今日は1960年代半ばに彗星のごとく現れ、心温まる音楽を提供し、あっという間に去っていったニューヨークの都会的バンド、『ラヴィン・スプーンフル(Lovin' Spoonful)』です。
『ラヴィン・スプーンフル』はハーピストのジョン・セバスチャン(John Sebastian)とギタリストのザル・ヤノフスキ―(Zal Yanovsky)が当時二人が所属していたマグワンプスというグループを離れて作ったバンドです。マグワンプスにはママキャス・エリオットとデニー・ドハーティなどもいて、残ったメンバーがママス&パパスを結成します。
ジョンとザルはドラムスのジョー・バトラー(Joe Butler)とベースのスティーヴ・ブーン(Steve Boone)を加えて1965年に「ラヴィン・スプーンフル」を結成します。
彼らの音楽性は多様で、中でもフォークミュージックの色彩が強く、またブルースの影響も相当にありました。そしてジャグバンド風なのが魅力の大きな要因になっているのかもしれません。
1965年にシングル「魔法を信じるかい(Do You Believe In Magic」でいきなりの大ヒットを飛ばします。ちょうどこのころのアメリカはボブ・ディランがフォークからロックへ、そしてバーズのデビューとフォークロックが花開いた時期でした。
そして同年ファーストアルバム『Do You Believe In Magic(魔法を信じるかい)』がリリースされ一躍スターダムにのし上がりました。
タイトル曲は軽快なタッチでいかにもヒットしそうなポップスにんっています。しかしながら単純にフォークロックだけで終わらないのがこのグループの面白さで、ブルースを何曲も取り入れているのです。しかもそのブルースもちょっと垢抜けた?ブルースに仕上げているところが都会的です。この辺がバーズとは違うところでしょう。
翌年、セカンドアルバム『Daydream』をリリースします。
セカンドになると、オリジナルが一気に増えます。前作の半分ほどがトラディショナルだったのに比べ大きな変化です。タイトル曲は全米1位の大ヒットなりました。ほんわかして本当に癒されます。このアルバムでもまたブルースは忘れていません。
同年、サードアルバム『Hums of the Lovin' Spoonful』がリリースされます。
このアルバムからは4枚のシングルが発売されますが何といっても「Summer In The City」でしょう。もちろん全米1位で、スプーンフル最大のヒットになりました。この曲で日本でも人気になりました。また多くの人にカバーされました。とにかく、フォークブルース、ジャグ・バンド・ミュージック、ロックンロール、R&B、そしてカントリーと、これらを見事に融合させました。
ここでザル・ヤノフスキ―が麻薬で逮捕され脱退してしまいます。代わりにモダン・フォーク・カルテットのジェリ―・イエスター(Jerry Yester,g)が参加して4枚目のアルバム『Everything Playing』をリリースします。1967年です。
このアルバムからもシングルが4曲発売されますがそれまでの勢いはなくなりました。それでも「Six O'Clock」や「Younger Generation」などは名曲です。ジョン・セバスチャンはウッドストック・フェスティバルでこの「Younger Generation」を弾き語りで歌いました。ラストの「Close Your Eyes(瞳をとじて)」は解散を予期していたような、切なく寂しい曲です。
この後、ジョン・セバスチャンが脱退すると、バンドは立ちいかなくなり実質上の解散となります。1968年にはジョー・バトラーの実質上のソロアルバムが「ラヴィン・スプーンフル」名義で発表されました。
その他にフランシス・コッポラの映画『大人になれば(You're a Big Boy Now)』のサウンドトラックが出ています。
これほどの洗練された音楽を提供しながらもわずか3年で解散となりました。
その後ジョン・セバスチャンは70年代に5枚のソロアルバムを発表しています。
なお、昔購入した『ラヴィン・スプーンフル カーマストラ・BOX』という4枚組のCDボックスがあって、カーマストラ時代の音源がすべて収録されています。ジョン・セバスチャンのシングルや映画のサントラまで入っています。今では廃盤のようです。これは今では貴重ですね。
The Lovin' Spoonful - Do You Believe In Magic (HQ)
The Lovin' Spoonful - Summer In The City (1966)
The Lovin' Spoonful - Younger Generation (HQ)
それでは今日はこの辺で。