手元にジョー・ヘンリー(Joe Henry)のアルバムが6枚ほどあります。彼が発表しているアルバムは15枚ですから半分にも満たないので大層なことは言えませんが、それでも十分に楽しめます。
彼の音楽は蟻地獄のようなもので、一度嵌まるとなかなか抜け出せません。しばらくは聴きっぱなしになります。それだけ不思議な魅力を持っています。
彼は一応シンガー・ソングライターでギタリスト、マルチプレイヤーですが、その音楽性は幅広いものが有ります。
私が持っているCDの中で一番リリースが古いのが1996年リリースの『Trampoline』というアルバムです。通算6作目です。
デビューアルバムが1986年ですからデビューから10年経っています。聞くところによると、以前はジェイホークスなどと関連を持ちいわゆるカントリーロックやフォークに傾倒していた時期があるようですが、このアルバムを聴く限りそのような形跡は感じられません。1曲だけカバー曲があります。スライ・ストーンの曲ですがヘヴィメタバンドのヘルメットのギタリスト、ページ・ハミルトンがギターを弾いています。ファンクっぽいヘビメタになっています。その他は自作曲ですが、ジャズや教会音楽、ドラマティックなロックなどジャンル分けなどできないほどバラエティに富んでいます。声はしわがれて押しつぶしたような声ですぐに彼と分かります。
その次は2001年から2011年までの間にリリースされた5枚です。これは連続しています。前作の後には1999年に1枚リリースしただけでした。
2001年のアルバムは『Scar』です。
ジャズミュージシャンを迎え一気にジャズ寄りになった大傑作盤です。何といってもあのフリージャズの巨匠オーネット・コールマンが参加していることです。オープニングからいきなりオーネットのアルトが響きます。
さらにブラッド・メルドーのピアノ、マーク・リボーのギター、なんともジャジーな雰囲気に包まれます。物悲しいジョーのヴォーカル。もう抜け出せません。マーク・リボーの起用でトム・ウェイツらしさが感じられてしょうがありません。
その後は2003年の『Tiny Voices』です。
トム・ウェイツも所属するANTIレーベルに移籍しました。このアルバムの前にソロモン・バークのアルバムをプロデュースし、グラミー賞を受賞しています。そちらの方面の能力も高いのです。
このアルバムもジャジーでムーディーです。ジム・ケルトナーが1曲ドラムを叩いています。
暫く間隔が空いて2007年、通算10枚目のアルバム『Civilians』をリリースします。
ヴァン・ダイク・パークスがピアノで参加しています。またギターでビル・フリッセルとギター、マンドリンでグレッグ・ライツが加わっています。
もうこれはジャズやフォーク、カントリー、ブルースなどのジャンル分けは必要ありません。ジョー・ヘンリーそのものの世界です。
2009年には『Blood from Stars』をリリースします。
再びマーク・リボーを迎えました。そしてジャズ界からピアニストのジェイソン・モランも参加しています。
いきなりそのジェイソン・モランの切なくなるピアノソロから始まります。そしてむせび泣くような息子のレヴォンのサックスにジョーのしゃがれたヴォーカルが絡んでくるジャズブルース。もう応えられません。
そして2011年に『Reverie』をリリースします。
ここでもマーク・リボー他ドラムスのジェイ・ベルローズ、ベースのデヴィッド・ピルチ、ピアノのパトリック・ウォーレンなどおなじみのメンバーが揃います。
どうしてこんなにいい曲が次々と書けるのだろうと不思議になってしまいます。
ただ一つ残念なのは、私自身の英語読解力の無さで、歌詞の内容が良く理解できません。これが理解出来たらおそらくもっと憑りつかれることになるでしょう。すべて外国盤なので訳詞がついていないのです。辞書をひきひき訳せばいいのでしょうがそこまでの元気はありません。音楽から想像するに多分に内面的なものが多くなっているとは思いますが。トム・ウェイツやランディ・ニューマンに通じるものが有ると思います。
今のところここまででストップしています。このあと今年までに3枚リリースしていますが未購入です。初期のアルバムも未購入です。それでもこの6枚でお腹いっぱいです。
聴きだしたら止められません。また当分蟻地獄に嵌るでしょう。
Joe Henry - Richard Pryor Addresses a Tearful Nation
The Man I Keep Hid - Joe Henry
それでは今日はこの辺で。