今日取り上げるのは、ビートルズの『サージャント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』、ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』やローリング・ストーンズの『べガーズ・バンケット』と並び称されるほどの傑作アルバム、『ラヴ』の『フォーエヴァー・チェンジズ』です。
『ラヴ』は1965年にロサンゼルスで黒人アーサー・リー(Authur Lee)によって結成されました。当初のバンド名はグラス・ルーツというものでしたが、同名のバンドが既に存在することが判明し、止む無く『ラヴ』に変更しました(グラス・ルーツはその後日本でもヒット曲を出しました)。『ラヴ』はサイケデリック時代の寵児でした。音楽性やルックスも際立って異色でした。音楽はフォーク、ロック、ジャズ、ブルース、クラシック、ポップスなどなどを取り入れ、様々な実験的アプローチを試みました。
また数々のアーティストに影響を与えました。レッド・ツェッペリンのロバート・プラントは『ラヴ』の音楽が彼らに与えた影響は大きいと述べています。さらに数多くのミュージシャンが『ラヴ』の楽曲をカバーしています。例えばフーターズ、UFO、ダムド、ムーヴ、アリス・クーパー、ビリー・ブラッグなどなど。ローリング・ストーンズも彼らのライヴを観て感動し、アルバム『アフターマス』の「ゴーイング・ホーム」を作ったようです。セカンドアルバムでプロデュースをしているポール・ロスチャイルド(ドアーズのプロデューサー)は「ドアーズは間違いなくラヴの影響を受けている」と話しています。
当初のメンバーは
アーサー・リー(Arthur Lee,vo,g,p,harp,ds,perc)
ブライアン・マクリーン(Bryan Maclean,g,vo)
ジョン・エコールス(John Echols,g)
アルバン・”スヌーピー”・プフィステラ―(Alban "Snoopy" Pfisterer,ds)
ケン・フォーシィ(Ken Forssi,b)
セカンドから
マイケル・スチュアート(Michael Stuart,ds)
セカンドのみ
ティジェイ・キャントレリィ(Tjay Cantrlli,sax,flute)
という構成でサードアルバムまで続きます。
1966年にファーストアルバム『Love』でデビューします。この中から「My Little Red Book」がヒットし、アルバムも15万枚を売り上げ最高52位を記録しました。また、バーズのレパートリーだった「Hey Joe」も取り上げており、この後ジミ・ヘンドリックスも取り上げています。ジミヘンも彼らに大きな影響を受けています。
翌1967年にはセカンドアルバム『Da Capo』をリリースします。ここではロック史上初のLPの片面を費やす20分の大作「Revelation」や彼らの一番のヒット曲「7And 7Is」が含まれています。この曲はアリス・クーパーやビリー・ブラッグにカバーされています。また「She Comes In Colors」はストーンズの「She's A Rainbow」のヒントになっています。
そして同年、問題の『Forever Changes』がリリースされます。
Side A
1.Alone Again Or
2.A House Is Not a Motel
3.Andmoreagain
4.The Daily Planet
5.Old Man
6.The Red Telephone
Side B
1.Maybe the People Would Be the Times or Between Clark and Hilldale
2.Live and Let Live
3.The Good Humor Man He Sees Everything Like This
4.Bummer in the Summer
5.You Set the Scene
このアルバム、当初はニール・ヤングが共同プロデュースで名前を連ねていましたが、途中で降板し、A-4のアレンジのみで参加しています。プロデュースはこれもドアーズのプロデュースを手掛けるブルース・ボトニックです。
A-1はスパニッシュギターで始まり、ストリングスが被ってきます。当時ロックにストリングスなどは珍しい試みでした。まさに音の宝石箱です。
A-2はサイケデリックロックです。ベトナム戦争の退役軍人の話を題材にしています。
A-3はきれいなバラード調の曲。
A-4はバッファロースプリングフィールドにも通じるフォークロック。
A-5はストリングスとホーンを入れた曲で、マクリーンの優しいヴォーカルが聴ける。
A-6はサイケ調の不思議な曲。
B-1はブラスを取り入れたロック。これも当時としては珍しいブラスロックです。
B-2はハーモニーのきれいなフォークロック。
B-3はゆったりとしたムーディーな曲。ここでもストリングスがふんだんに取り入れられています。
B-4はボブ・ディランのような字余りヴォーカル。単調なリズムが逆に心地よい。
B-5は「ラヴ」らしい7分に及ぶ大作。
このアルバムは全体的にアコースティカルな音作りになっています。メロディーは多彩で、まさに万華鏡のようです。
イギリスではチャート25位になりましたがアメリカでは154位どまりでさっぱりでした。
このあとアーサー・リーはバンドを解散してしまいます。リーを除く全員が麻薬中毒でどうにもならなくなっていたのです。バンドが活動中から、周りではメンバーが悪いからいずれはダメになるだろうとの噂が立っていました。
1968年にアーサー・リーは全く新しいメンバーを集めて再結成し1969年に4枚目のアルバム『Four Sail』と『Out Here』を、1970年にはジミ・ヘンドリックスをゲストに迎えて『False Start』をそれぞれ発表します。それでもかつてのような音楽には及びませんでした。
その後、リーはソロアルバムを出したりしていましたが、2006年に白血病により60歳で亡くなりました。
「ラヴ」とアーサー・リーは多くのミュージシャンからは支持されましたが、バンドとしてはアンダーグラウンドの域を脱することはできませんでした。それでも2作目とこの『Forever Changes』は今でも傑作として語り継がれています。
初期の3枚のアルバムです。順に『Love』『Da Capo』『Four Sail』
コンピレーションはBOX CDセット『ラヴ・ストーリー』が素晴らしい。 『Foreever Changes』の曲は全曲収録されています。
Love - Alone Again Or (Original Version)
それでは今日はこの辺で。