富田良子という人をご存じの方はあまり多くは無いと思います。おそらくアルバムもこの1枚だけだと思います。なのにどうして持っているのか。答えは簡単です。彼女が「シェルブールの雨傘」の主題歌を取り上げているからです。
一時期、ひどく「シェルブールの雨傘」の主題歌に凝った時期がありまして、相当な数のアーティストの演奏を集めました。ジャズやジャズヴォーカルから始まって、映画音楽はもとより、ラテン、日本人歌手まで「Les Parapluies de Cherbourg」や「I Will Wait For You」のタイトルを見つけると買っていました。もうそれだけでも何十枚となってしまいました。このアルバムもその中の1枚という訳です。どうでもいいものはかなり処分しました。
自分でも何故そんなにこの曲が気に入っているのかは分かりませんが、初めて聴いたのは高校生の頃だったと思います。その当時はサントラ晩だったと思いますが、しばらく後になってからレコード屋で、ある女性のジャズシンガーが歌っているのを聴いて、すっかり魅了されてしまいました。結局誰が歌っているのかはわからず仕舞いだったのですが、それから何とかそれを探したいと思い、タイトルを見つけるたびに買っているという始末です。今日現在そのレコードには出会っていません。
というわけで、今日はこの人を取り上げました。単純に女性ヴォーカルだと思って聴いていたのですが、ジャジーな演奏とクールなヴォーカルはなかな聴かせます。2000年の発表です。ヘレン・メリルのヴォーカルを聴いてジャズを志したといいます。血筋にはアイヌの血が流れているということです。
『リョウコ トミタ/スーン』
01.Soon
02.Blama it on my youth
03.But not for me
04.Cry me a river
05.I onry have eyes for you
06.When I fall in love
07.I'm begining to see the light
08.How high the Moon
09.My one & Only love
10.There will never be another you
11.I'll wait for you
12.What are you doing the rest of your life ?
冨田良子(Vo)
佐脇武則(As)
清水絵理子(P)
水橋孝(B)
木村由紀夫(Ds)
プロデュースは佐藤マサノリです。
アルトサックスの佐脇武則は彼女の師匠にあたります。彼は世良譲や笠井紀美子たちとプレイしていたプレイヤーで1990年には、ドラムのジミー・スミスのカルテットにも参加しています。1993年にはあのルー・タバキンとも共演しました。
清水絵里子もジャズ界では名の知れたピアニストです。
レコーディングのきっかけは佐脇正則がジミー・スミスとの競演に彼女を誘ってくれたことでした。そこで成功し、アルバム制作という欲求が出ていたようです。佐脇氏に相談すると、快く賛成してくれて早速レコーディングに取り掛かりました。
レコーディングに関して何かと面倒を見てくれたのが佐藤マサノリでした。レコーディングは無事終わったものの、そこからの資金が問題でした。プレスの段階で資金が底をついてしまいました。そこでこのレコーディングを聴いた佐藤マサノリが自身の会社CAB RECORDSとタイアップしてリリースしてもよいということになり、プロデュースを佐藤マサノリが行い、すべてミックスし直し、曲順も入れ替えて、ジャケット写真も撮り完成したのでした。
01はジョージ・ガーシュインの曲。サラ・ヴォーンも歌っています。彼女は特別気負いもなく軽やかに歌っています。清水絵里子のピアノがいい。
02はクリス・コナーがアルバム『This Is Chris』の中で歌っていた曲です。白人ヴォーカリストのようにクールな歌い方がいいです。ヘレン・メリルやチェット・ベイカー、ジューン・クリスティ、そしてこのクリス・コナーなどを好きな歌手に挙げているのがよくわかります。
03はチェット・ベイカーの『チェット・ベイカー・シングス』で取り上げた曲です。
04はジュリー・ロンドンが歌ったヒット曲。本人はダイナ・ワシントンのアルバムで気に入ったようです。とてもアンニュイに歌っています。白人ヴォーカリストに憧れているのがよくわかります。
05はミュージカル映画『泥酔夢』の主題歌らしいです。ディック・パウエルが歌って大ヒット。
06は映画『零号作戦』の主題歌。
07はエラ・フィッツジェラルドでヒットしたナンバー。
08はこれまた白人女性ヴォ―カリスト、ジューン・クリスティのナンバーです。クールです。
09はドリス・デイのバラードです。
09はまたしてもチェット・ベイカーで有名な曲です。映画『アイスランド』の挿入歌です。
10.そしてようやく「I Will wait for you」です。正直ちょっと物足りない。というか、すべてはあの幻のヴォーカリストとの比較になってしまうのでちょっと違うのです。もう少し強さが欲しいところです。クールなのはいいのですが、演奏に負けているような気がします。
11はこれもミシェル・ルグランの曲。映画『ハッピー・ウエディング』の主題歌らしいです。映画は日本未公開です。
ということで、期待した「I Willl Wait For You」は聴けませんでしたが、全体としては新人ということを考え合わせても十分ではないでしょうか。
但し、その後の彼女については全く不明です。アルバムは発売されていないようです。どうしたのでしょうか。ライブ活動をしているとは思うのですが・・・。
また、機会があったらその他の人の「シェルブールの雨傘」を紹介したいと思います。
それでは今日はこの辺で。