Flying Skynyrdのブログ

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映画 『コリーニ事件』を観る

昨日のキネ旬シアターは『コリーニ事件』でした。

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監督:マルコ・クロイツパイントナー

原作:フェルディナント・フォン・シーラッハ

主演:エリアス・ムバレク 、フランコ・ネロ

製作:2019年 ドイツ 2020年 日本公開

 

ドイツの著名な弁護士フェルディナント・フォン・シーラッハの世界的ベストセラー小説の映画化です。日本でも翻訳されていますが、読んでいません。

50年前のドイツの法制史にいったい何があったのか?

 

物語は2001年のベルリン。イタリア人のコリーニがホテルのスイートルームで著名な実業家ハンス・マイヤーを殺害する場面から始まります。

そのコリーニの国選弁護人に選ばれたのが新米弁護士のトルコ人、カスパー・ライネンでした。

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早速コリーニに面会しますが、彼は頑なに沈黙します。動機について一切口を開きません。一方、被害者の素性を知って驚きます。殺害されたハンス・マイヤーはマイヤー機械工業のオーナーで、彼の孫のフィリップとは親友で、その姉のヨハナとは恋人関係でした。フィリップと彼の両親が事故で亡くなった後は疎遠になっていましたが、ハンスはライネンの面倒をよく見てくれた恩人のような人だったのです。

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ライネンは久しぶりにマイヤー家を訪ねますが、ヨハナは祖父を殺した犯人の弁護などやめて欲しいと訴えます。彼は悩みますが、被害者の弁護人マッティンガーから「なりたかった仕事なんだろ。それならそれらしく弁護に徹底しろ」と言われ決心します。マッティンガーは大学時代の先生でした。

映画コリーニ事件 

コリーニは相変わらず沈黙します。すると、殺害に使われた銃が現在では入手不可能なワルサーP38だということが判明します。ライネンはこの銃を見たことがあったのです。そしてハンスの家を訪ね、書斎を調べます。そこでワルサーP38を見つけます。その画像をコリーニに見せると明らかに動揺しました。ライネンは独自に調査するため審理の中断を申し入れ、コリーニの生まれ故郷であるイタリアのモンテカティーニに向かいます。

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ドイツに戻ったライネンはコリーニにイタリアで調べてきたことについてを話をしました。1944年6月19日に何があったのかを。コリーニはそれまで拒んでいたタバコを咥えました。そして、過去を語り「望むのは正義だけだ」と話すのです。一方ライネンの行動にヨハナは「誰のおかげで今のあなたがあると思っているの」と詰ります。

 

審理が再開され、マイヤーがナチスの将校だったことが明らかになりました。そして1944年6月19日にパルチザンのテロでドイツ兵が2名殺され、その報復としてモンテカティーニの市民を大量虐殺したのです。その中にコリーニの父親もいたのです。父親はコリーニの見ている前で射殺されたのです。それもマイヤーに無理やり見せられたのです。コリーニの動機は父親の復讐だったのです。

 

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被害者弁護人のマッティンガーは1968年にコリーニが姉と共にマイヤーを戦争犯罪者として告発するも翌年に却下されていたことを明かします。そしてマイヤーは上からの命令で虐殺を行っただけ、さらに終戦後20年を経過し時効である。その罪のない人物を殺害したコリーニは明らかに犯罪者であると主張します。

 

マイヤーが不起訴になった理由を調べたライネンは次の公判でマッティンガーを証人として指名しました。ライネンはマッティンガーに1968年に成立した通称「ドレーアー法」について尋ねます。この「ドレーアー法」というのはドレーアー検事が起草した「秩序違反に関する法律」です。この法律は謀殺ほう助者は故殺として裁くというもので、その時効は15年というものでした。ドレーアーもナチスの幹部だったのです。結果、多くのナチス幹部が戦争犯罪人としての罰を逃れたのです。そしてこの法律の決定会議にマッティンガーも出席していたのでした。

 

ライネンはマッティンガーに「マイヤーの不起訴は正当だったのか」と尋ねます。マッティンガーは「当時の法律では合法だった」と答えます。ライネンは「それでは今はどうですか」と質問するとマッティンガーはしばらくの沈黙の後「違う」と答えます。場内はざわめき、審理は終了します。コリーニはライネンに握手を求め、「死者は報復を望まない」と言って拘置所へ戻ります。

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翌日の判決の日、コリーニの姿がありません。裁判長はコリーニが独房で自殺したことを告げます。被告人死亡で裁判は中止となりました。数日後、ライネンの事務所にベルリンの裁判所から手紙が届きました。中を開けるとコリーニ父子の写真が入っていました。ライネンはコリーニの葬儀に出席します。葬儀後カフェで休んでいると何処からともなくサッカーボールが転がってきました。しかし誰も見当たりません。そのボールを投げると突然子供の頃のコリーニが現れ、ボールを受けとります。そしてその後に父親が現れ二人は仲良く歩いて行きます。少年コリーニはライネンに手を振るのでした。

 

ナチス戦争犯罪にまつわる映画でした。戦後、ドイツは一部のナチス戦犯の犯罪を無きものにするための法律をでっち上げたのでした。

何処の国でも権力者は自分の都合で法律を変えてしまうのです。我が国もしかり。そして官僚は尻尾を振って従い、忖度の嵐。正義感溢れる人間は必死に抵抗しますが、その無力さに絶望し、場合によっては死を選択してしまうのです。権力者はそんなこと知ったことではありません。この映画を観ていてそんな構図を思わずにはいられませんでした。悔し涙が溢れました。こんなことが許されるのか?

我が国には半沢直樹はいないのか!

そんな人物がいたらモリ・カケ・サクラもとっくに解決してますよね。

 

コリーニ役のフランコ・ネロは私たちの世代にとっては懐かしい顔でした。マカロニウェスタンの英雄でした。存在感のある、いぶし銀の演技でした。

 


ドイツで記録的ヒット!『コリーニ事件』予告編

 

それでは今日はこの辺で。