Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

映画『彼らは生きていた』を観る

今日、本当に久しぶりに『キネマ旬報シアター』に行ってきました。

3月2日から休館。3月28日に一旦開館。4月9日より再び休館。そして6月5日にようやく開館となりました。最後に来館したのが2月26日でしたので、ほぼ3か月ぶりです。長かったです。

さぞかし混んでいるかと思いきや、私の観たシアター3は客が僅かに5人でした。それでもソーシャルディスタンスで1列ごと、1席ごとに空けるようになっていました。会員期間も3か月延長して下さいました。

 

今日の映画は『彼らは生きていた』でした。

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監督:ピーター・ジャクソン

製作:2018年 イギリス、ニュージーランド

 

イギリスの帝国戦争博物館に保管されていた第一次世界大戦の記録映像をピーター・ジャクソン監督が再構築したドキュメンタリー映画です。

2200時間にも及ぶモノクロの映像をカラー化し、BBCに残っていた退役軍人のインタビューをもとに、映像のスピードも修正を施し、爆撃音などの効果音も追加して仕上げました。戦闘の場面だけではなく、食事や休憩時間など日常の生活も描かれています。

 

 1914年6月、セルビアの青年がオーストリア=ハンガリー帝国の皇太子を暗殺したことからあっという間に連合国と同盟国との間で戦火が広がり、8月にはドイツ帝国とイギリス帝国の間でも宣戦布告されました。大日本帝国もイギリスの同盟国でしたので8月にはドイツに宣戦布告しました。

 

イギリスではこの宣戦布告と同時に若者が軍隊に応募し続々と入隊しました。中には19歳という年齢制限をごまかし僅か15、6歳の少年たちも入隊しました。

そして軍事訓練を経て前線へ向かいます。その軍事訓練の様子や、食事の風景などがまるで現在のフィルムのように違和感なく再現されています。兵士たちは皆楽しそうです。このあたりの風景は日本の戦争映画における軍律に厳しかった軍隊生活と対照的です。実際にはどうだったのか見当もつきませんが。昔、テレビでアメリカの軍隊生活を描いたコメディのようなドラマがありましたが(タイトルは忘れました)、その時も日本とはずいぶん違うもんだな、などという感想を持ったものでした。

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やがて、最前線に向かう兵士たちは、次第に厳しい現実に直面してゆきます。つらい塹壕掘り、その中での不潔極まりない生活(糞は垂れ流しなど)、そして銃撃、砲撃にさらされます。さっきまで隣で話していた友人が銃撃で見るも無残な姿で死んでいます。半端な数でない死体の写真、その死体の山を踏み越えて、さらに前進します。その爆撃の様子や、地雷の爆発シーンなどもそっくり残っています。それがカラー化されて再現されているのです。すごい迫力です。

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そして、戦争は終わりに近づきます。捕虜となったドイツ兵と仲良くなったりして、憎い敵だと思っていた相手が、ちっとも悪い人間ではないと気づきます。まだまだ20歳にも満たない人間の価値観などすぐに変わるのでしょう。

 

1918年、終戦。故郷で待ち構えていたのは歓待でも慰労でもありませんでした。100万人の戦死者を出したなかで、なぜ戦って死ななかったのかなど、政府や家族、社会の冷たいあしらいでした。戦後不況で帰還兵は仕事にも満足に就けませんでした。兵士たちの戦争に行く前の高揚した心境と戦時中、そして戦後の心境の変化が実に興味深いです。

 

この映画はそうした退役軍人たちの膨大なるインタビューで再現されています。100年以上前のこれだけの映像がイギリスには残っているのです。このような映画が第一次世界大戦の後に作られていたら、戦争というものの現実をもっと知ることができ、第二次世界大戦へのハードルはもう少し高くなったのかもしれません。

 


ピーター・ジャクソン監督『彼らは生きていた』予告編

 

あらためて、やはり映画館はいいですね。

 

余談ですが、今日「アベノマスク」なるものが届きました。「こんなもん、要らねえわ!」

 

失礼しました。それでは今日はこの辺で。