「ロックのいっぱい詰まったサントラ盤」を何枚か紹介したいと思います。ロックがいっぱい詰まったといっても、ロックコンサートのドキュメンタリーとかミュージシャンの伝記映画とかではなく、純粋にドラマ映画です。今日はアメリカン・ニューシネマの2本の映画のサントラ盤です。
古い作品ばかりですのでその点はご容赦願います。
1本目は映画『イージー・ライダー(Easy Rider)』です。
Side A
1.The Pusher - Steppenwolf
2.Born To Be Wild - Steppenwolf
3.The Weight - Smith
4.Wasn't Born To Follow - The Byrds
5.If You Want To Be A Bird - The Holy Modal Rounders
Side B
1.Don't Bogart Me - The Fraternity Of Man
2.If Six Was Nine - The Jimi Hendrix Experience
3.Kyrie Eleison - The Electric Prunes
4.It's Alright Ma (I'm Only Bleeding) - Roger McGuinn
5.Ballad Of Easy Rider - Roger McGuinn
映画は
監督:デニス・ホッパー
主演:ピーター・フォンダ、デニス・ホッパー、ジャック・ニコルソン
制作:1969年 アメリカ 1970年日本公開
です。
ピーター・フォンダの父は名優のヘンリー・フォンダ、姉はジェーン・フォンダ、娘はブリジット・フォンダです。
内容は、麻薬の密輸で大金を得たキャプテン・アメリカとビリーはカリフォルニアから2台のハーレーダビッドソンに乗り、途中気の合った弁護士のハンセンも同乗しニューオリンズを目指して自由な放浪の旅に出かけます。しかし、保守的な地元民はヒッピーのような恰好をした自由気ままな連中が許せません。旅の途中で弁護士のハンセンは連中に殺害され、さらに旅を続ける二人に凄惨な最後が訪れます。
音楽は『イージー・ライダー』の代名詞にもなったステッペン・ウルフ(Steppenwolf)の「ワイルドでいこう!(Born To Be Wild)」やバンド(The Band)の「ザ・ウェイト」など名曲が揃います。なおバンドの「ザ・ウェイト」は権利の関係でサントラ盤には収録されませんでした。代わりにスミス(Smith)のカバーヴァージョンが収録されています。スミスといってもあのザ・スミス(The Smith)ではありません。
その他ジミ・ヘンドリックス(The Jimi Hendrix Experience)、エレクトリック・プルーンズ(The Electric Prunes)、ホリー・モダル・ラウンダーズ(The Holy Modal Rounders)など当時のサイケデリックなバンドが登場します。
そしてバーズ(The Byrds)とロジャー・マッギン(Roger McGuinn)です。当初、エンディングはボブ・ディランの「It's Alright Ma」で決まっていましたが、ディランが試写を観てこれを断ったことによって、急遽ロジャー・マッギンが「It's Alright Ma」を歌いました。さらに「イージーライダーのバラード(Ballad Of Easy Rider)」をエンディングで流しました。この曲は後にバーズの8作目『Ballad Of Easy Rider』に新しく録音して収録されました。
バーズの「Wasn't Born To Follow」はバーズの5作目『名うてのバード兄弟(Notorious Byrd Brothers)』から、ジミヘンの「If Six Was Nine」はアルバム『Axis: Bold As Love』から、エレクトリック・プルーンズの「Kyrie Eleison」はアルバム『Mass In F Minor』からです。
残念なのはマイケル・ブルームフィールド(Michel Bloomfield)のエレクトリック・フラッグ(The Erectric Flag)の「Flash, Bam, Pow」がサントラ盤に収録されなかったことです。
ドラマ映画でこれほどロックの曲が挿入されるのは、それまでそれほどなかったのではないでしょうか。
Steppenwolf - Born To Be Wild (Easy Rider) (1969)
次の映画は『いちご白書(The Strawberry Statement)』です。
Side A
1.The Circle Game - Buffy Sainte-Marie
2.Our House - Crosby, Stills, Nash & Young
3.Market Basket
4.Down By The River - Neil Young
Side B
1.Long Time Gone - Crosby, Stills & Nash
2.Cyclatron
3.Something In The Air - Thunderclap Newman
Side C
1.Also Sprach Zarathustra (Part 1)
2.The Loner - Neil Young
3.Coit Tower
4.Fishin' Blues - The Red Mountain Jug Band
Side D
1.Concerto In D Minor
2.Helpless - Crosby, Stills, Nash & Young
3.Pocket Band
4.Give Peace A Chance
映画は
監督:スチュアート・ハグマン
主演:ブルース・デイヴィソン、キム・ダービー
制作:1970年 アメリカ
です。
この映画はアメリカ人作家のジェイムス・クネンが書いたノンフィクションの映画化です。カンヌ国際映画祭で特別審査員賞を受賞しました。
内容は、ノンポリ学生のサイモンは当時学内で起こっていた予備役将校訓練課程校舎建設反対闘争にも無関心でした。しかしある時、校内を歩いていると女性活動家のリンダと知り合います。
サイモンは彼女に惹かれ運動にも参加するようになりますが、今ひとつ本気になれません。リンダはそんな彼に嫌気がさし、彼のもとを去ってしまいます。しかし、サイモンは徐々に活動にのめり込むようになります。そして講堂に立てこもり籠城組にも参加するようになりました。
学校側は警察権力を利用し、学生を排除しようとします。そんな時にリンダが戻ってきました。ますます熱が入るサイモン。しかし権力側の弾圧は遂にバリケードを粉砕し、講堂内へとなだれ込みます。学生たちは輪になって「勝利を我らに」を合唱し床を鳴らします。警官は容赦なく学生を殴り、引きずり回します。リンダも殴られ流血します。サイモンは夢中で警官に殴りかかってリンダを助けに行きますが・・・・。
音楽の方はジョニ・ミッチェルの「サークル・ゲーム(The Circle Game)」をバフィー・セント・メリー(Buffy Sainte-Marie)がカバーして大ヒットしました。震えるような声が印象的です。
またクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング(Crosby, Stills, Nash & Young)、クロスビー・スティルス&ナッシュ(Crosby, Stills & Nash)、ニール・ヤング(Neil Young)の名曲が揃います。特に「ダウン・バイ・ザ・リバー(Down By The River)」「ヘルプレス(Helpless)」、それにクロスビー・スティルス&ナッシュのデビッド・クロスビーの「ロング・タイム・ゴーン(Long Time Gone)」がいいですね。
それと先日紹介したサンダークラップ・ニューマン(Thunderclap Newman)の「サムシング・イン・ジ・エアー(革命)」もいいです。
Buffy Sainte-Marie - Circle Game - Strawberry Statement
Fragole e Sangue (The Strawberry Statement) Down By TheRiver
Final scene of 'The Strawberry Statement' (1970)
- アーティスト: サントラ,レッド・マウンテン・ジャグ・バンド,クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング,キャスト,バフィー・セントメリー,ニール・ヤング,クロスビー・スティルス&ナッシュ,サンダークラップ・ニューマン,カール・ベーム,イアン・フリーバーン・スミス&MGMスタジオ・オーケストラ,ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 1990/07/25
- メディア: CD
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
この2本の映画はともにアメリカン・ニューシネマの代表的作品となっています。両方の作品とも反体制的行動をとる若者たちを描いています。それまでのアメリカ映画にはこのような作品は少なかったはずです。しかしその反体制的行動も最後は保守的な既成勢力に阻まれ絶望的な最期を遂げます。自由な国と言われたアメリカでも現実は革命には程遠い現実がありました。アメリカン・ニューシネマのブームは10年も続かなかったと思います。アメリカ映画はこの後、ヒーロー主義の娯楽映画へと戻っていきます。
この2本の映画を観たのは私の記憶では1970年でした。この年は私の人生にとって、分岐点になった年だったと思います。
この前年に東大安田講堂闘争が起こり敗北、1970年3月には「よど号」ハイジャック事件が起こりました。今でこそ、悪の枢軸国などと呼ばれている北朝鮮ですが、当時の革命を夢見て、打倒!資本主義を目指す学生たちにとってはキューバと並んでユートピアのような国だったと思います。
そして日米安保の自動延長決定。これによって70年安保闘争の実質的敗北。学生運動はセクショナリズム~内ゲバへと突き進みます。そしてとうとう数年後には行き場を失いセクトも崩壊の道を辿ります。
そして暮れには三島由紀夫の割腹自殺。岡林信康が暮れのライブで「ゆきどまりのどっちらけ」を歌ったのは言い得て妙でした。右も左も行き止まりでした。
まだまだ思春期も終わらない少年?が未来への希望を持とうと思う一方、虚無感と絶望感を味わい、これまでのサッカー少年の世界観が変わりました。体育会系の思想から180度変わった節目の年でした。
その後のアメリカ映画のように日本でも「いちご白書をもう一度」などという情けなく、寂しい歌が流行ったのでした。まさに「時代は変わる」のです。
話は変わりますが、それまで洋画というと西部劇ぐらいしか観ていなかったので、この「イージー・ライダー」は衝撃でした。なにしろマリファナを鼻から吸うことにびっくりしたぐらいですから、この驚きは想像に難くありません。
それと田舎町ですからロードショーなどという洒落たものはなく、必ず最低でも2本立てです。この映画と同時上映が「明日に向かって撃て」です。これは西部劇ですが、これまでの西部劇とは全く違います。これもアメリカン・ニューシネマの代表作ですが、実在のギャングの悪行と逃亡劇です。そしてこれも体制側による残虐な最期。とにかく面白い。この映画の中で
この後、市の学生映画連盟(映画はタダで観れ、会費なし)に加入し、学校さぼって映画館に入り浸りになって、映画漬けの生活になるのでした。そして難解(私にとって)な映画にはまっていくのでした。
今日は途中から思い出話になってしまいました。
今度また機会があればロックが詰まったサントラ盤の第2弾を書きたいと思います。
それでは今日はこの辺で。