昨日のゾンビーズで思い出した、懐かしいバンドを。
「ビコーズ」の大ヒットで日本でも有名になった、ブリティッシュ・インヴェイジョンを代表するバンド、デイヴ・クラーク・ファイヴ(Dave Clark Five、以下DC5)はロンドン北部のトッテナムで1962年にデイヴ・クラーク(Dave Clark,ds)を中心に結成されました。
しかし、元をたどればもっと古く、デイヴ・クラークは1958年にはリック・ハクスレイ(Rick Huxley,b)とデイヴ・クラーク・ファイヴを結成していました。ただ、バンドも売れず、メンバーも入れ替えが激しく、一時期は解散の危機に直面していました。
そんな時別なバンドで活動していたマイク・スミス(Mike Smith,vo)とレニー・デヴィッドソン(Lenny Davidson,g)を誘い、さらにデイヴ・クラークの友人、デニス・ペイトン(Denis Payton,sax)に声をかけ、不動のメンバーが揃いました。
こうして1962年にDC5はパイレコード傘下のピカデリーと契約を結び、2枚のシングルを発表しますが、これが売れません。そしてパイレコードから契約を打ち切られます。
しかし、コロムビアレコードとの契約が成立し、1963年にシングル「The Mulberry Bush」もチャートインを果たせなかったものの、続く「Do You Love Me」は全英で30位とまずまずのヒットとなりました。
続く「Glad All Over」は全英で1位、全米でも6位となる大ヒットとなりました。この曲はビートルズの「抱きしめたい」を抜いたのでした。これで世間は「ビートルズにライバル現る」と騒ぎたてました。そして1964年のシングル「Bits and Pieces」も全英で2位、全米でも4位となる大ヒットを飛ばし、イギリスのみならずアメリカでの人気も高まりました。
母国イギリスではリバプール・サウンドに対しトッテナム・サウンドと名付けてもてはやしました。マイク・スミスのソウルフルなヴォーカルや珍しい管楽器の導入で重々しいサウンドはビートルズに対抗するに十分なものが有りました。
そして1964年にはビートルズに先立ってアメリカに渡りました。「エド・サリバンショー」にも出演し、アメリカにおいての絶大なる人気を獲得しました。その後も「Can't You See That She's Mine」「Any Way You Want It」「Catch Us If You Can」「Because」とアメリカでのヒットを飛ばし続けます。そして1965年にはとうとう「Over and Over」で初の全米1位に輝きました。アメリカから撤退するまでにビルボードトップ40に17曲もランクされるという人気でした。
しかしその後は、アメリカでのヒットも1967年の「You Got What It Takes」が7位に入った以降は徐々に低迷していきます。そして「Everybody Knows」を最後にチャートインする曲は生まれませんでした。DC5は再び活動の場をイギリスに移しました。
これはデビューからのDC5の音楽性はサックスをフューチャーした重厚なサウンドが特徴でしたが、しだいにヒットを狙ってか、よりポップな曲作りに変わっていきました。
しかしアメリカではすでにサイケデリック・ロックやフォークロックなど、シングル志向からアルバム志向へと時代が変わりつつありました。その流れにDC5は乗り切れなかったのでしょう。
1970年の「More Good Old Rock 'n' Roll」を最後に、これ以降イギリスでもベスト100に入る曲は生まれませんでした。
こうしてDC5は1970年に解散します。デイブ・クラークとマイク・スミスは新しいメンバーを加えデイヴ・クラーク・ファイヴ&フレンズを名乗って1973年まで活動しますがその後解散します。
今私の手元には、1960年代後半に日本編集盤として出されたベスト盤があります。
『The Dave Clark 5 Deluxe』 東芝Odeon盤です。
Side A
1.グラッド・オール・オーバー
2.ビコーズ
3.ドゥ・ユー・ラヴ・ミー
4.オーバー・アンド・オーバー
5.若さをつかもう(Catch Us If You Can)
6.ビッツ・アンド・ピーセス
7.リーリン・アンド・ロッキン
Side B
1.青空の恋(You Got What It Takes)
2.青空がちょっぴり(A Little Bit Now)
3.ビューティフル・ベイビー
4.ナインティーン・デイズ
5.忘れ得ぬ君(When)
6.マルベリー・ブッシュ
7.目かくしの恋(Look Before You Leap)
いかにも昔臭いジャケットです。
解散後、デイヴ・クラークはバンドの原盤管理を厳重に行い、1993年まで編集盤や再発盤を認めませんでした。従って、彼らの業績を伝える手段はありませんでした。ようやく1993年になって、ハリウッドレコードから2枚組CD『History of the Dave Clark Five』が発売されました。これでやっとあのトッテナム・サウンドが世に聞かれるようになりました。
しかし、その後も2008年にユニバーサルが『The Hits』を発売するまで正規盤は発売されませんでした。これがDC5が今ひとつ評価があがらなかった原因かもしれません。
1960年代半ば頃にはビートルズと並び称されるまでになっていたDC5、その後の明暗は厳しいものが有りました。
デイヴ・クラーク・ファイヴThe Dave Clark Five/ビコーズBecause (1964年)
Dave Clark Five - Glad All Over (original video 1963)
Dave Clark Five - Do You Love Me
The Dave Clark Five - Over And Over
話は変わって、一昨日、昨日と続けて東西の往年のスターの訃報が入ってきました。
まず、アメリカのジャズシンガーであり女優であるドリス・デイ(Doris Day)です。97歳でした。
「ケ・セラ・セラ」のヒット曲で有名です。「センチメンタル・ジャーニー」の大ヒットでも知られています。また映画女優としてもアルフレッド・ヒットコック監督の『知りすぎていた男』でジェイムス・スチュワートと競演しました。「ケ・セラ・セラ」はその映画の挿入歌でした。当然後追い観ですが、ヒッチコック映画にハズレはありませんでした。今日、久しぶりにドリス・デイのアルバムを引っ張り出して聴きました。
続いて昨日、世界の女優と言っても過言ではない京マチ子さんの訃報が報道されました。95歳でした。
私など、当然彼女の若い頃は知りませんが、後追いで観た黒澤明監督の『羅生門』と溝口健二監督の『赤線地帯』は忘れられません。その他多くの映画で楽しませてもらいました。何度も映画化された『痴人の愛』は彼女が最初のヒロインでした。その艶っぽさは何とも言えませんでした。
お二人とも、戦前戦後を通して活躍された大スターでした。またもや昭和は遠くなりました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
それでは今日はこの辺で 。