先日のキネ旬シアターは『風に立つ愛子さん』でした。

監督:藤川佳三
出演:村上愛子
製作:2024年 日本
東日本大震災で自宅を失った女性を追ったドキュメンタリーです。
監督の藤川佳三は2012年公開のドキュメンタリー『石巻市立湊小学校避難所』で知り合った村上愛子さんの明るさに魅了され、8年間にわたって彼女の取材を始めました。
69歳の村上愛子さんは大震災の津波で石巻市の自宅を失いました。避難所や仮設住宅で7年間の共同生活の後、復興住宅で独り暮らしを始めます。

津波に遭うまでは天涯孤独な生活をしていましたが、避難所で多くの人と出会い、それまでに味わったことのない幸せを感じたのでした。彼女曰く『津波様』だったのです。

その後仮設住宅に移っても近所付き合いは続いて、孤独を感じることはありませんでした。

ところがマンション造りの復興住宅に引っ越すと近所付き合いはなくなり、再び孤独な生活に戻ってしまいました。
そしてわずか半年後に愛子さんは亡くなってしまったのです。

津波によって家を失う代わりに人との関わりで幸せを手に入れました。しかし、立派な住まいを手に入れると孤独に見回れてしまったのです。なんとも皮肉な結果が待ち受けていました。
高齢者の孤独、そして孤独死の実態を見せられた気がしました。ラスト近く愛子さんが「思い出なんかいらない!」と泣き叫ぶ姿が忘れられません。
それでは今日はこの辺で。