先日のキネ旬シアターは『こんにちは、母さん』でした。
原作:永井愛
監督:山田洋次
製作:2023年 日本
山田洋次監督、91歳にして90本目の作品です。主演は山田監督とも馴染み深い吉永小百合様です。山田監督と小百合様の「母べえ」「母と暮らせば」に続く「母」シリーズ3部作の完成です。原作は永井愛の戯曲です。
大会社の人事部長・神崎昭夫は仕事柄毎日神経をすり減らし、家では妻との離婚問題、大学生の娘の家出などに頭を悩ましていました。そんな時、大学時代からの友人で同期入社の木部から屋形船を借りて同窓会をしようとの相談がありました。
そこで神崎は久しぶりに向島で一人で暮らす母の実家を訪ねました。実家は足袋屋を営んでいます。引き戸を開けると迎えに出た母の様子がちょっとおかしい。以前は地味な感じの母親だったのが、妙に若返った格好をしています。聞けば地域の人たちとボランティア活動をしている様子。おまけに恋愛までしていて、イキイキしています。神崎はそんな母親を見て戸惑うのですが・・・。
夫に先立たれ、息子は大学入学と共に家を出て、残された母は長い間一人暮らしです。しかし、そんな母にも近所の人たちと貧困者に対するボランティア活動に専念することで寂しさは紛れています。さらにそのボランティア活動で知り合った教会の牧師さんに恋をしてイキイキとしているのです。
そんな母を見て息子は親友のクビを切らなければならない立場で悩み、妻とは離婚間近、娘は家出して家に寄り付かない、悩みいっぱいで、そこに母親の恋愛問題が沸いてきてすべてを投げ出してしまいたくなります。しかし、そんな母親の恋愛も長続きしません。悲しい別れが訪れます。娘は母の家で暮らし、成長ぶりが伺えます。そして離婚が成立。会社の問題にも思い切った決断をします。すべて吹っ切れた息子。そして母親にあるお願いをします。失恋で落ち込んだ母親はそれを聞いて再び元気を取り戻すのです。
絵にかいたようなホームドラマで山田洋次監督ならではものでした。
小百合様のセリフで「死ぬのが怖いんじゃないの。いつ歩けなくなるか、いつ寝たきりになるか、それが怖いの。人様に迷惑をかけなきゃ生きていけなくなるのが怖い」とありました。まさにその言葉が身に沁みる齢になりました。
吉永小百合様のいくつになってもお美しい姿を拝見できただけでも大満足でした。
それでは今日はこの辺で。