ブルー・アイド・ソウル(Blue-Eyed Soul)というとラスカルズと言われるくらい、そのカテゴリーの代表選手になったラスカルズ(The Rascals)です。
ラスカルズは1964年にヤング・ラスカルズ(Young Rascals)としてニュージャージーで結成されました。
メンバーは
フェリックス・キャヴァリエ(Felix Cavaliere,vo,key)
エディ・ブリガッティ(Eddie Burigati,vo)
ディノ・ダネリ(Dino Danelli,ds)
でした。
彼らはロングアイランドのクラブでオリジナルナンバーを演奏していました。やがてビートルズのアメリカ公演で名をあげたプロモーター、シド・バーンスタインに認められアトランティック・レコードと契約します。そして1965年にシングル「I Ain't Gonna Eat Out My Heart Anymore」でデビューします。
1966年にはファーストアルバム『Young Rascals』をリリースします。
このアルバムから先述のシングルと「Good Lovin'」がヒットします。10曲中7曲がカバーでした。ボブ・ディランの「Like A Rolling Stone」までカバーしています。アルバムチャート15位を記録します。
1966年には『Collections』をリリース。
1967年にはサードアルバム『Groovin'』をリリースします。
ヤング・ラスカルズとしては最後のアルバムです。そして最大のヒットアルバムになりました。大半をオリジナル曲で占めました。アルバムチャート5位まで上がりました。シングル「グルーヴィン」は全米1位に輝きました。チャック・レイニー(Chuck Rainey,b)、ヒューバート・ロウズ(Hubert Raws,flute)なども参加しています。
1968年に4枚目のアルバム『Once Upon A Dream』をリリースします。
ラスカルズとしてのスタートとなるアルバムでした。流行りのサイケデリックを取り入れた意欲的な作品でしたが、商業的には前作には及びませんでした。全米9位で、ヒットシングルも1曲のみでした。チャック・レイニー(Chuck Rainey,b)やキング・カーティス(King Kurtis,sax)、ロン・カーター(Ron Carter,b)、ヒューバート・ロウズ(Hubert Raws,flute)なども参加しています。この辺からジャズ色が強く表れるようになりました。
そして1968年にこれまでの4枚のアルバムからのコンピレーションアルバム『Time Peace: The Rascals' Greatest Hits』 がリリースされました。
Side A
1.I Ain't Gonna Eat Out My Heart Anymore
2.Good Lovin'
3.You Better Run
4.Come On Up
5.Mustang Sally
6.Love is a Beautiful Thing
7.In the Midnight Hour
Side B
1.(I've Been) Lonely Too Long
2.Groovin'
3.A Girl Like You
4.How Can I Be Sure
5.It's Wonderful
6.Easy Rollin
7.A Beautiful Morning
A-1,2,5,7がファーストアルバム『Young Rascals』から。
A-4,6,B-1がセカンドアルバム『Collections』から。
A-3,B-2,3,4がサードアルバム『Groovin'』から。
B-5,6が4枚目『Once Upon A Dream』から。
B-7がシングルのみのリリース曲。
バランスよい選曲です。このアルバムは全米1位を獲得しました。
ラスカルズの変遷が1枚でよくわかります。ブルー・アイド・ソウルばかりが取り沙汰されますがそればかりではないことがよくわかります。
その後1969年に5枚目のアルバム『Freedom Suite』がリリースされます。
これは2枚組のトータルアルバムとなっています。アルバムチャートは17位でした。このアルバムにはチャック・レイニー(Chuck Rainey,b)やキング・カーティス(King Kurtis,sax)なども参加しています。
続いての『See』もアルバムチャートは45位止まりでした。
チャック・レイニー(Chuck Rainey,b)やキング・カーティス(King Kurtis,sax) 、ロン・カーター(Ron Carter,b)などお馴染みのメンバーが顔を揃えています。
しかし、ラスカルズの人気も落ち始めていました。アトランティック・レコードは契約を打ち切り、コロムビアに移籍することになりました。
移籍後もアトランティックから『Search and Nearness』が発売されました。
しかし、移籍してしまったアーティストのアルバムのプロモーションに力が入るはずもなく、売り上げはさっぱりでした。エディ・ブリガッティはこのアルバムの録音後にバンドを去っていますが、アルバムのクレジットには既に名前が載っていませんでした。
さらにアルバム発表後にジーン・コーニッシュがバンドを去ります。
二人になったラスカルズはギターに元ポール・バターフィールド・ブルース・バンドのバジー・フェイトン(Buzzy Feiten,g)を迎え、さらにロバート・ポップウエル(Robert Popwell,b)、バック・ヴォーカルとしてアニー・サットン(Annie Sutton)、モリー・ホルト(Molly Holt)を加え再出発を図りました。
そして1971年に8枚目のアルバムとして2枚組の『Peaceful World』をリリースします。
いつものセッションメンバーなども参加して、意欲的なアルバムになりましたが、既にかつての人気は期待できませんでした。アルバムもトップ100入りを逃し、翌年に解散しました。
なおこのアルバムを除くアトランティック時代のコンピレーションがCD時代になって2枚組で発売されました。これは素晴らしいアンソロジーです。
フェリックス・キャヴァリエはその後ソロに転向し、1970年代に2枚のアルバムを発表しました。
1960年代後半、ソウルミュージックやR&Bに憧れた若者たちが、続々と登場してロック界を賑わしました。イギリスではヴァン・モリソンの『ゼム(Them)』やエリック・バードンの『アニマルズ(The Animals』、スペンサー・デイヴィス・グループ(Spencer Davis Group,Steve Winwood)など、アメリカではフォー・シーズンズ(The Four Seasons)やウォーカー・ブラザーズ (The Walker Brothers)やライチャス・ブラザース(The Righteous Brothers)などたくさんのソウルフルなグループが出て来ました。
なかでも不思議なことに、このラスカルズは特別なほどにブルー・アイド・ソウルの冠を付けられていました。それだけ絶大な人気を誇っていたのでしょう。私のようにちょっと遅れてきたものにとっては当時の騒ぎは分かりませんでしたが。
それでは今日はこの辺で 。