Flying Skynyrdのブログ

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映画『グッバイ・ゴダール!』を観る

今日のキネ旬シアターはグッバイ・ゴダール!でした。

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監督:ミシェル・アザナヴィシウス

原作:アンヌ・ヴィアゼムスキー

主演:ルイ・ガレルステイシー・マーティン

制作:フランス 2017年公開 2018年日本公開

 

フランスの映画監督、ジャン=リュック・ゴダールの2番目の妻である、アンヌ・ヴィアゼムスキーの自伝的小説が原作になっています。アンヌは女優であり、小説家、映画監督でもあります。母方の祖父はフランソア・モーリアックでノーベル賞作家です。

舞台は1960年代後半のパリで、ゴダールと当時の妻であるアンヌ・ヴィアゼムスキーとの日々を描いています。この映画がフランスで公開されてすぐにアンヌ・ヴィアゼムスキーは亡くなっています。彼女の映画初出演はロベール・ブレッソン監督の『バルタザールどこへ行く』でした。この映画は観たのですが彼女の印象はあまりありませんでした。

 

映画の方はというと、当時19歳だったアンヌは学生でしたが、ゴダールと出会って映画『中国女』の主役に抜擢されます。

二人はお互いに惹かれ合い結婚します。彼女にとっては哲学を学ぶ学生だった生活から一変し、新鮮で夢のような生活でした。しかし『中国女』の評判は中国でもフランスでも良くなく、ゴダールは落ち込みます。

 

時は1968年、パリでは五月革命の嵐が吹き荒れます。ゴダールも学生や労働者と共にデモや集会に参加するようになり、次第に映画よりも政治活動に傾倒するようになります。しかし、学生集会でもヤジられ、商業映画監督である自身のブルジョア反革命的存在に苛立ちを感じ始めます。

 

アンヌはプロデューサーにカンヌ国際映画祭に行こうと誘われ、出かけますが、ゴダールフランソワ・トリュフォークロード・ルルーシュアラン・レネらと共に映画祭に乗りこみ、それを中止させてしまいます。これが有名な「カンヌ国際映画祭粉砕事件」でした。その後ゴダールは「ゴダールは死んだと」宣言し、仲間と「ジガ・ヴェルトフ集団」なる映画作家の集団を立ち上げます。

 

政治活動に夢中になり、自説を曲げないゴダールは古くからの友人たちを次々に失い、孤立化していきます。アンヌはそんなゴダールが心配でなりませんが、その変貌にはついていけなくなってきます。そして女優としての話が持ち込まれ、ゴダールは自身の集団の映画に連れていきたかったのですが、彼女の意思を尊重し別々に行動することにしました。

 

アンヌは新しい撮影現場で楽しく過ごしていましたが、ゴダールから現場に来るとの電話が入ります。案の定、ゴダールは不機嫌でした。それはアンヌの浮気を疑っての嫉妬でした。そしてアンヌを激しく詰ります。そして「情けない女優に成り下がった」と批判します。もはや以前の二人ではありません。

 

アンヌは別れを決意し、朝、家を出ようとしてゴダールに声をかけますが、返事がありません。ゴダールは自殺を図っていたのです。何とか一命は取り留めますが、アンヌはそんなゴダールが許せず、気持ちはもう元には戻りません。そしてジガ・ヴェルトフ集団の映画『東風』に参加はしますが途中で離婚します。

 

場面は『東風』の撮影現場。ジガ・ヴェルトフ集団はなんでも話し合いで決めるというのがルールです。いわゆる民主化です。映画の撮影方法・進行もスタッフ、俳優たちが意見を出し合い、最終的には多数決で決めます。その日はゴダールが撮影の進行について意見を主張しますが、他の人達は納得しません。ある女性が「革命をとるのか、独裁をとるのか。つまりは政治と映画どちらを選ぶの?」と問われます。ゴダールは力なく「多数決に従うよ」と答え、映画は終わります。

 

ゴダールとアンヌが実際に離婚したのは1979年となっていますが、事実上は1972年には別居しています。この頃ゴダールには新しい恋人がいました。それが今の奥さんです。

この映画はゴダールの映画監督としての姿を描いたというよりは、男と女の愛憎劇と言った方がいいかもしれません。それをコミカルなタッチで描いたものです。

 

実際のゴダールがこんなに嫉妬深い男だったのかは分かりませんが、最初の妻であるアンナ・カリーナとの破局はどんなものだったのか、興味深いです。革命を本気で目指したゴダールが男尊女卑で、映画俳優を馬鹿にし、妻への嫉妬にもだえ苦しむというのは以外でした。本当かどうかは判りかねますが。

やっぱり私はアンナ・カリーナが好きだった。関係ないですね。

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私も学生時代はゴダール映画の虜になった一人です。特に60年代後半からの映画は政治色の強い映画で、表現方法も独特で、字幕も長く、難解なものが多く、理解するのに一苦労でしたが、それが一つの楽しみにもなっていました。

 

映画『中国女』は中国の文化大革命を題材にした映画で、政治色が前面に出た映画です。毛沢東語録の朗読や革命についての議論などが繰り広げられた映画だったと記憶しています。その中で革命を志す哲学科の女子大生の役を演じたのがアンヌでした。このアンヌもアンナ・カリーナに負けず劣らず魅力的な女優でした。主演のステイシー・マーティンは実物のアンヌとはだいぶ違っていますが、魅力的な女優でした。

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この頃にゴダールは商業映画との決別宣言を行っています。映画の中でも自分のこれまでの作品をクソ呼ばわりしています。ゴダールが商業映画に復帰するのは1979年の『勝手に逃げろ/人生』からです。

 

この198年という年は日本でも革命の嵐が吹き荒れた年です。日大闘争、東大闘争などの全共闘運動が盛んになり、全国の高校・大学に飛び火し、日本中が革命の嵐の中に巻き込まれていきました。街映画界も日本では大島渚吉田喜重、海外ではゴダールなどの政治的映画が学生の間でもてはやされました。

 

今日の映画でも1968年のパリのデモ・集会を再現した場面がいくつも出て来ましたが、今の時代にこれらを再現されると、何か渋谷のハロウィンの騒ぎを観ているようで、時代の移り変わりを痛切に感じざるを得ませんでした。当たり前ですね、あれから50年ですから。ここは当時の映像を観たかったですね。

 

それでもこの映画は色使い、ショット、ナレーションの多用などゴダール映画に対するオマージュがあちこちで感じられました。 

ゴダールは現在87歳、まだまだ血気盛んなようです。今の3人目の奥さんはアンヌ=マリー・ミエヴィルでやはり映画監督・脚本家です。ゴダールの「ジガ・ヴェルトフ集団」で活動時に知り合っています。この人とは45年も続いていますから、生涯離れることはないでしょう。

ゴダールはこの映画を観たのでしょうか。観たとしたらどんな感想を持ったのでしょうか、興味があります。

 

余談ですが、一つ驚きがありました。それは男性の性器が無修正で出て来ます。女性もヘアヌードです。 あれっ、この映画ってR指定だったかなと思ったら、R15でした。

 


【公式】『グッバイ・ゴダール!』7.13公開/本予告

 

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それでは今日はこの辺で。