッド・フッド、ロジャー・ホーキンス、バリー・ベケットなどが加わりました。録音はハリウッドとマッスル・ショールズで行われました。

アルバム名は『Levon Helm』です。

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そして1980年にサードアルバム『America Son』がリリースされます。今回はナッシュビル近郊での録音です。参加ミュージシャンもカントリー系の連中です。プロデュースはファーストからずっと付き合っているフレッド・カーター・Jrです。

見事なアメリカン・ロックアルバムに仕上がりました。

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この後、レヴォン・ヘルムザ・バンドの再結成に合流し、1998年の解散まで在籍し、その後は再びソロ活動に入りますが、1996年に喉頭癌に罹り、歌うことは絶望的になり、ドラムとマンドリンなどに専念します。

ところが奇跡的に声が復活し、ソロアルバムを発表します。これがグラミー賞のベスト・トラディショナル・フォーク・アルバムを受賞します。

しかし、2012年に71歳で亡くなりました。

これでザ・バンドのメンバーはロビー・ロバートソンとガース・ハドソンを残すのみとなりました。リチャード・マニュエルは既に1986年に42歳で亡くなっています。

 

光陰矢のごとし、時の経つのが早すぎます。


Levon Helm - "Washer Woman" - 1977


Levon Helm - "Blues So Bad" - 1977

 

それでは今日はこの辺で。

 

 

この人の、この1枚 『リック・ダンコ(Rick Danko)/リック・ダンコ(Rick Danko)』

1976年、ザ・バンドの解散が決定的となって、最初にソロアルバムの作成に取り掛かったのがリック・ダンコでした。

ザ・バンド内でライブ活動に慎重なリーダーのロビー・ロバートソンと他のメンバーとの対立が表面化してきて、ロビー・ロバートソンはとうとうライブ活動の中止を宣言します。そして最後に行われたコンサートが『ラスト・ワルツ』と題されるコンサートでした。このコンサートには錚々たるゲストが出演して、後に映画化され、レコードも発売されました。このコンサートは当然解散を意味していると解釈されたわけですが、レコード会社との契約の関係上、活動休止ということになって、その後、実質上のラストアルバム『アイランド』がリリースされますが、かつての輝きは既に残っていませんでした。

ザ・バンドについては以前に若干触れていますので参考までにこの記事を。

lynyrdburitto.hatenablog.com

そういう中で各メンバーはこぞってソロ活動に向かいました。リック・ダンコがアリスタ・レコードと契約し、レヴォン・ヘルムがabcレコード、ロビー・ロバートソンとガース・ハドソンワーナー・ブラザースといった具合です。

そしていち早く発売されたのがリック・ダンコの『Rick Danko』でした。ほぼ同時期にはレヴォン・ヘルムのファーストアルバムも発売されました。1977年のことでした。

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Side A

1.What A Town

2.Brainwash

3.New Mexico

4.Tired Of Waiting

5.Sip The Wine

 

Side B

1.Java Blues

2.Sweet Romance

3.Small Town Talk

4.Shake It

5.Once Upon A Time

 

主な参加メンバーを紹介します。

ロン・ウッド ギター (フェイセス、ローリング・ストーンズ

エリック・クラプトン  ギター (ヤードバーズ、クリーム、デレク&ドミノス他)

ブロンディ・チャップリン  ギター、ベース (ビーチ・ボーイズ

ティム・ドラモンド  ベース (ニール・ヤング&ストレイゲイターズ)

ガース・ハドソン  アコーディオン  (ザ・バンド

ジョー・ララ  パーカッション (マナサス)

ダグ・サム  ギター  (サー・ダグラス・クインテット、テキサス・トーネイド)

ロビー・ロバートソン  ギター (ザ・バンド

ジェリー・ベックリー  ギター (アメリカ)

リチャード・マニュエル  キーボード (ザ・バンド

レヴォン・ヘルム  バック・ヴォーカル  (ザ・バンド

 

とにかく凄いメンバーです。

楽曲は全曲、共作も含めてオリジナルで、プロデュースも本人です。

A-1 ロン・ウッドリードギターです。ボビー・チャールズとの共作。ザ・バンドのヴォーカルというとレヴォン・ヘルムが目立ちますが、ここでのリックのヴォーカルはバンドの時よりものびのびとしている感じです。

A-2 ブロンディ・チャップリンのギター、ティム・ドラモンドのベース。「ステー ジ・フライト」を思わせる曲です。

A-3 エリック・クラプトンのギター、ガース・ハドソンアコーディオン。この曲もボビーチャールズとの共作。ウッドストック仲間です。ゆったりとしたウッドストックサウンド。

A-4 ダグ・サムのギター。ダグ・サムはテックス・メックスミュージックの代表選手です。好きだなー。

A-5 これもダグ・サムのリード・ギターです。いい味出しています。ダグ・サムは やっぱり只者ではないです。

B-1 ギターにロビー・ロバートソン、ベースにティム・ドラモンド。ブルースナン バーですが、コーラスを交え賑やかにやっています。

B-2 ギターはマイケル・デ・テンプル、オルガンにジョージ・ウェバー。

B-3 ボビーチャールズとの共作で、ボビー・チャールズもソロアルバムで取り上げていて、彼の最大のヒット曲です。ここではリック・ダンコがリードギターです。ザ・バンド風の仕上がりになっています。

B-4 ギターにジム・アトキンソン、キーボードにリチャード・マニュエル、アコースティック・ギターにジェリー・ベックリー。

B-5 ギターはリック・ダンコ、オルガンにジョージ・ウェバー。

 

どの曲を聴いても、ザ・バンドを思わせるようなメロディーと演奏です。ザ・バンドのメンバーが全員参加してくれたことは嬉しい限りでした。

この翌年、リック・ダンコは来日します。たしか渋谷公会堂だったと思います。当時は残業、残業でやっと抜け出し、駆け付けたのですが、前日は徹夜だったため、途中で不覚にも寝てしまいました。コンサートで寝るなんて、後にも先にもこれだけでした。リック・ダンコ様には大変失礼いたしました。

 

このソロアルバム以降、エリック・アンダーセンとジョナス・フィールドと組んでアルバム制作をしていました。

 

 

ザ・バンドは1983年にロビー・ロバートソンを除いたメンバーで再結成します。

そして、1999年、リック・ダンコは56歳で亡くなります。彼の死によって、ザ・バンドは活動を停止しました。再結成以降3枚のアルバムをリリースしました。

       

 


2. Brainwash - Rick Danko (1977)

 


Rick Danko - Small Town Talk

 

 そのうち、レヴォン・ヘルムのアルバムについても書こうと思っています。

 

それでは今日はこの辺で。

映画 『エヴァの告白』を観る

今日の自宅シアターは『エヴァの告白』です。原題は『The Immigrant』です。

監督:ジェームズ・グレイ

主演:マリオン・コティヤールホアキン・フェニックス、ジェレミー・レナー

制作:アメリカ、フランス、2014年公開(日本)

 

1921年、戦争で両親を殺されたポーランド人のエヴァは妹のマグダと共に叔母を頼ってニューヨークへ移住しようとニューヨークのエリス島までやってきます。ところが入国審査で妹は肺結核の診断で隔離されてしまい、エヴァは叔母が迎えに来ておらず、住所もいい加減だという理由で強制送還されそうになります。

そこに、ブルーノという紳士が通りかかり、職員に賄賂を払い助け出してくれます。ブルーノは親切にも彼女をアパートに連れていき休ませてくれました。そして、働き口もないだろうからと、自分の店で働くようにと勧めます。

しかし、そこはショーなどもやりますが裏では売春もやっていたのです。エヴァは逃げようとしますが行き先もなく止む無く踊り子として働き出しますが、妹を助け出すためには金が必要と、やがては売春に手を染めるようになります。

ブルーノはエヴァを溺愛しますが、エヴァには激しく憎悪されています。エヴァはなんとかここから逃れようと、叔母の家を探し出し会いに行きます。叔母は感激して家に入れてくれますが、義理の叔父が警察に連絡し、エヴァは連行されてしまいます。エリス島で送還を待つ間、妹に合わせて欲しいと頼みますが、それは無理だと言われます。ただ慰問のショーに顔を出すかもしれないと言われ、エヴァもそのショーを観に行きます。妹は現れませんでしたが、そこで出演したマジシャンの男と知り合います。

ブルーノは再び賄賂を使い、エヴァを取り戻します。そして再びエヴァは働き出します。店に先のマジシャンの男オーランドが働きにやってきます。実はブルーノとオーランドは従弟同志だったのです。エヴァとオーランドは互いに惹かれ合うようになります。ブルーノは2人の仲に嫉妬します。

オーランドはブルーノに彼女を自由にしてやれと迫ります。怒ったブルーノははずみでオーランドを殺害してしまいます。そして遺体を山の中に捨ててしまします。殺害現場を目撃した売春婦仲間の女がブルーノにかわいがられているエヴァを嫉妬して、殺害したのはエヴァだと警察に知らせてしまいます。

警察に追われる中、ブルーノは殺したのは自分だ、君は逃げろ、そして何とか金を工面できたらエリス島で会おうと言って警察の目を自分に向けるようにして走り出します。ブルーノは袋叩きに遭い金を捕られます。エヴァは叔母に最後の願いだと金を借ります。叔母は内緒で貸してくれました。

そして、エリス島で再会し、ブルーノは再び職員に賄賂を渡し、妹を連れ出すよう頼みます。

妹を待つ間、ブルーノはカリフォルニアまでの切符を渡し、妹と暮らせといいます。感謝するエヴァに、ブルーノは最初のエリス島で君に目をつけ強制送還されるように仕組んだのは自分だと告白します。自分は人間の屑だ、感謝されるような人間ではないと言い放します。それでもエヴァはあなたは人間の屑じゃないと泣きながらすがります。

そして職員が妹を連れてやってきます。姉妹はしっかりと抱き合いやがてボートに乗って去って行きます。ブルーノはそれを見届けその場を去っていきます。ボートに乗った二人とブルーノの後ろ姿が画面上2分割され、永遠の別れを暗示させ終わります。

エヴァは敬虔なクリスチャンです。教会で自分の罪、売春や盗み、移民船の中で犯されたことなどを告白します。そして自分の罪は決して許されるものではない、私は地獄に落ちると。 この告白をブルーノは陰でこっそりと盗み聞きします。これが最後のブルーノの告白に繋がるのだと思います。好きで好きでたまらない女に売春をさせるという、倒錯した精神状態のブルーノ。片や憎んでも憎んでも離れられない女。そして最後に自分の罪を告白する男、そしてそれを許す女。ブルーノは自分の犯した罪滅ぼしに姉妹を助けました。この映画の主人公は実はブルーノだったのかもしれません。

原題の『移民』は当時のアメリカに移住した外国人の生活の厳しさを現したものなのでしょう。エヴァ姉妹はただただ幸せになりたいと、希望を持ってニューヨークへやってきます。しかし目の前の現実はあまりにも違っていました。オープニングシーンの自由の女神像がはっきり見えないのはそれを暗示していたのでしょう。

ジェームズ・グレイ監督は自分の祖父母の実体験などを基にして脚本を書いたようです。

主演のマリオン・コティヤールアカデミー賞受賞のフランス女優です。先日紹介した『エディットピアフ 愛の賛歌』の主演女優です。この映画でアカデミー賞主演女優賞を獲得しました。途中まで同じ女優が演じているとは思いませんでした。あのエディット・ピアフエヴァが同じ人物だとはどうしても思えません。この映画でも素顔と踊り子の化粧したときの顔の違いに驚きます。さすが女優です。言葉少ない彼女の演技に魅かれました。

 


映画『エヴァの告白』予告編

 

 それでは今日はこの辺で。

この人の、この1枚 『バーズ(Byrds)/バーズ(Byrds)』

昨日の記事の続きです。

lynyrdburitto.hatenablog.com

1973年に、1971年以来活動休止状態で事実上解散同然だったザ・バーズがオリジナルメンバーでリユニオンされるというニュースが入ってきました。

これには驚きました。1971年当時のメンバーで多少入れ替えがあっても活動を再開するというのならまだしも、オリジナルメンバーが集まるというのは驚きと同時に喜びでした。なにしろこのメンバーでのレコーディングはアルバム『ターン・ターンターン』以来ですから7~8年ぶりです。

この少し前、ロジャー・マッギンのファースト・ソロアルバムにデヴィッド・クロスビーが参加したことからこの話が持ち上がったらしいのですが、なにしろ皆レコード会社が違うということがあって、なかなか難しかったらしいですが、何とかアサイラムレコードから発売するということに漕ぎつけたようです。日本でのタイトルは『オリジナル・バーズ』でした。バンド名からTheが抜けました。何故だかは分かりません。

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メンバーは今更という感じですが次の通りです。

ロジャー・マッギン(Roger McGuinn,vo,g)

ジーン・クラーク(Gene Clark,vo,g,har,tamb)

デヴィッド・クロスビー(David Crosby,vo,g)

クリス・ヒルマン(Chris Hillman,b,g,mamdlin,vo)

マイケル・クラーク(Michael Clarke,ds,per)

 

プロデュースはデヴィッド・クロスビーです。

 

Side A

1. Full Circle - Gene Clark
2. Sweet Mary - Jacques Levy / Roger McGuinn
3. Changing Heart - Gene Clark
4. For Free - Joni Mitchell
5. Born To Rock'N'Roll - Roger McGuinn

Side B
1. Things Will Be Better - Chris Hillman / Dallas Taylor
2. Cowgirl In The Sand - Neil Young
3. Long Live The King - David Crosby
4. Borrowing Time - Chris Hillman / Joe Lala
5. Laughing - David Crosby
6. (See The Sky) About To Rain - Neil Young

 

A-1 ジーン・クラークの曲。彼は後にアルバム『ロード・マスター』に「フル・サークル・ソング」として載せています。バーズ的というかジーン・クラーク節。

A-2 ロジャー・マッギンとジャッケス・レヴィのコンビ作。トラッド・フォーク調の曲。ロジャー・マッギンらしい。

A-3 再びジーン・クラークの曲。初期のバーズのフォークロックを思わせます。

A-4 ジョニ・ミッチェルの作品。デヴィッド・クロスビーのヴォーカル。歌い方は相変わらずのデヴィッド・クロスビーです。

A-5 ロジャー・マッギン作。マッギンは1975年のアルバム『ロジャー・マッギ ン&バンド』で再びこの曲を取り上げています。

B-1 クリス・ヒルマンが「マナサス」で一緒のダラス・テイラーと作った作品。ロ ジャー・マッギンの12弦ギターが入ると、途端にバーズらしくなってしまうのが不思議です。

B-2 ニール・ヤングの名曲。ジーン・クラークのヴォーカル。ニール・ヤングとは 違って、軽やかに淡々と歌っています。

B-3 デヴィッド・クロスビー作。重たい詩でいかにも彼らしい曲。

B-4 クリス・ヒルマンとやはり「マナサス」で一緒だったジョー・ララとの共作。カントリーロックです。

B-5 デヴィッド・クロスビー作。彼のソロアルバムに収録されている曲。CSN&Y的かな。

B-6 再びニール・ヤングの名作。ヴォーカルもやはりジーン・クラーク。ラストを飾るにふさわしい選曲です。

 

マイケル・クラークを除く4人が、ほぼ均等に楽曲を提供し、カバー曲3曲となっています。

こうしてみると同窓会でみんなで盛り上がったという感じですね。このあと次作を作るとかツアーに出るとかという話もあったようですが、結局これ1枚で終わりました。私もこれ以上はないだろうなという感じは持ちました。

この当時はリユニオンブームで、クイックシルバー、カントリー・ジョー&ザ・フィッシュ、ブルース・プロジェクト、CSN&Y、などなど。今思うと、これらの現象はレコード会社側の思惑が働いて、実現したものが多かったのではないでしょうか。あくまでもビジネスですから。

彼らのその後については、今のところ、ロジャー・マッギンとジーン・クラークについては既に書いていますが、クリス・ヒルマンについても近々書こうと思っています。


The Byrds- Cowgirl in the Sand The Byrds


The Byrds - See The Sky About to Rain.

それでは今日はこの辺で。

この人の、この1枚 『ザ・バーズThe Byrds)/タイトルのないアルバム(Untitled)』

ザ・バーズについては『ロデオの恋人』までは書いてきましたが、それ以降のことにはあまり触れてきませんでしたので、少し書いてみたいと思います。

lynyrdburitto.hatenablog.com

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また主要メンバーのロジャー・マッギンとジーン・クラークについても書いていますので参考にしてください。

 

lynyrdburitto.hatenablog.com

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『ロデオの恋人』でカントリーロックを確立したバーズでしたが、グラム・パーソンズとクリス・ヒルマンがフライング・バリット・ブラザース設立のため、脱退します。残ったケヴィン・ケリーも辞め、一人になったロジャー・マッギンは新たに「ナッシュビル・ウェスト」にいたクラレンス・ホワイトとジーン・パーソンズそれとジョン・ヨークをメンバーに加え再出発を図ります。そして『バーズ博士とハイド氏』、続いて『イージー・ライダーのバラード』を発表します。『イージーライダーのバラード』は映画のヒットもあって注目されましたが、かつての勢いはなく、過去のバンドになりつつありました。

ここで、ジョン・ヨークが脱退。替わりにスキップ・バッティンが加入。ここにバーズの歴史上、技術的には最強のメンバーが揃います。それまではスタジオとライブの演奏が違いすぎるとのことで、ライブアルバムは発表されてきませんでした。しかし、ここにきてようやくライブアルバムの計画が実行されることになったのです。

そして発売されたのが『Untitled』です。

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メンバーは次の通りです。

ロジャー・マッギン(Roger McGuinn,g,vo)

クラレンス・ホワイト(Clarence White,g,mandlin,vo)

ジーン・パーソンズ(Gene Parsons,ds,vo)

スキップ・バッティン(Skip Battin,b,vo)

プロデュースはジム・ディクスンテリー・メルチャーです。

 

Side A(Live)

1.Lover of the Bayou

2.Positively 4th Street

3.Nashville West

4.So You Want to Be a Rock 'n' Roll Star

5.Mr. Tambourine Man

6.Mr. Spaceman

 

Side B(Live)

1.Eight Miles High

 

Side C(Studio)

1.Chestnut Mare

2.Truck Stop Girl

3.All the Things

4.Yesterday's Train

5.Hungry Planet

 

Side D(Studio)

1.Just a Season

2.Take a Whiff on Me

3.You All Look Alike

4.Well Come Back Home

 

レコードの1枚目がライブアルバムで2枚目がスタジオアルバムの2枚組になっています。

 

A-1 ロジャー・マッギンとジャッケス・レヴィの名コンビによる新曲です。バーズらしい曲ですが、クラレンス・ホワイトのギターでロック色の強い曲になっています。

A-2 ボブ・ディランの名曲「寂しき4番街」です。いかにもバーズです。

A-3 クラレンス・ホワイトとジーン・パーソンズの共作。バーズには珍しいインスツルメンタル。これも演奏力が上がったせいかでしょう。ナッシュビル・ウェストは二人がいたグループの名前です。

A-4 バーズのヒット曲。「ロックンロールスター」です。アルバム『昨日より若く』より。ここでもクラレンスのギターが目立ちます。

A-5 これはもう言わずと知れた、バーズの出世作ボブ・ディランの「ミスター・タンブリンマン」です。アルバム『ミスター・タンブリンマン』より。

A-6 これもバーズの代表曲、「ミスター・スペイスマン」。アルバム『霧の5次元』より。カントリーロックに生まれ変わりました。

B-1 これも『霧の5次元』より「霧の8マイル」です。なんと片面を費やした長尺になっています。ロジャーの12弦ギターから始まり、クラレンスのギター、スキップ、ジーンとソロパートが続きようやくコーラスが始まります。これも演奏力アップの賜物でしょう。

C-1 ロジャー・マッギンとジャッケス・レヴィの共作。ここでもクラレンスのギターが効いています。

C-2 後のリトルフィートのロウエル・ジョージとビル・ペインの曲。リトル・フィートも翌年、ファーストアルバムに入れています。

C-3 これもロジャー・マッギンとジャッケス・レヴィの共作。やはりロジャー・マッギンの曲はバーズらしいです。

C-4 ジーン・パーソンズとスキップ・バッティンの共作。ジーンのヴォーカルでカントリー色が出ています。

C-5 これはスキップ・バッティンとキム・フォウリー、ロジャー・マッギンの共作。

D-1 ロジャー・マッギンとジャッケス・レヴィの共作。ここでもクラレンス・ホワイトのギターが冴えます。

D-2 この曲はレッドベリーのレパートリーでクラレンス・ホワイトとロジャー・マッギンがアレンジして、ホワイトがヴォーカルです。

D-3 スキップ・バッティンとキム・フォウリーの共作。ヴォーカルはマッギン。

D-4 スキップ・バッティンの曲。ラストの方で「南無妙法蓮華経」が繰り返されます。これはスキップ・バッティンが東洋思想に傾倒しており、ベトナムで戦死した兵士に捧げたものだそうです。

 

このアルバムによって新生バーズの評価は上がりました。しかし翌年の『バードマニア』は不評を買い、起死回生を狙った次の『ファーザー・アロング』でも回復することは出来ず、1971年に活動を休止し、事実上の解散となりました。

  

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ロジャー・マッギンはソロ活動に向かいます。

クラレンス・ホワイトは1973年に交通事故で亡くなります。29歳の若さでした。

ジーン・パーソンズとスキップ・バッティンはフライング・バリット・ブラザースに合流します。

こうしてアメリカのフォークロック、カントリーロックを牽引してきたバーズの歴史は閉じられました。

 

しかしこのあと奇跡が起こります。それについてはまたいずれ書きたいと思います。


The Byrds - Lover Of The Bayou (Audio/Live 1970)


The Byrds - Positively 4th Street (Audio/Live 1970)

 

それでは今日はこの辺で。

 

 

 

映画 『エディット・ピアフ~愛の賛歌~』を観る

今日の自宅シアターは『エディット・ピアフ~愛の賛歌~』です。

監督:オリヴィエ・ダアン

主演:マリオン・コティヤール

制作:2007年 フランス、イギリス、チェコ

 

エディット・ピアフに関してはそれほど詳しい知識を持ち合わせているわけではありませんが、壮絶なる人生だったということぐらいは知識としてありました。何故か我が家にもいつ買ったのかも憶えていないくらい前のレコードが1枚ありました。特別シャンソンに興味があったわけでもないのに不思議ですが、買ったことだけは憶えていて、探した結果出て来ました。懐かしいです。

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映画の方はというと、現在と過去を織り交ぜながら進行してゆきます。

エディット・ピアフ(本名はエディット・ジョヴァンナ・ガション)はパリの貧民街ベルヴィルで生まれ、幼少期を過ごします。母親は路上で歌って日銭を稼ぐ仕事、父親は大道芸人でこの時は軍隊に入隊していました。母親は今で言うネグレクトでほとんど子供はほったらかしです。見かねた父親が自分の母親に預けます。母親は娼館の経営者でピアフは娼婦たちに可愛がられて育ちます。途中で角膜炎により失明の危機に陥りますが、聖テレーズに祈りを捧げて視力が回復したことから、以後ピアフは聖テレーズを信仰するようになります。

やがて父親が除隊すると、再び大道芸を始めるといってピアフを無理やり連れていきます。この時の娼婦たちとの別れがとても辛かったようです。

父親の大道芸はあまり人気がなく、観衆からは娘に芸をさせろとヤジられます。父親は娘に何か芸をしろと催促します。ピアフは歌い始めます。それはなんと「フランス国歌」でした。観衆からは拍手喝采でした。

時は経ち、エディット15,6歳の頃から彼女は義姉妹のモモーヌと組んで路上で歌を歌い生活するようになっていました。母親を憎み、父親に反発し家を飛び出し自暴自棄の生活でした。

そして20歳の頃、名門ナイトクラブのオーナー、ルイ・ルプレーにその才能を見いだされ、クラブで歌うようになります。これが彼女の第1の転機になりました。ここでルプレーは後の芸名となる「小さなスズメ」(La Môme Piaf)というあだ名をつけます。ルプレーはその後殺害されますが、ピアフはその犯人だと疑われてしまします。疑惑は晴れますが、恩人を無くしたショックは大きいものが有りました。

そしてこのクラブで有名な作曲家レイモン・アッソと出会います。彼は厳しいレッスンを彼女に強います。途中で逃げ出したりもしますが、何とかやり遂げ、そして初めてコンサートという舞台に立ったのでした。

こうしてピアフはフランスのみならず世界でも有名なシャンソン歌手へと歩み始めます。

しかしその後の人生も波瀾万丈でした。アメリカ公演でピアフはプロボクサーのマルセル・セルダンと知り合い恋に落ちます。ピアフが16歳の時に恋に落ち産んだ子供もマルセルという名前でした。偶然の一致です。子供は2年後に無くなります。ただ彼は妻子持ちでした。逢いたくてもなかなか逢えない。そして逢いたくてたまらずに今からすぐに来てと電話で訴えます。彼の乗った飛行機が墜落し、彼は死んでしまいます。その気持ちを歌にしたのがあの「愛の賛歌」でした。それからの彼女は酒に溺れ、また数度の自動車事故の影響で痛みを抑えるためのモルヒネの多用で身体はボロボロになって行きます。

公演中にたびたび不調を訴えようになり、周りは止めますが、自分には歌う事しかないと訴えます。そして最後の舞台に上がり歌唱中に倒れます。最後は癌に侵されベッドの中で47歳の短い生涯を閉じます。子供の名前を呼びながら。それは恋人の名前だったのかも知れません。晩年の姿は、とても47歳には見えません。今で言うと80歳の老婆のようです。

途中、晩年のピアフに女性記者が海岸の砂浜でインタビューする場面があり、記者が「若い人にメッセ―ジはありますか」と訊ねられ、ピアフは「愛しなさい」と答えます。印象的なシーンです。

マレーネ・デートリッヒやジャン・コクトーなどとの親交もちらっと出てきて、嬉しくなります。イブ・モンタンなどの名前も出て来ました。

この映画のピアフの人生を見ていて、ふと美空ひばりの人生を思い浮かべました。もちろん境遇は違いますが、幼少からの歌手生活、天才的な歌唱力、生死をさまよう交通事故、客に硫酸をかけられる事件、暴力団との交際、兄弟との早い死別、病魔との闘い、それでも自分には歌う事しかないという信念。共通点がたくさん見出されます。日仏の天才歌姫同士でした。

 

それとなんといっても主演女優のマリオン・コティヤールでしょう。この映画でアカデミー賞主演女優賞を獲りましたが、当然という気がします。

ピアフは140センチそこそこの小さな女性です。マリオンは169センチの大柄な女性ですが、背中を丸めひょこひょこ歩く姿は、ちっとも違和感を感じさせません。それと表情と容姿の変化が見事です。同じ女優が演じているとは思えないほどの変化です。歌はほとんどが口パクらしいですが、まるで本人が歌っているようです。

 

「愛の賛歌」という歌は昔は結婚式の定番だったそうですが、それは岩谷時子の訳詞で越路吹雪が歌ったバージョンです。実際の「愛の賛歌」はもっと激しい内容の歌詞です。

元々の歌詞は次のようです。古いレコードで訳詞者が書いていません。

 

青空だって私達の上に落ちてくるかも知れない

地球だってひっくり返るかも知れない

大した事じゃない、あなたが愛してくれれば

世の中のことなんてどうでもいい

恋が私の毎朝を満たしてくれれば

私の体があなたの手の下でふるえる時には

重大問題なんてどうだっていいの

あなたが愛していてくれるんだから

 

世界の崖までも行きます

髪を金髪に染めてもいいです

あなたがそう言うのなら

お月様をとりにだって行きます

宝物を盗みにだって行きます

あなたがほしいと言うなら

自分の国を見捨ててもいい

友達を見捨ててもいい

あなたがそうしてほしければ

ひとが私のことを笑ったって平気

何だってしてのけます

あなたにそう言われれば

 

もしもいつか、人生があなたを奪っても

あなたが死んでも 私から遠くへ去っても

あなたが愛してくれれば平気

だって私も死ぬのだから

私たちは永遠の中に生き

広々とした青い空の中で

問題などない空の中で

恋人よ、愛し合っているのだから

神様が愛し合う二人をまた結びつけて下さるでしょう

 

エディット・ピアフの激しい気性が現れているようです。

いままであまり知らなかった彼女に人生の一端を見れて納得しました。

 


映画「エディット・ピアフ 愛の讃歌」日本版劇場予告

 

本物のピアフです。


愛の讃歌 エディット・ピアフ

 

それでは今日はこの辺で。