今日の聴き比べは『アイ・シャルビー・リリースト(I Shall Be Released)』です。
I Shall Be Released
By Bob Dylan
They say everything can be replaced,
Yet every distance is not near.
So I remember every face
Of every man who put me here.
I see my light come shining
From the west onto the east.
Any day now, any day how,
I shall be released.
They say every man needs protection,
They say every man must fall.
Yet I swear I see my reflection
Some place so high above this wall.
I see my light come shining
From the west onto the east.
Any day now, any day how,
I shall be released.
Standing next to me in this lonely crowd,
Is a man who swears he's not to blame.
All day long I hear him shout so loud,
Crying out that he was framed.
I see my light come shining
From the west onto the east.
Any day now, any day how,
I shall be released.
この曲はボブ・ディラン(Bob Dylan)の曲ですが、私が最初に聴いたのはザ・バンド(The Band)のファーストアルバム『Music From Big Pink』によってでした。
元々はディランがバイク事故を起こし、再起不能と言われ行方知れずとなっいた1967年頃にウッドストックのビッグ・ピンクと呼ばれる小屋でザ・バンドのメンバーとデモテープを制作していましたが、この『アイ・シャルビー・リリースト』はその中の1曲でした。
この時の音源は1975年に『地下室(The Basement Tapes)』という形で発表されました。
これより先立つこと7年、1968年にザ・バンドの『Music From Big Pink』がリリースされました。このザ・バンドのバージョンはリチャード・マニュエルのヴォーカルが印象的で、『アイ・シャルビー・リリースト』と言えばザ・バンドというのが定評でした。その後もザ・バンドの解散コンサート『ラスト・ワルツ』でもディランと共に演奏されました。
The Band - I Shall Be Released
そして肝心なボブ・ディランのバージョンが初めて公式にリリースされたのが1971年の『Gratest Hits 2』という2枚組のベスト盤でした。ギターとハーモニカの弾き語りです。何故か1番の歌詞が歌われていません。
Bob Dylan - I Shall Be Released (Audio)
日本でこの曲を歌ったのが岡林信康先生でした。音源として残っている中で一番古いのはおそらく1972年にリリースされた「五つの赤い風船」の解散コンサート『ゲームは終わり(解散記念実況盤)』での録音ではないでしょうか。俺らいちぬけた、と言って蒸発してから、再び戻ってきてからのライブです。
そして初めて生でこの曲を聴いたのが、1973年の『4人の会コンサート』を観に行った時でした。加藤和彦、西岡たかし、はしだのりひことのジョイントでした。
この時の模様はレコード化されていませんが、その年の大晦日に晴海で大々的なコンサートがありました。出演は岡林先生の他に泉谷しげる、遠藤賢司、加川良、三上寛、海援隊、佐渡山豊、細野晴臣、松本隆、伊藤銀次、鈴木慶一、矢野誠ら錚々たるメンバーでした。そしてこの時の模様がアルバム『1973PM9:00→1974AM3:00』として発売されました。
この岡林バージョンは訳詞が中山 容さんです。
アイ・シャルビー・リリースト
訳詞:中山 容
いつだって何かにつつまれ
いつだって何かをうばわれ
でもかすかなかげが囲いを超えて
陽はきっと東から西に光るのだ
もうまじか それだけでいいだろう
いつだってとやかくいう
いつだって川は流れる
でも皆身を守り たまらないだろう
水はきっとあふれて ひくきにつくのだ
もうまじか それだけでいいだろう
いつだってそとは雲
いつだってころぶもの
でも一筋の光が道をつくり
渡り鳥ゆっくりと渡るだけだ
もうまじか それだけでいいだろう
I see my light come shining
From the west onto the east.
Any day now, any day how,
I shall be released.
フォークの神様と祭り上げられ、疲弊して逃げ出し、そして自然と触れ合って、再び戻ってくる。この頃の心境が「自分は解き放たれて自由になれたるのだ」というこの詩に共鳴したのでしょう。
RCサクセションもアルバム『コブラの悩み』でカバーしています。こちらは自身の訳です。直接的な権力批判になっています。さすがに忌野清志郎さんです。
ディランⅡも歌っています。タイトルは「男らしいってわかるかい」というタイトルです。訳詞は大塚まさじです。
1973年の大晦日が甦ります。
それでは今日はこの辺で。