昨日のキネ旬シアターは『ひまわり』でした。
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
音楽:ヘンリー・マンシーニ
製作:1970年 イタリア・フランス・ソ連
もう、ビデオを含めると何度見たかわかりません。なんで今頃劇場公開なのかと思ったら、初公開から50年周年だそうです。そういえば先日の『三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜』も50周年でした。これからも何か50周年記念映画が上映されるのでしょうか。楽しみです。
この映画はヴィットリオ・デ・シーカ監督の『自転車泥棒』に並ぶ傑作です。
もうこの映画は多くの人が観ていると思いますので、いまさら詳しくは書きません。
ザックリとしたあらすじだけ書きます。
第二次世界大戦の最中、ナポリに住む娘ジョバンナと兵士アントニオは知り合ってあっという間に恋に落ち、結婚します。結婚すれば12日間の結婚休暇がもらえるのです。しかしそれもあっという間、アントニオは今度は精神病を装って兵役を逃れようとします。ところがすぐに詐病だとわかり、懲罰の代わりにソ連戦線へ送られることになってしましました。見送るジョバンナにアントニオは「土産に毛皮を買ってくる」といってミラノ駅を出発します。
終戦後、待てど暮らせどアントニオは帰ってきません。ジョバンナはアントニオの母親と暮らしています。役所に問い合わせても埒があかないと、ジョバンナはソ連へアントニオを探しに行きます。写真を見せながら、言葉もろくにわからない中懸命に探しますがアントニオの消息は分かりません。そんな中ジョバンナは外務省の役人に兵士が眠っているというひまわり畑に連れていかれます。地平線まで広がるひまわり畑。しかし、ジョバンナはアントニオはここにはいないと確信します。
そしてなおも探し続けていると、写真を見たある女性がついてきなさいと言います。ついていくとそこには若いロシア人の女性マーシャと幼い女の子が住んでいました。マーシャはアントニオと出会った時のことを話します。死にかけていたアントニオをマーシャが助けたのです。アントニオは記憶を失っていました。
やがて汽車の汽笛が聞こえるとマーシャは駅にジョバンナを連れていきます。そこにはアントニオの姿がありました。二人は見つめ合います。驚いたアントニオは駆け寄ろうとしますが、ジョバンナは背を向け立ち去ってしまいます。動き出した汽車に飛び乗り号泣するのでした。
アントニオはその日以来考え込む時間が多くなり、口もろくにきかなくなりました。マーシャは不安になりました。ミラノに帰ったジョバンナは荒れた生活になりました。それを責める母親にソ連でのアントニオの姿を話し、死んでくれていたほうがよかったと悔しがるのでした。
月日が経って、アントニオをみかねたマーシャはミラノへ帰ることを勧めました。アントニオは途中で約束の毛皮を買い、ミラノ駅に降り立ちました。ジョバンナに電話して会おうといいますが彼女は「もう私も結婚してるの」と拒否します。諦めきれないアントニオは再び電話をし、ジョバンナの家で会うことになります。アントニオは「もう一度やり直そう」と言い、抱き合いますが、ジョバンナはやっぱり「無理」だと言います。その時隣の部屋で赤ん坊の泣き声がしました。ジョバンナにも子供が出来ていたのです。赤ん坊の名前はアントニオだと言います。それを聞いたアントニオはソ連に帰る決心をします。
翌日、ミラノ駅でアントニオをジョバンナが見送ります。ジョバンナをじっと見つめるアントニオ。汽車が出ていきます。見送るジョバンナの目には涙が溢れます。ジョバンナはホームに立ち尽くしたまま動きません。このホームはかつてアントニオがソ連戦線へ旅立った時に見送ったホームでした。
冒頭とエンディングでのひまわり畑の風景は何度見ても凄いです。このひまわりの下に数えきれないくらいの戦死者が埋まってるとのこと。圧巻です。
戦争によって引き裂かれた男女の運命。よくある戦争悲劇です。それでもあくまでも男と女の恋愛物語なのです。やむをえない事情があるにせよ、浮気は絶対に許せない女。事情がわかれば許してくれると思う男。この男と女のすれ違い。とはいえ、やはり愛し合っていることは確かなのです。でも互いに子供を持ってしまった。もうそれを捨てることはできない。そこのジレンマが最後のホームでの別れのシーンによく表れています。哀しくて、悲しくて、切なくて何度見ても泣けるところです。
それとこの映画を名画と言わしめているのは、やはりヘンリー・マンシーニの音楽でしょう。この曲が流れてくると。条件反射のように悲しく涙がこみ上げてきます。どうしてあの頃の映画音楽は心に響くのでしょう。
映画『ひまわり』が上映されて50年です。最初に観たのが高校生の時。その時の印象と、以後の印象はそれぞれ違ったように思います。今回もまたそれらとは違った印象を持ちました。自分も年齢を重ねるごとに経験も重ね、思うところも変わってくるのでしょう。小説なども若い頃読んだ感想と年を重ねてからの感想はかなり違うことがあります。
デ・シーカ監督もマストロヤンニももういません。ソフィア・ローレンは健在です。彼女の迫力はいつ観ても凄いです。
昨日の映画館はいつもより混雑していました。お年寄りたちが懐かしがって観に来たのでしょう。
それでは今日はこの辺で。