長い競馬観戦の歴史の中で、私が最強と思う馬は無敗の3冠馬であるシンボリルドルフとディープインパクトでしょう。どちらも甲乙つけがたい強さを持っていました。
シンボリルドルフは先行抜けだしの、安定感抜群の優等生的競走馬でした。その分競馬でのハラハラ感と言いますか、面白みという点では同じく前年の3冠馬ミスターシービーよりは劣っていたと思います。
一方のディープインパクトは底知れない爆発力がありました。ゲートがあまり上手くなく、ハラハラさせる場面もありましたが、暴れん坊的な危うさがありましたが、その強さはどのレースを見ても驚嘆に値するものが有りました。
ディープインパクトは当時のリーディングサイヤーのサンデーサイレンスの仔でしたが、その産駒の中では特に目立った存在ではありませんでした。しかし調教で跨った武豊はその素質に驚いたと言います。
デビューの新馬戦は単勝1.1倍で4馬身差の圧勝、続くオープン特別も単勝1.1倍で最後方からの競馬で5馬身差の圧勝。3戦目の弥生賞は辛勝でしたが重賞初制覇。
そして皐月賞です。1.3倍の1番人気。この1.3倍がこの馬にとって、この年の有馬記念と翌年のジャパンカップでの生涯単勝高配当タイ記録です。あとはすべてこれ以下の配当でした。
レースではスタート直後に躓き、落馬寸前になりましたが、態勢を立て直し、最後方からの競馬にも拘わらず、最後はシックスセンスに2馬身半差をつけて完勝でした。
続いて日本ダービー東京優駿です。ここでは単勝1.1倍でした。単勝支持率73.4%でハイセイコーの記録を更新しました。2番人気はインティライミでなんと19.5倍でした。
レースはまたしても出遅れで後方待機。3~4コーナで徐々に進出、直線は大外に持ち出し、馬場の真ん中を通って圧勝。2冠達成。2着は内を通ったインティライミ、3着はシックスセンスでした。
夏場休養で秋初戦が神戸新聞杯でした。単勝1.1倍で快勝。2着はシックスセンス。
迎えた菊花賞では、ついに単勝1.0倍になりました。2番人気はシックスセンスの20.7倍でした。
レースは先行馬2頭が他馬を大きく引き離し、ディープインパクトは中団追走。4コーナー手前から徐々に進出。直線に入っても粘るアドマイヤジャパンを物凄い脚でディープインパクトが追い込み2馬身差をつけて優勝。21年ぶりの3冠馬誕生の瞬間でした。それも無敗での達成でした。まさに圧巻でした。
このあと有馬記念に出走、古馬との初対決となりました。単勝人気はさすがに1.3倍つきました。2番人気は前年の覇者ゼンノロブロイ、3番人気は菊花賞馬デルタブルースでした。
レースは例によって後方からの競馬です。先行していたハーツクライが直線半ばで抜け出します。外からディープインパクトが追い込みますが半馬身届かず、初の黒星を喫しました。場内騒然としました。ハーツクライは大レースでもいいところには来ますがなかなか勝ちきれなかった馬です。前走のジャパンカップ2着から調子を上げて、ルメール騎手の好騎乗もあって生涯最高のレースをしました。
シンボリルドルフが4歳(当時の馬齢)のジャパンカップでカツラギエースの3着と初黒星を喫したのとよく似ています。
しかし、ディープインパクトの活躍は前年のゼンノロブロイの活躍(天皇賞・秋~ジャパンカップ~有馬記念の3連勝)からディープインパクトの時代への移行を予感させるレースでした。ゼンノロブロイは8着に敗れ引退しました。
明けて4歳になり、海外遠征の話も出て来ました。とりあえず、春の天皇賞を目指し、その後フランスの凱旋門賞を狙うというものでした。
始動は阪神大賞典でした。単勝1.1倍で圧勝。続いて春の天皇賞です。ここも単勝1.1倍です。2番人気はリンカーンの14.4倍でした。
レースはまたしても出遅れで後方からの競馬。しかし3コーナー手前で進出、4コーナーでは先頭に躍り出て、そのままゴールイン。2着にリンカーン。まさに圧巻のレコード勝ちでした。これによって世界統一ランキングの超・長距離部門の世界1位になりました。
そして凱旋門賞挑戦が発表され、その手土産に選ばれたレースが宝塚記念でした。1.1倍の圧倒的人気で圧勝。GⅠ5勝目でした。世界ランキング長距離部門で1位になりました。
そしてロンシャン競馬場での凱旋門賞。日本中が固唾を飲んで見守りました。
レースは意外に早め3番手につけます。ちょっと早いんじゃないかと思いました。4コーナーを回って直線に入り、一旦は先頭に立ちますが、いつもの切れ味がありません。結局後続に差されて3着入線。悔しい敗戦でした。後日ディープインパクトから禁止薬物が検出されたとして、失格処分になりました。
これでシンボリルドルフ同様、海外遠征は敗北しました。どこまでも似ている2頭です。
帰国して最初のレースはジャパンカップです。秋の天皇賞という選択肢もありましたが、間隔が短すぎるということでジャパンカップになりました。
1.3倍の1番人気に支持されました。2番人気は初黒星を喫したハーツクライでした。
レースは最後方追走のディープインパクトが直線で伸びてきて優勝。2着は内で粘ったドリームパスポート、ハーツクライは10着に惨敗しました。
そして引退レースは有馬記念です。1.2倍の1番人気。2番人気はドリームパスポートでした。3番人気は天皇賞・秋、マイルチャンピョンシップのGⅠ2勝を含む重賞3連勝中のダイワメジャーでした。
レースはアドマイヤメインの大逃げで始まり、ディープインパクトは例によって後方からの競馬。4コーナー手前で一気にスパートし直線に向いた時には先頭。直線でもグイグイ伸び他馬を引き離して圧勝。華麗なるラストランを決めました。2着はポップロック、3着ダイワメジャーでした。遂に7冠達成で、シンボリルドルフに並びました。年度代表馬も2年連続で選出されました。
有馬記念 ディープインパクト感動のラストラン 2006年有馬記念
これでディープインパクトの現役生活は終わります。
しかしこの馬の活躍はこの後も続くのです。種牡馬になってからの成績は目を見張るものが有ります。これまで数え切れないほどのGⅠ馬、重賞ウィナーを輩出しています。
ノーザンテースト、サンデーサイレンスに匹敵する成績を収め活躍中です。
これぞ正に怪物の称号に値するのではないでしょうか。
ディープインパクトの戦歴 14戦12勝 2着1回 皐月賞、東京優駿、菊花賞、天皇賞・春、宝塚記念、ジャパンカップ、有馬記念
それでは今日はこの辺で。