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映画『ヒトラーを欺いた黄色い星』を観る

今日のキネ旬シアターはヒトラーを欺いた黄色い星でした。

ポスター画像

 

監督:クラウス・レーフレ

主演:マックス・マウフ、アリス・ドワイヤー

制作:2017年 ドイツ 2018年 日本公開

 

ナチス政権下のベルリンで終戦まで生き延びた約1500人のユダヤ人の生活を実際の証言を交えながら映画化したものです。

ちなみに「黄色い星」とはユダヤ人であることを表すために洋服に縫い付ける黄色いワッペンのようなものです。

 

第2次世界大戦の1941年から1945年までの間に虐殺されたユダヤ人は600万人を超えるといわれています。ドイツの宣伝相ゲッペルスは1943年6月19日に首都ベルリンからユダヤ人を一掃したと宣言しました。

ところが実際は約7000人のユダヤ人が潜伏し、約1500人が終戦まで生き延びたのでした。それでもたった1500人です。

映画では4人の男女の若者にスポットを当て、彼らがどのようにして生き延びたのかを、本人の証言を交えながらドラマは進行します。ドキュメンタリー・ドラマです。

 

一人目の青年、ツィオマ・シェーンハウスはどうしてもドイツに残りたくて、身分証を偽造して連行される両親とは別れてドイツに残ります。その偽装の技術を高く評価され、ユダヤ人救出に尽力する人物に偽造身分証の作成を依頼され、彼に匿われます。

 

ルート・アーントは両親とは別れて、協力的なドイツ人に匿われますが、やがてそこも危なくなり、友人と共に別のドイツ人の家に家政婦として匿われます。そこの主人はドイツ軍の将校ですが、ユダヤ人と分かっていながら匿ってくれました。

 

オイゲン・フリーデは若干16歳ですが、父親の知り合いの反ナチスの活動家に匿われ、ヒトラー青少年団の制服を着て身分を隠します。そしてその活動家が行うナチスを弾劾するビラの作成などの協力をします。

 

17歳の少女ハンニ・レヴィは髪を金髪に染め、変装してドイツ人に成りすましますが、行く先もなく、映画館で暇を潰します。その映画館で知り合った男性に、自分は戦争に行くので母親の話し相手になってほしいと頼まれます。母親は映画館の受付の仕事をしていました。母親は快く彼女を匿ってくれました。

 

こうして彼らは終戦を迎え、無事に生き延びられたわけですが、途中には様々な危険に遭遇し、ヒヤヒヤさせられます。が、本人が証言しているということは助かっているということなので安心して観ていられました。

4人の潜伏生活と4人の証言が次々に場面転換していくので初めはちょっとついていくのに苦労します。

 

彼らはドイツ国民でありながらドイツ人ではありませんでした。なぜ、ここまでユダヤ人を虐待しなければならなかったのか。そこにはヒトラーの唱える選民思想(ナチズム)、特にアーリア民族の最善説による影響がありますが、それ以前に人間には自分より劣ると思われるものに対し差別するという本能のようなものがあるような気がします。

世の権力者たちはそれをよく知っていて、その本能を利用するのです。人種差別、民族差別、性差別、部落差別、障害者差別等々、事の大小は別にしてもありとあらゆる場面で差別が出て来ます。学校での「いじめ」もある種の差別です。自分より下だと思われる人間は徹底的に叩く。そして精神の平衡を保つ、というような一面が人間にはあるのでしょう。

 

組織論の中にも「1:8:1」の原則というものが有ります。本当に優秀な人間はその組織の中で1割いれば十分です。8割は普通の人間。残りの1割が劣等生。この劣等生がいないと組織は成り立たないのです。優等生ばかりでは競争に疲れて疲弊してしまいます。劣等生がいることで他の者たちに優越感・安心感が生まれ、組織の均衡が図られるのです。これが組織の理想の形です。

逆に優秀な人材が10割なんていうことはあり得ません。必ず差別化が始まります。そして序列が出来ていくのです。それが人間社会なのだと思います。

 

この映画でもドイツ人全員が戦争やホロコーストに賛成かというと、そうではありません。この4人が助かったのも、反ナチスの人たちが存在していたからです。

戦時中の日本にしたって、挙国一致といいながら反政府、戦争反対の人たちは多く存在していたわけで、ただその声が大きくならなかったという点ではドイツと共通した点でしょう。

 

今の日本にも凄い危うさを感じてしまうのです。自民党の女性議員がLGBTを「生産性がない、税金の無駄だ」と言い放ったのは言語道断ですが、自民党の幹事長までもがそれを容認するような発言、さらに別な議員は「レズ、ゲイは趣味の世界」とさらに暴言。国民の代表がこのような差別的発言をするという今の日本はこれから先どうなるのでしょうか。国民の6割以上が反対する法案を次々に強行採決していく国会。そのような党、議員を選んでいるのも我々国民なのですが。

8月6日、広島原爆の日。松井市長の演説を安倍晋三はどのように聞いたのでしょう。

 

 


7月28日公開『ヒトラーを欺いた黄色い星』予告編

 

 

それでは今日はこの辺で。