Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

映画 『グッバイ、レーニン!』を観る

先日の自宅シネマは『グッバイ、レーニン!』でした。

監督:ヴォルフガング・ベッカー

主演:ダニエル・ブリュールカトリーン・ザースチュルパン・ハマートヴァ

ドイツ製作、2004年公開(日本)

 

東西ドイツ統一前後の庶民の姿を東ドイツ側から描いた作品です。

東ドイツの首都東ベルリンに住むアレックスは小さい頃、ドイツ初の宇宙飛行士イェーンにあこがれ、自分も将来宇宙飛行士を夢見ていたが、結局はテレビの修理屋に勤めることになり、母親クリスティアーネと姉と共に暮らしています。父は10年前に家族を捨て西ドイツに亡命。そのショックで母は一時はうつ状態になりましたが、その後完璧な社会主義者になり、社会活動に取り組み、国から表彰されるほどの活動家になっています。

アレックスも自分の考えを持つようになり、東ドイツの建国40周年記念日の1989年10月7日に母親クリスティアーネに内緒で反体制デモに参加します。やがてデモは激化し警官隊と揉み合いになりアレックスは警察に逮捕されます。そこをたまたま通りかかった母クリスティアーネが目撃してしまいます。クリスティアーネはショックで心臓麻痺を起こし、救急車で病院に運ばれます。命は取りとめたものの昏睡状態に陥ってしまいました。

それから8か月間、クリスティアーネは眠り続けます。その間、ドイツではベルリンの壁は崩壊し、東ドイツ社会主義体制は資本主義へと、そして東西ドイツも間近に迫っていました。アレックスは病院に通ううちに看護師のララと親しくなりました。

ある日、病室でアレックスとララがいる時に突然クリスティアーネが意識を取り戻しました。ただし、医師からは次に大きなショックを与えると命の保証はないと宣告されます。

アレックスはクリスティアーネに社会主義体制が崩壊していることが分かれば大変なショックになる、病院に置いておけばいずれ分かってしまう、ということから自宅に引き取りことを決意します。そして結婚した姉夫婦やララに無理やり協力させます。

部屋を10年前の様子に戻し、何事も起きていないという嘘をつき続けることにします。クリスティアーネが好物のピクルスが食べたいといえば、既に東ドイツ産のピクルスなどないにもかかわらず、昔の瓶のシールだけを探し当て、それを張り替えて誤魔化したり、テレビが観たいといえば、昔のニュースをダビングしたり、映画監督志望の会社の友人に頼んで嘘のニュースビデオを作ったりと、徹底した偽装工作を行います。

ある日、部屋のカーテンを開けると隣のビルに西側の象徴「コカ・コーラ」の垂れ幕が掲げられていました。不審に思ったクリスティアーネはアレックスに尋ねます。アレックスは何とか誤魔化し、友人に頼んで西側が不況で経済協力を依頼してきたという嘘のニュースをでっち上げ、その場を凌ぎます。

また、ある日には、アレックスがベッドの脇で居眠りしている間に、クリスティアーネが部屋の外に出てしまいます。街中を歩いたクリスティアーネは驚き途方にくれます。それでもアレックスは西ドイツから難民が押し寄せているのだなどと誤魔化します。

クリスティアーネが昔家族で行った山荘に行ってみたいと言い出し、家族そろって行くことにしました。そこで、クリスティアーネは告白します。父親は家族を捨てたのではなく、一人ずつ亡命しようということになって、まず父親が亡命し、後からクリスティアーネが子供二人を連れて亡命すること名なっていた。しかし、いざとなると、子供を連れての亡命がどれほど危険かということに思い至り、怖くなって止めてしまった、というのです。そして、死ぬまでに主人に会いたいと訴えます。姉が父親からの手紙を探し出し、アレックスに父親の居場所を教えます。クリスティアーネの病状は日に日に悪化して再入院になります。アレックスは父親に会いに行く決心をします。

タクシーに乗って父親のいる町まで行きますが、そのタクシーの運転手がなんとあの宇宙飛行士イェーンだったのです。今ではただの人になっていたのです。

家に着くとパーティーが行われていました。父親には家族がありました。子供も2人いました。自分の兄弟になるわけです。父親にクリスティアーネの病状を話し、会ってやって欲しいと頼みます。父親は病院に見舞います。そして長い時間話します。看護師のララは嘘はいつかバレると思い、東西ドイツは統一すると告げます。

アレックスはクリスティアーネの寿命が迫っていることを悟り、友人に依頼して、東西ドイツの統一のニュースを作成します。そのニュースでは東ドイツの書記長を退いたホーネッカーの代わりに宇宙飛行士だったイェーンがが新しいドイツの指導者になると宣言します。このニュースを見てクリスティアーネは息を引き取ります。そして小型ロケットに乗せ空に散灰します。

この映画のタイトルにもなっているレーニン像がヘリコプターに吊るされ、空の中に浮かび上がるシーンは見事でした。すべてを象徴しているようでした。

東西ドイツの統一は、ややもすると西側からの報道が多くなり、東ドイツの一般の人たちの考えや生活ぶりはあまり話題になっておらず、逆に厄介者を背負い込んだというような報道がなされたりもしていました。事実、ドイツは統一後、長い不況を経験することになるのですが。それでもこの映画では、東ドイツの一般の人たちの生活ぶりが淡々としていることを映しています。

一見、重そうな題材ですが、コミカルな描写も交え、爽やかに描き切っています。

アレックスのどこまでも母を思う気持ちが、ひしひしと伝わってきました。

 

この映画はベルリン国際映画祭の最優秀ヨーロッパ映画賞を獲得しました。ドイツでは大ヒット作で歴代興行記録を更新したそうです。

 

それでは今日はこの辺で。