Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

映画『私は、マリア・カラス』を観る

今日のキネ旬シアターは『私は、マリア・カラスでした。

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監督:トム・ボルフ

主演:マリア・カラスアリストテレス・オナシス、ファニー・アルダン

制作:2017年 フランス

 

この映画は「20世紀最高のソプラノ歌手」と言われたマリア・カラスの知られざる素顔に迫るドキュメンタリーです。マリア・カラスギリシャアメリカ人でニューヨーク生まれです。その後アメリカ国籍を捨ててギリシャ国籍を得ます。

 

マリア・カラスが書き残した未完の自叙伝と手紙を映画『永遠のマリア・カラス』で主演したファニー・アルダンが朗読します。

 

マリア・カラスと言ってもオペラには何の興味もなかった私などには遠い存在ですが、ただ一つ高校生の頃に観たピエル・パオロ・パゾリーニ監督の映画『王女メディア』での印象が強く残っています。

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ギリシャ悲劇を映画化したものです。この映画では歌ってはいませんが、その存在感には圧倒されました。彫りの深い顔と鋭い眼が印象的でした。内容はほとんど憶えていません。難解な映画で有名なパゾリーニ映画が『アポロンの地獄』『テオレマ』『豚小屋』と続けて上映されていた頃です。夢中になって観ていました。

 

というわけで、この映画でマリア・カラスの壮絶な人生を垣間見ることが出来ました。

未公開の映像などが目白押しです。その歌声にはただただ圧倒されるばかりです。

「私は、マリア・カラス 画像」の画像検索結果

 

彼女の人生は自分の希望とは別に歩き出しました。教育熱心な母親の元、自由は得られませんでした。ピアノの後は声楽を習い音楽の道へ。その才能は天才的でした。彼女の人生は天才がゆえに生ずる軋轢との戦いだったのかもしれません。幸せな家族を作りたいという願いも母親と夫がそれを許しませんでした。夫は彼女がオペラ界のスターでいることに執着しました。彼には金と名声が必要だったのです。

 

ある年の冬の公演の際、彼女は気管支炎を発症してしまいます。そしてその公演の第1幕が終了した時点で中止します。この件でマリアは世界中からバッシングされます。ニューヨークのメトロポリタン劇場の支配人からは契約解除を言い渡されます。マリアも黙ってはいません。「そんな劇場はこちらから願い下げだと」。

 

そして恋愛。彼女は夫との離婚を決意します(イタリアで離婚が認められるのは1970年以降)。そしてギリシャの大富豪アリストテレス・オナシスと知り合い大恋愛に発展します。彼にも妻子はいました。しかし二人は惹かれ合い関係は長年続き、幸せな時間を過ごしました。

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しかし、マリアの体力は衰え、体調もすぐれず次第に舞台から遠ざかり、事実上の引退状態になっていました。そして、オナシスがケネディの元夫人ジャクリーンと結婚してたという事実を報道で知り、ショックを受けます。そして激しい憎悪。

 

マリアはもう一度オペラ歌手として出直す決心をして練習を始めます。人気の高さは相変わらず、メトロポリタン劇場との関係も修復し7年ぶりの公演を開催し、大喝采で迎えられました。

 

そして映画女優としてのデビューも果たします。先に書いたパゾリーニ監督の『王女メディア』への出演です。その撮影風景も映し出されました。そしてワルドツアーを開催します。1974年には来日も果たしました。

 

そして最愛のオナシスが帰ってきました。初めは許すつもりもありませんでしたが、「あの結婚は失敗だった」と聞いて、許すことが出来ました。そして二人の生活が始まります。しかし、間もなく彼は亡くなります。

 

 

 

1975年にオナシスを看取ると、彼女自身も1977年にパリで心臓発作のため亡くなりました。53歳でした。最後までオペラの舞台に立つことを目指して練習を重ねていました。

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『王女メディア』を観た後は、マリア・カラスのことなどすっかり忘れていましたが、今回、たまたまこの映画を観て、昔のことを懐かしく思い出しました。確か来日してテレビにも出演していたと思います。

 

マリア・カラスは自分のことを陽気で明るい人間だと称しています。しかし、マリア・カラスというオペラ歌手は悲劇を歌う歌手です。自分には別々の人格が存在すると言っています。ある時は内気で何も言えないようなときもあり、またある時は激しく言い返す時もある。そんな彼女の素顔が過去の映像とインタビューで再現されます。

 

印象的だったのは彼女のような天才的芸術家でも「女の幸せは好きな男を幸せにすることよ」というセリフ。まだまだそんな時代だったのですね。

 

とにかく、人間の声とは思えぬ歌唱の見事さに感心するばかりでした。クラシックには疎い私でも、ほとんど知っている曲でしたので十分楽しめました。

 

多くの有名人が登場するのも見物です。映画関係でいうとヴィットリオ・デ・シーカルキノ・ヴィスコンティピエル・パオロ・パゾリーニブリジット・バルドーグレース・ケリーエリザベス・テイラーカトリーヌ・ドヌーヴオマー・シャリフ

ということですが、よくよく目を凝らしていないとわからないでしょう。私も字幕に気を取られほとんどわかりませんでした。残念。

 


映画『私は、マリア・カラス』予告編

 

 

それでは今日はこの辺で。