Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

映画『日日是好日』を観る

新春第1発目のキネ旬シアターは日日是好日でした。

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監督:大森 立嗣

原作:森下 典子

主演:黒木 華、樹木 希林、多部未華子

制作:日本 2018年公開

 

昨年亡くなられた樹木希林さんの人気なのか、キネ旬シアターにも珍しく行列が出来ていました。大半は高齢者のようでした。

 

樹木希林さんの映画は昨年だけでも10本は観たのではないでしょうか。別に亡くなったから観たというのではなく、たまたま是枝監督作品とかを観る機会が多かったという偶然が重なりました。

今年『エリカ38』という作品が上映される予定だそうで、それが遺作になります。『日日是好日』はその前の作品ということになります。

 

映画の内容は原作者・森下典子さんのエッセイの映画化ということで、特別なストーリーはありません。原作者の茶道を習い始めから今日までの日常のエピソードのようなものをつなぎ合わせた内容になっています。

 

典子(黒木華)が10歳の頃、家族に連れられて観に行ったフェリーニ監督の映画『道』が全然理解できなくてつまらなかったという本人のナレーションから映画が始まります。

 

典子は20歳になった大学生。真面目で理屈っぽいがおっちょこちょいな自分をいつも卑下しています。逆に従姉妹の美智子(多部未華子)は明るくてきぱきとしていて、決断力があり典子は羨ましがっています。そろそろ就職の話も出て来ますが、自分のやりたいことが見つかりません。

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そんな時、母親に近所の竹田さん(樹木希林)という茶道の先生の話をされ、習ってみたらと言われます。美智子はすぐにやってみたいと、賛成します。典子もしようがなく習うことにしました。

 

稽古の初日、緊張した二人は早速先生に様々な作法を教わります。掛け軸には『日日是好日』の文字が。意味もよくわかりません。茶道にはあまりに多くの決まり事があることに、たまらず形式主義だと言うと、先生は「頭で考えるのではなく、体で覚えなさい。お茶はまず形から、そこでできた入れ物に心を後から入れるもの」と教えます。

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以後、毎週の稽古が始まります。24節気ごとに茶道の作法も変わります。典子はやっと覚えた作法も、季節替わりで作法も変わり、なかなか上達しません。

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そして就職時期。美智子は貿易会社に就職が決まります。典子は出版社の試験に落ち、就職は諦め、出版社のアルバイトをすることになりました。このころ再び『道』を観て、世の中にこんなに感動する映画があったなんて、と美智子に話します。美智子は「茶道もそういうものなのかもしれないね」と応えます。

 

美智子は就職で茶道を辞め、典子は一人で通うことになりました。それから年月も経ち、後輩も出来てきました。この頃に、典子は水の音、お湯の音の違いにも気付くようになりました。季節ごとに変わる掛け軸に感動したりして典子の心情もゆっくりと変化してゆくようです。しかし、才能の有る高校生の後輩をみると自分の才能の無さを痛感させられ、先生からもそろそろ自分で工夫しなさい、などと注意もされるようになりました。

 

時はどんどん流れていきます。美智子は故郷に帰り結婚し、子供も生まれ幸せそうです。典子は中途採用の出版社の試験にも落ちてしまいます。結婚を2か月後に控えていた彼氏の裏切りにも遭い、結婚を断念します。それでも新しい恋愛の始まりや、一人暮らしを始めるなど、生活環境を変化していきます。そうした中でも茶道だけは続けます。

 

ある日、父親から「食事しないか」電話がありますが、用事があったので断ります。夜になって何かを感じ実家に電話します。父親は寝てしまっていました。翌日母親から電話で「お父さんが倒れた」との知らせが入ります。病院に駆け付けますが、間もなく亡くなってしまいます。父親に会わなかったことを後悔し悲しみに暮れる典子を「自分を責めないで」と励ましてくれたのは竹田先生でした。

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その後も典子は茶道を続けます。それまで気付かなかった季節の違いによる、雨の音の違いや、これまで関心もなかった花の美しさなど、周りの自然の移り変わりを肌で感じられるようになってきました。「雨の日には雨を聴く、雪の日は雪を見る、夏には暑さを、冬には厳しい寒さを味わう。その日その日を思う存分味わう。」そして『日日是好日』の意味も何となくわかるようになってきたのでした。典子は40代になりました。

 

映画の中で「世の中には、『すぐわかるもの』と、『すぐわからないもの』の
二種類がある。すぐわかるものは通り過ぎて行く。すぐにわからないものは、長い時間をかけて、少しずつ気づいて、わかってくる。」というセリフがでてきます。これは深いですね。

 

典子が映画『道』を長い時間をかけて理解できたように、茶道を続けることによって茶道そのものはもとより、その他、日常や自然のわずかな変化にも気付けるようになってきたのでしょう。

 

私などは茶道には全く縁がなく、この作法の細かさにあきれるばかりでしたが、茶道に興味がない人でも十分に楽しめる奥の深い映画だと思います。正月にふさわしい映画でした。

それにしても樹木希林さんの演技は素晴らしいの一言でした。

 

私は勉強不足で知りませんでしたが、この原作となったエッセイはベストセラーになっていたそうです。無知でお恥ずかしい限りです。

日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)

日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)

 

 


黒木華&樹木希林共演『日日是好日』予告編

 

それでは今日はこの辺で。