今日の「聴き比べ」は『死んだ女の子』です。
この曲はトルコの詩人、ナジム・ヒクメット(Nâzım Hikmet)が1956年に発表した詩です。広島への原子爆弾投下によって死んだ7歳の少女を詠んだ詩です。この詩は各国で翻訳されました。そして各国で曲を付け歌われるようになりました。
日本では高石友也先生が早速デビューアルバムで取り上げました。『想い出の赤いヤッケ 高石友也フォーク・アルバム』です。作曲は外山雄三です。 なんとも切なく、悲しくなる歌です。
死んだ女の子
作詞:Nâzım Hikmet
訳詞:中本信幸
作曲:外山雄三
あけてちょうだい たたくのはあたし
あっちの戸 こっちの戸 あたしはたたくの
こわがらないで 見えないあたしを
だれにも見えない死んだ女の子を
あたしは死んだの あのヒロシマで
あのヒロシマで 夏の朝に
あのときも七つ いまでも七つ
死んだ子はけっして大きくならないの
炎がのんだの あたしの髪の毛を
あたしの両手を あたしのひとみを
あたしのからだはひとつかみの灰
冷たい風にさらわれていった灰
あなたにお願い だけどあたしは
パンもお米もなにもいらないの
あまいあめ玉もしゃぶれないの
紙きれみたいにもえたあたしは
戸をたたくのはあたしあたし
平和な世界に どうかしてちょうだい
炎が子どもを焼かないように
あまいあめ玉がしゃぶれるように
炎が子どもを焼かないように
あまいあめ玉がしゃぶれるように
2006年になるとなんと元ちとせがこの曲をカバーしました。アルバム『ハナダイロ』です。プロデュースは坂本龍一でした。
なお、彼女は2015年にカバーアルバム『平成元年』にもこの曲を収録しました。さらにこのアルバムには以前書いたように『死んだ男の残したものは』や『腰まで泥まみれ』『戦争は知らない』なども収録されています。彼女の平和への願いが歌に込められています。
アメリカではなんと、あのザ・バーズ(The Byrds)がカバーしています。1966年の3枚目のアルバム『霧の5次元(Fifth Dimension)』に収録されました。曲のタイトルは「死んだ少女(I Come And Stand at Every Door)」です。
曲は全く別物です。アメリカ人がこの詩を歌うとはいい時代だったのかも。
私も初めはこの曲と高石先生の曲とが同一の詩から生まれているとは気づきませんでした。
I Come And Stand at Every Door
by James H. Waters & Nazim Hikmet
I come and stand at every door
But no one hears my silent prayer
I knock and yet remain unseen
For I am dead, for I am dead
I'm only seven although I died
In Hiroshima long ago
I'm seven now as I was then
When children die they do not grow
My hair was scorched by a swirling flame
My eyes grew dim, my eyes grew blind
Death came and turned my bones to dust
And that was scattered by the wind
I need no fruit, I need no rice
I need no sweets nor even bread
I ask for nothing for myself
For I am dead, for I am dead
All that I ask is that for peace
You fight today, you fight today
So that the children of this world
May live and grow and laugh and play
The Byrds - I Come And Stand At Every Door (Audio)
それでは今日はこの辺で。