先日のキネ旬シアターは『バティモン5 望まれざる者』でした。
監督:ラジ・リ
出演:アンタ・ディアウ、アレクシス・マネンティ、アリストート・ルインドゥラ
製作:2023年 フランス・ベルギー
パリ郊外を舞台に行政と住民たちの対立を描いた社会派ドラマということです。
パリの郊外、バティモン5と呼ばれる一角は労働者階級の移民たちが多く暮らす場所です。ここでは前任の市長が急死したのを受け継いだ臨時市長ピエールが、再開発のため老朽化した団地の取り壊しが進められています。その横暴な進め方に住民たちは反発します。やがて、これまで住民たちに寄り添ってきたアビーを中心としたケアスタッフたち住民側と市長を中心とした行政側が対立し、ある事件をきっかけに衝突し、激しい抗争へと発展してしまうのですが・・・。
フランスの移民・人種差別問題、経済格差問題を含んだ暗く重たい映画です。
バティモン5地区は巨大な団地が数多く立ち並ぶ地域です。団地は老朽化し、治安も悪化しています。住民は移民の労働者が多く、貧しく劣悪な環境の中で暮らしています。
そんな中、市長を引き継いだピエールは地域の再開発と治安改善のために次々と施策を施していきます。しかし、それは住民や若者にとって行き場を失いかねない施策であり、自由を抑圧するものでした。
自身は移民者でありながらケアスタッフとして働くアビーは住民と行政の板挟みになっていきます。ある日、あまりにも横暴なやり方に腹を立てたアビーは自分が市長に立候補すると宣言するのです。団地の住民たちは大喝采です。それを知ったピエールは早速妨害行動に出ます。
そんなある日、団地の一部屋から出火し、住民は避難します。ピエールは絶好の機会とばかりに、住民全員を退去させる決定をするのです。行き場を失った住民たちは途方に暮れ、怒りに狂います。そして、アビーの仲間、ブラズがとんでもない行動を起こすのです。そして絶望感漂うラストへ・・・。
果たして政治とはどうあるべきなのか。ピエール臨時市長の施政にも一理あります。老朽化した建物を取り壊し、街の再開発を実施する。治安の維持のため、若者の夜の集団での外出禁止など。しかし、その根底には移民や貧困層への差別が見え隠れします。すべての市民が賛成する施策などないのかもしれません。しかし、より多くの市民が納得する施策を施すのが政治家のあるべき姿ではないでしょうか。
裏金問題を闇に葬り去ったどこかの国のどこかの党の政治家にも観てもらいたいものです。
それでは今日はこの辺で。