私がランディ・ニューマン(Randy Newman)を知ったのは、先日のフレッド・ニールと同じくハリー・ニルソンの『ハリー・ニルソンの肖像(Harry)』というアルバムでした。この中に「サイモン・セッズと踊る熊」という変わった歌があって、その作者がランディ・ニューマンでした。その後、ニルソンが『ランディ・ニューマンを歌う(Nilsson Sings Newman)』というアルバムをリリースしました。1970年でした。
当時はニルソンにぞっこんでしたので、少ない小遣いを叩いて頑張って買いました。
ランディ・ニューマンのピアノをバックに切々と歌うニルソンの抜群の歌唱力で、まるで映画館でミュージカル映画を観ているような感覚にとらわれたのを憶えています。
しかし歌詞の中身は切なくなるようなラブソングもあれば、貧しい州を憂う歌、親子間の歌、さらには東洋人を小ばかにしたような歌もあって、これは一筋縄ではいかない男だなと直感しました。
ニルソンについては先の記事を参考にして頂き、ここではランディ・ニューマンについて若干ながら書いてみたいと思います。
ランディ・ニューマンは1943年、ロサンゼルスで生まれました。父は医師。伯父、叔父にはアルフレッド、エミール、ライオネルという映画音楽の巨匠たちがいます。カリフォルニア大学で音楽を専攻し、その頃からソングライティングを始めました。友人のレニー・ワロンカーと共にリプリーズ・レコードで音楽活動をするようになり、楽曲も提供するようになりました。そして1968年にソロデビューを果たすのです。
先のニルソンのアルバムが出た後、1972年にランディ・ニューマンの4枚目のアルバム『Sail Away』が発表されました。記憶が定かではありませんが、ランディ・ニューマンのアルバムはこの前の『Live』が日本でのデビューではなかったかと思います。
ファーストの『Randy Newman』とセカンドの『12 Songs』はこの時はまだ未発売だったように記憶しています。ひょっとして記憶違いかもしれませんが。とにかく貧乏高校生ですから、他に買いたいレコードが山のようにあり、ランディ・ニューマンのレコードまでは手が回らなかったというのが実情です。
ファーストにはニルソンのアルバムに載っていた曲の中から5曲も入っています。「Love Story」「Living Without You」「So Long Dad」「Cowboy」「The Beehive State」の5曲です。また「I Think It's Going To Rain Today」はジュディ・コリンズでひっとしました。このアルバムはニルソンのアルバムのようにランディ・ニューマンのピアノとストリングスです。プロデュースはレニー・ワロンカーとヴァン・ダイク・パークスです。
セカンドには同様に1曲「Yellow Man」が入っています。さらに何といってもスリー・ドッグ・ナイトで1位になった「Mama Told Me Not To Come」が入っています。ギターにライ・クーダー、クラレンス・ホワイト(バーズ)、ロン・エリオット(ボー・ブラメルズ)、ベースにアル・マッキボン,ライル・リッツ、ドラムスにジーン・パーソンズ(バーズ)、ジム・ゴードン、パーカッションにミルト・ホランド、ロイ・ハートなどジャズ界からも参加しています。プロデュースはレニー・ワロンカーです。このアルバムはややロック色が出てきています。
そして1971年にピアノによるライブ盤をリリースします。
ここでも「ランディ・ニューマンを歌う」から5曲セレクトされ、「Mama Told Me Not To Come」も入っています。
そして1972年に『Sail Away』が発売になりました。このアルバムもしばらくしてから買ったように記憶しています。
世間では名盤と騒がれているこのアルバムにはギターでライ・クーダー、ベースにクリス・エスリッジ(元FBB)、ジミー・ボンド、ウィルトン・フェルダー、ドラムスにジーン・パーソンズ(バーズ)、ジム・ケルトナー、アール・パーマー、パーカッションにミルト・ホランド、プロデュースはレニー・ワロンカーです。
ここでは『ハリー・ニルソンの肖像』でカバーされていた「サイモン・セッズと踊る熊」が歌われています。また『ランディ・ニューマンを歌う』から「Dayton, Ohio - 1903」も入っています。この歌は1903年のオハイオ州デイトンは静かできれいでよかったと昔を懐かしむ歌のようで、現状に対する風刺が込められているような気がします。
1974年には『Good Old Boys』をリリ-スします。
このアルバムではギターにライ・クーダー、ジョン・プラタニア、ラス・タイトルマン、ベースにレッド・カレンダー、ウィリー・ウィークス、ドラムスにジム・ケルトナー、アンディ・ニューマーク、パーカッションにミルト・ホランド、ペダル・スティールにアル・パーキンス、バッキングヴォーカルにドン・ヘンリー、グレン・フレイなど豪華メンバーを揃えました。プロデュースはレニー・ワロンカーとラス・タイトルマンです。
この約2年ぶりのアルバムで、ランディは徹底的にアメリカを歌っています。特に南部人、貧困労働者に対する愛情が鋭い風刺と共に浮かび上がるようです。私の貧しい英語読解力では、理解不能ですが訳詞を読むとかなりきわどいことを歌っているようです。
それからまた3年後、第6作目、問題の『小さな犯罪者(Little Criminals)』がリリースされます。
ここでも「ランディ・ニューマンを歌う」から1曲「I'll Be Home」が入っています。
ギターにワディ・ワクテル、ジョー・ウォルシュ(イーグルス)、グレン・フレイ(イーグルス)、ベースにクラウス・ヴォアマン、ウィリー・ウィークス、ドラムスにジム・ケルトナー、アンディ・ニューマーク、リック・マロッタ、パーカッションにミルト・ホランド、マンドラにライ・クーダー、ピアノにラルフ・グリーソン、バッキングヴォーカルにJ.Dサウザー、プロデュースはレニー・ワロンカーとラス・タイトルマンです。
このアルバムの1曲目「Short People」は放送禁止歌になりました。身長の低い人間を差別・侮辱する歌だという理由でした。「ショート・ピープルには生きる理由がない」という歌詞で始まります。ショート・ピープルが身長の低い人間なのか、気持ちが小さいちっぽけ人間なのか、あるいはアジア人なのかはわかりません。ファーストでは「イエローマン」で東洋人をバカにしていましたから。それでもラストの「Old Man On The Farm」はやさしい。
2年後に『Born Again』をリリースします。
ここではギターにワディ・ワクテル、ベースにウィリー・ウィークス、ドラムスにアンディ・ニューマーク、バッキングヴォーカルにスティーヴン・ビショップとヴァレリー・カーターが参加しています。プロデュースはレニー・ワロンカーとラス・タイトルマンです。
1曲目に「この世は金次第」を持ってきて、アルバムジャケットの目玉に$マークを付けて遊んでいます。シニカルなランディの真骨頂でしょうか。
これで1970年代のランディ・ニューマンは終わります。
この後、1980年代からは血筋柄か映画音楽の方に力を入れるようになっていきます。
そんな中、1983年に久しぶりに発表されたのが『Trouble in Paradise』です。
ここではギターにディーン・パークス、ワディ・ワクテルスティーヴ・ルカサー、ベースにネーサン・イースト、ドラムスにジェフ・ポルカロ、キーボードにデヴィッド・ペイチ、パーカッションにレニー・カストロ、ピアノにニール・ラーセン、ラルフ・グリーソン、バッキングヴォーカルにポール・サイモン、リンジー・バッキンガム(フリートウッド・マック)、クリスティン・マクヴィー(フリートウッド・マック)、ボブ・シーガー、リンダ・ロンシュタッド、ウェンディ・ウォルドマン、ドン・ヘンリー(イーグルス)、リッキー・リー・ジョーンズ、ジェニファー・ウォーンズ他豪華メンバーが参加しました。プロデュースはレニー・ワロンカーとラス・タイトルマンです。
ポール・サイモンとのデュエット「The Blues」も聴けます。私の中ではこのアルバムがランディ・ニューマンのベストかもしれません。
この後はほぼ映画音楽の世界に入っていてしまいます。映画音楽の世界でも次々と傑作を送り出します。「トイ・ストーリー」シリーズや「モンスター・インク」など数多くの作品を手掛けており、アカデミー歌曲賞も獲得しています。
ランディ・ニューマンを振り返ってきましたが、彼の場合はなんといってもそのアイロニカルな歌詞に魅力があるのでしょうが、私のような英語読解力劣等生には難しいのです。訳詞で我慢しています。ただし、歌詞だけがいいのなら詩を読めばいいわけで、やはり音楽が面白くなければいけないのです。ランディ・ニューマンは歌詞が騒がれますが、曲もそれ以上に素晴らしいのです。だからたくさんのミュージシャンがカバーするのだと思います。
書き逃しがいっぱいありそうですが、頭の中がまとまりません。
ランディ・ニューマン、まだ74歳。まだまだ毒舌を頼みます。
Randy Newman - Mama Told Me Not To Come
それでは今日はこの辺で。