先日のキネ旬シアターは『川っぺりムコリッタ』でした。
原作・監督・脚本:荻上直子
製作:2022年 日本
北陸の小さな町の古いアパート、ハイツムコリッタで暮らす4人の日常を描いた物語です。
ある事情から、北陸の塩辛工場で働くことになった山田は社長から紹介された安アパート「ハイツムコリッタ」で暮らすことになりました。貧乏な山田の楽しみは風呂に入ることと、風呂上がりに牛乳を飲むことです。
ひとりでひっそりと暮らしたい山田はアパートの住人とも距離を置くようにしていました。ある日、隣の島田が風呂を貸して欲しいと、勝手に上がり込んできます。なんとか追い返しますが、その日以来、島田は育てた野菜などを持ってきて、一緒に食事をしたりして度々来るようになります。山田も次第に島田を受け入れるようになります。
このアパートにはその他、未亡人の大家である南親子、さらに息子と共に墓石を売る溝口など風変わりな人たちが住んでいました。山田はその彼らとも次第に交流するようになっていきました。
そんな時、山田に父親の死を告げる手紙が届きました。父親は孤独死でした。山田は父親とは4歳の時に別れて以来会っていませんでした。山田はそのままにしようと思いましたが、島田に説得され遺骨と遺品を引き取ることにしました。
そんなこんなで、山田は「ハイツムコリッタ」の住人と食事を囲んだりして、幸せを感じるようになっていました。ところが、そんなある日、山田が隠していた秘密が住民に知られてしまったのです。それは山田が過去に侵した犯罪だったのです。その過去を知った住民たちの行動は・・・。
「ムコリッタ」とは、仏教における時間の単位の一つで1/30日、つまり48分を表す言葉だそうです。つまり、ささやかな幸せ、を表わす言葉のようです。
世間から身を隠すように生きてきた人間が、たまたま出会った人たちによって、身近な人間の死というものに向き合いながらも、ほんとに身近にあるささやかな幸せに気づいていくというお話です。その象徴が食事です。
それは島田の言う「ご飯は一人で食べるよりみんなで食べる方がおいしいんだ」という言葉に表されています。人と関わらずに生きていけるなんてありえないのです。
それにしてもこの映画、ご飯を食べるシーンが多いです。一人ご飯。二人ご飯。大勢でのご飯。白いお米ご飯がこんなにもおいしく感じられた映画は久しぶりでした。
ご飯の湯気でこちらの気持ちも心なしか暖かくなりました。
余談ですが、大家の南(満島ひかり)が亡き夫の遺骨をかじりながら自慰にふける場面には驚きました。骨まで愛して・・・、ですかね。
それでは今日はこの辺で。