先日のキネ旬シアターは『ありふれた教室』でした。
監督:イルケル・チャタク
出演:レオニー・ベネシュ
製作:2023年 ドイツ 2024年 日本公開
ある中学校で発生した小さな事件が予期せぬ事態に発展し、学校の秩序が崩壊していく様子を新任教師の目を通して描いたサスペンス・スリラーということです。
仕事熱心で正義感の強い女性の新任教師・カーラは新たに赴任した中学校で1年生のクラスを受け持ち、同僚や生徒の信頼を獲得しつつありました。その学校内では盗難事件が相次いでおり、ある日、カーラのクラスの生徒が犯人として疑われてしまいます。
校長たちの強引な調査に反発したカーラは独自に犯人捜しを開始します。すると自分のパソコンに仕掛けたカメラにある人物が着ていたブラウスが映し出されていました。そしてカーラの財布の金はなくなっていました。カーラはそのブラウスを着ていた人物を問い詰めますが、真っ向から否認されます。その人物とは学校の事務員で、息子はカーラのクラスの子でした。このことがやがて問題を複雑にしていきます。
そして盗難事件をめぐるカーラや学校側の対応は保護者たちの批判や生徒たちの反乱、同僚たちの対立といった事態を招いてしまいます。後戻り出来ないカーラは次第に孤立無援の窮地に追い込まれてしまうのですが・・・。
些細な出来事への対応を誤り、そのことが学校崩壊へとつながっていく様子は緊迫感あふれ、息を呑む展開で目が離せませんでした。
学校という場において起きた盗難事件、学校側は確たる証拠もなく移民の生徒に嫌疑をかけ問い詰める。生徒を守りたい正義感あふれる女教師は盗撮という手段で犯人を突き止めようとする。こうした手段に対し保護者や生徒が反感を抱くのは至極当然です。教師の間でも賛否が分かれます。では、どのような対応が良かったのでしょうか。正義とは何か、難しい問題です。
事務員の息子は母親のために教師に謝罪を求めますが、それに応じないと今度はカーラを脅迫し、暴力で証拠のパソコンを盗みます。息子は停学処分になりますが、堂々と登校してきます。校長らの説得にもかかわらず教室に居座り続けます。カーラは教室の鍵を締め二人きりで相対します。息子はカーラに借りたルービックキューブを全面揃え返します。あっ、息子との雪解けかと思った瞬間、ショッキングなラストが待ち構えていました。息子は椅子に乗せられたまま、警察に連行されたのです。カーラの説得は及ばなかったのでしょう。
スリリングな展開の末のラストは、えっ、という感じで、結局は犯人もわからず、多少欲求不満でしたが、充分楽しめました。犯人探しの映画ではありません。
学校の規律・規則を守ること。生徒の人格・尊厳を守ること。対応を間違えると学級崩壊へと。怖いです。
ネタバレ失礼しました。
それでは今日はこの辺で。