Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

この人の、この1枚 『ハングリー・チャック(Hungry Chuck)/ハングリー・チャック(Hungry Chuck)』

今日のこの1枚は『ハングリー・チャック』です。この1枚といっても、この1枚しかありません。幻のグループ、幻のアルバムと騒がれました。

「ハングリー・チャック」の母体はカナダのデュオ、「イアン&シルビア」が結成したバンド「グレイト・スペックル・バード」だと言われています。しかしながら、そう単純でもない人間関係があったようです。

メンバーは

N.D.スマート2世(N.D.Smart Ⅱ,vo,ds)

ピーター・エックランド(Peter Ecklund,horn)

ジム・コルグローブ(Jim Colegrove,vo,b)

ベン・キース(Ben Keith,pedal steel,vo)

エイモス・ギャレット(Amos Garrett,g,vo)

ジェフリー・ガッチョン(Jeffery Gutcheon,key,vo)

です。

これにゲストメンバーとして

ポール・バターフィールド(Paul Butterfield,harp)

ガース・ハドソン(Garth Hudson,sax)

ジェフ・マルダー(Jeff Muldaur,clarinet)

キッド・シャリーン(Kid Shaleen,g) 

が加わります。

 

1972年にアルバム『Hungry Chuck』がリリースされます。

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Side A

1.Hat's Off,America!

2.Cruising

3.Old Thomas Jefferson

4.Play That Country Music

5.Find The Enemy

6.People Do

 

Side B

1.Watch The Trucks Go By

2.Dixie Highway

3.You Better Watch It Ben,Someday You're Gonna Run Out Of Gus

4.Hoona Spoona

5.All Bowed Down

6.South In New Orleans~Doin' THe Funky Lunchbox

 

A-1 スイングジャズ風のイントロからデキシーランドジャズの雰囲気もある曲。

A-2 エイモス・ギャレットの哀愁のあるギターが聴きもの。N.D.スマートのヴォーカルは素晴らしい。

A-3 これもジャズ風ナンバー。リードヴォーカルが3人いるのも面白い。

A-4 カントリーナンバー。ベン・キースのペダル・スティールが聴きもの。

A-5 ジェフ・ガッチョンの曲が大半を占めますが、これはN.D.スマートの曲。

A-6 珍しくロックらしいロック。ギターがキッド・シャリーンのソロとなっていますが、エイモス・ギャレットの変名だとのことです。

B-1 カントリーロック調の軽快な曲。素晴らしい。

B-2 これもベン・キースのペダル・スティールがいいです。

B-3 これはN.D.スマートの遊び曲。

B-4 これはB-1同様Joe Hutchinsonの曲。

B-5 デキシ―ランド風ジャズナンバー。よれよれのだれた感じがいい。

B-6 カントリーナンバー。ボビー・チャールズが「ラスト・ワルツ」で歌った曲で す。

 

いかにもウッドストックのミュージシャン達の音楽という感じです。このあと2枚目のアルバム制作の話もあったようですが、エイモス・ギャレットがポール・バターフィールドの「ベター・デイズ」に参加するため途中で脱退、後任を入れてレコ―ディンを終えるも、前作の売れ行きが芳しくなく、新作はお蔵入りとなってしまいます。

ウッドストック周辺のミュージシャンの人脈は複雑で、ザ・バンドの連中ポール・バターフィールド、ボビー・チャールズ、ジェフ&マリア・マルダー、エイモス・ギャレット、マッド・エイカーズの面々・・・・きりが無く広がって行きます。

 

このアルバムも以前紹介した、「ボビー・チャールズ」や「フィフス・アヴェニュー・バンド」と同様、ワーナー・パイオニアの「ロック名盤復活シリーズ」の第2弾として1970年中頃に発売されたものです。

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Hungry Chuck - Cruising.


Watch the Trucks Go By - Hungry Chuck(1972)

 

それでは今日はこの辺で。

映画『彼女がその名を知らない鳥たち』を観る

今日のキネ旬シアターは彼女がその名を知らない鳥たちでした。

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監督:白石 和彌

主演:蒼井優、阿部 サダヲ、松坂 桃李、竹野内 豊

制作:日本 2017年公開

原作:沼田まほかる

 

監督は『凶悪』を撮った人で、若松孝二の弟子です。

原作は今や真梨幸子湊かなえなどと並んでイヤミスの女王と呼ばれる女流作家です。

この人の作品は、文庫本になっているものはすべて読んでいます。何故かイヤミスに嵌ってしまった頃に、真梨幸子などと共に夢中になって読みました。もちろんこの『彼女がその名を知らない鳥たち』も読んでいます。

 

ということでこの映画を観るのはちょっとためらいました。何故かというと、このての映画(推理、ミステリー等)は大体において原作には及ばないというのが私の長年の経験に基づく感想です。

それでもせっかく会員になっているので観てみるかと思い出かけました。結論から言うと、案の定危惧した通りでした。

まるで小説のダイジェスト版を観ているような気分になりました。これが原作を読んでいなければ結構楽しめたと思います。

ただ原作を先に読んでしまっていると、結末は判っていますので、あとはどのような色付けがなされているかということに興味が湧くのですが、原作に忠実すぎたのと、原作での登場人物の気色悪さが残念ながら映画では感じられませんでした。

 

ストーリーはさすがにミステリーなのでネタバレしない程度に書きます。

十和子(トワコ 蒼井優)は何の取柄もない、不潔で下品な男、陣治(ジンジ 阿部サダヲ)と同居生活を送っています。生活費はすべて陣治が負担し、十和子は何もせず悶々とした生活を送っています。

十和子は8年前に別れた恋人、黒崎(竹野内豊)のことが忘れられません。彼にもらった思い出の腕時計が故障してしまったので、百貨店内の時計店に修理するよう頼んでいますが、修理不可能と断られます。それでもなんだかんだでクレームをつけて店員を困らせています。

時計店の主任、水島(松坂桃李)がお詫びにと代わりの時計を持って訪ねてきます。彼に黒崎の面影を見出した十和子は一目惚れしてしまいます。そしてすぐに二人は深い関係になります。

夜の外出が増えた十和子に対し、陣治は心配して十和子の姉に相談します。姉は黒崎とのよりを戻したのかと問い詰めますが、陣治は「それはありえない」と強く否定します。姉はその返答に異和感を持ちます。

翌日、警察が十和子を訪ねます。黒崎が5年前から疾走して行方不明だというのです。十和子は驚き、黒崎の妻に会いに行きます。そこで、黒崎の妻の叔父に出会います。その叔父というのは、かつて黒崎に頼まれ身体を売った相手なのです。

黒崎には必ず結婚するから、この国枝という金持ちの老人と一度だけ寝てくれと頼まれたのです。止む無くその通りにした十和子でしたが、その後黒崎に国枝の姪と結婚するから別れてくれと言われます。つまり騙されていたのです。

十和子は妻になる女に全部ばらしてやると黒崎を脅しますが、逆に滅多打ちにされ重傷を負います。そのような過去があったので姉は黒崎とよりを戻すことを心配していたのです。

一方水島の身辺にも不思議な出来事が起こり始めます。水島は同居人の男があやしいと十和子に話します。十和子は陣治を問い詰めますが、逆に陣治はあの男に騙されているのだから、付き合うのは止めろと言います。そして「またえらいことになる」と訴えます。しかし十和子は言うことを聞かず水島にのめり込んで行きます。やがて水島の態度が変わって来ます。そして十和子の脳裏に様々な過去の出来事が思い出されてきます。

 

ほぼ原作通りの展開です。現在と過去の描写の順番が多少異なってはいますが。陣治の最後のセリフなどは原作の通りでした。

原作の陣治はもっともっと気色悪い男でしたが、阿部サダヲ演じる陣治は気色悪さを出そうとしてはいますが、人のいいオッサンになってしまっているます。

 

以前の記事で小説を映画化するのは難しく、全く別物として捉えなければ映画の独自性というものが出て来ないというようなことを書いた気がしますが、あらためて推理小説やミステリーを映画化するのは難しいということを感じました。推理・ミステリーはストーリー性が最も重要な部分であり、そこが事前にわかってしまっていると、他に何を上乗せするかということになってしまいます。そこが純文学等を映画化した文芸作品とは違う難しさがあるのではないでしょうか。

 

文芸作品ですと、その小説の捉え方は、脚本家なり監督なりの感じ方で小説とは全く違うものが出来上がるということはよくあることで、それが映画の良さでもあり、楽しさでもあります。もっともそんなことを映画に求めている人がどれだけいるかという事なのでしょうが。これは私の個人的な映画の鑑賞方法なのでご勘弁願います。

 

この監督の作品『凶悪』は原作がノンフィクションでしたが、こちらは原作も読みましたが原作とはまた違う映画独特の面白さがありました。これは元がノンフィクションという、ドキュメンタリー風でありながらもドラマ性を持った娯楽映画としての魅力も十分に見せてくれた結果でしょう。リリー・フランキーピエール瀧が良かったです。

 

沼田まほかるの作品は、この他にも『ユリゴコロ』が映画化されています。これも原作は面白いです。

やはり、推理・ミステリーは小説か映画かどちらかにしようと思います。

 

 

ちなみに『殺人鬼フジコの衝撃』の映画は観ていません。

 


彼女がその名を知らない鳥たち (2017) 映画予告編

 

それでは今日はこの辺で。

この人の、この1枚 『ハミングバード(Hummingbird)/ダイヤモンドの夜(Diamond Nights )』

昔昔、ハミングバードというバンドがありました。

第2期ジェフ・ベック・グループを解散させたジェフ・ベックですが、残ったメンバーは「別にベックがいなくてもいいじゃん」といった感じで、新しくバンドを立ち上げまっした。それが『ハミングバード』です。1973年のことでした。

当初のメンバーは

マックス・ミドルトン(Max Middleton,key)

ボブ・テンチ(Bob Tench,vo,g)

クライブ・チャーマン(Clive Chaman,b)

ジェフ・ベック・グル-プのメンバーに

コンラッド・イサドア(ds)バーニー・ホランド(g)が加わって結成されました。

 

1975年にファーストアルバムを発表した後、ドラマーのコンラッド・イサドアが脱退、替わりに大物バーナード・パーディ(Bernard Purdie,ds)が加入、1976年のセカンドアルバム後にバーニー・ホランドが脱退、替わりにロバート・アーワイ(Robert Ahwry,g)が加入します。

そして1977年にラストアルバムとなる『Diamond Nights』を発表します。

ハミングバード』といえば当然セカンドアルバムの『We Cant Go on Meeting Like This (密会)』が名盤として有名ですが、ここはあえてラストアルバムにしました。

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Side A

1.Got My "Led Boots" On

2.Spirit

3.Cryin' For Love

4.She Is My Lady

5.You Can't Hide Love

 

Side B

1.Anaconda

2.Madatcha

3.Losing You (Ain't No Doubt About You)

4.Spread Your Wings

5.Anna's Song

 

A-1はジェフ・ベックがすでに『Wired』で発表済みの、マックス・ミドルトンの曲です。これにブライアン・ショートが詩をつけて見事なソウルナンバーに仕上がっています。ここでのボブ・テンチのヴォーカルはソウルフルでスティーヴィー・ワンダーを思わせます。

A-2になるとガラッと変わってバラードナンバー。女性コーラスをふんだんに。

A-3はファンキーなナンバー。

A-4もバラードナンバー。こういう曲のボブ・テンチも素晴らしい。

A-5はスキップ・スカボローの曲で、アース・ウィンド&ファイアーがヒットさせています。

B-1はクロスオーバー風ナンバー。

B-2はファンキーなソウルナンバー。

B-3は再びバラードナンバー。ボブ・テンチはうまい。

B-4はクロスオーバー、フュージョンです。

B-5は静かな美しい曲で締めくくります。

 

ロック、ソウル、ジャズ、ファンクなんでもありで、第2期ジェフベックグループにその芽があったようです。インストナンバーが半分に減って2曲だけになりました。

このころ『スタッフ』をはじめフュージョン・バンドが数多く出て来ました。『ハミングバード』もそれに近い音楽をやっていましたが、結局3枚のアルバムを残し解散してしまいます。このアルバムが発売されたときには、まだまだバンドは続くようなことが書いてありましたが、当初の予想どうり短命に終わりました。一つのバンドを長続きさせるというのはやはり至難の業なのでしょう。

なお、『ハミングバード』のファーストとセカンドは次の通りです。

 

 

 


Hummingbird - Got My "Led Boots" On


Hummingbird - She Is My Lady

 

それでは今日はこの辺で。

サンダー(Tunder)を超えて 『ボウズ&モーリー(Bowes & Morley)』

伝統的なブリティッシュ・ハードロックを継承してきた『サンダー』が1999年に解散を表明した後、ヴォーカリストダニー・ボウズ(Daniel Don Bowes)リードギタールーク・モーリー(Luke Morley)が2002年にデュオを結成しアルバムMoving Swiftly Alongをリリースします。

ルーク・モーリーはこの前にも自身のソロアルバムをリリースしていますが、やはりヴォーカルにはダニー・ボウズが必要とデュオを組んだようです。

このアルバムではダニーのソウルフルな素晴らしいヴォーカルが堪能できます。『サンダー』の時のハードロックとは違って、R&B、ソウル的なアルバムになっています。

ダニーのお影響を受けたアーティストとして、ポール・ロジャース、スティーヴィー・ワンダーボニー・レイットなどをあげていますが、やはりブルースやソウル、R&Bがその根底にあるようです。私などはついボズ・スキャッグスを思い浮かべてしまいます。

曲作りは大半がルークです。9曲目の「Change」はルークと「ヨーロッパ」のジョーイ・テンペストの共作となっています。全体を通してルークはこういう曲を作りたかったんだ、ということがよくわかります。ダニーもこういう曲を歌いたかったんだということもよくわかります。

 

この後、ダニーが「MONSTERS OF ROCK」の復活を提案したところ、逆にプロモーターから「サンダー」の再結成が条件だと言われ、ダニーがメンバーに連絡すると、全員快諾し再結成が決まります。

2003年には『サンダー』の再結成アルバムShooting at the Sunがリリースされます。

  『ボウズ&モーリー』と『サンダー』の並行活動になります。

そして、2004年にはセカンドアルバムMo's Barbequeをリリースします。

このアルバムでは、ダニーが尊敬するスティーヴィー・ワンダーとポール・ロジャース(フリー時代)の曲がカバーされています。

前作同様、R&B、ソウル路線です。前作では若干『サンダー』の影響も見られましたが、本作は完全に独立したバンド然としています。

特にフリーの『Come Together In the Morning』は私の大好きな曲で、この曲のために購入したといってもいいくらいなのですが、ダニーの歌い方は気負わずに自然な歌い方でとてもいいし、ルークのギターもポール・コゾフとはまた違った泣きのギターで大満足です。

ジャジーな3曲目「On A Day Like Today」、バラード風な「Illogical」も素晴らしいです。エンディングはアン・ピープルズの「I Can't Stand The Rain」です。ソウルナンバーでしっとりと、やがて盛り上がり、エンディングにふさわしいナンバーになっています。

 

結局、 『ボウズ&モーリー』としてのアルバムは、今のところこれが最後となっています。是非、新録を期待しています。

 

『サンダー』の方は最近のアルバムは聴けていません。

『サンダー』と言えば私にとっては『Backstreet Symphony』、『Laughing on Judgement Day 』、『Behind Closed Doors』の3枚でしょうか。

3枚とも見事にブリティッシュ・ハードロックを継承しています。ダニーのヴォーカルもここではハードロック用です。

 

  

 


Bowes & Morley - Come Together In The Morning


On A Day Like Today - Bowes & Morley

 

それでは今日はこの辺で。

この人の、この1枚 『ドクター・ジョン(Dr.John)/ガンボ(Gumbo)』

ニューオリンズ・ミュージックを世界に知らしめた男、ドクター・ジョンことマック・レベナック(Mac Rebennack)が1972年に発表したアルバムが『Gumbo』です。

彼の経歴は古く、1950年代からギタリストとして活躍していましたが、指を怪我してピアニストに転向します。

1967年に衝撃的なアルバム『Gris,Gris(グリ,グリ)』でソロデビューします。それまではニューオリンズスタジオミュージシャンとして、ニューオリンズの一流ミュージシャンとの交流の機会を得ています。ブードゥー祈祷師の仮面をかぶり、怪しげな雰囲気でブードゥー教文化を背景にした音楽で、世間を驚かせましたが、当時の評価は芳しくありませんでした。

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しかし、後になってイギリスのミュージシャン連中の間で評判となり1971年にはエリック・クラプトンミック・ジャガー、グラハム・ボンド、ボビー・ウィットロック、ボビー・キース、ジム・ゴードン、ウォルター・デイヴィス、ジム・プライス等々の錚々たるメンバーが参加しての豪華なアルバム『 Sun, Moon & Herbs』を発表します。

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しかし、このアルバムもあまり芳しい評価ではありませんでした。

 

そして1972年に今日取り上げた『Gumbo』が発表されます。

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Side A

1.Iko Iko (James "Sugarboy" Crawford)

2.Blow Wind Blow (Huey Smith & Izzy Cougarden)

3.Big Chief (E. Gaines)

4.Somebody Changed The Lock (Mac Rebennack)

5.Mess Around (Ahmet Ertegun)

6.Let The Good Times Roll (E. Johnson)

 

Side B

1.Junko Partner (Bob Shad)

2.Stack-A-Lee (Traditional)

3.Tipitina (Roy Byrd)

4.Those Lonely Lonely Nights (Earl King & Johnny Vincent)

5.Huey Smith Medley

    1.High Blood Pressure (Huey Smith & Johnny Vincent)

    2.Don't You Just Know It (Huey Smith & Johnny Vincent)

    3.Well I'll Be John Brown (Huey Smith & Johnny Vincent)

6.Little Liza Jane (Huey Smith & Johnny Vincent)

 

A-1はジェイムス・クロフォードというニューオリンズの歌手によって書かれた曲。

A-2はスパイダースのジュニア・イズィクー・ゴードンの曲。ニューオリンズでの大 ヒット曲。

A-3はプロフェッサー・ロングヘア―によってヒットした曲でアール・キングが彼のために書いた曲。

A-4はドクター・ジョンの唯一のオリジナル。1960年頃に書いた曲。

A-5はアーメット・アーティガンがレイ・チャールズのために書いた曲。

A-6はニューオリンズの有名な曲で、たくさんの人がカバーしている。ジミ・ヘンもその一人。ドクター・ジョンが珍しくギターを弾いています。

B-2はアーチボールドでヒットした有名な曲。

B-3はプロフェッサー・ロングヘア―で有名な曲。

B-4はアール・キングの曲。ジョニー・ギター・ワトソンもヒットさせています。

B-5はヒューイ・スミスのヒットメドレー。

B-6もヒューイ・スミスの曲。

 

このように、すべてニューオリンズの古い曲を取り上げて、現代に復活させています。

本人が語っているようにニューオリンズ・ブルースとストンプ・ミュージックを基に、デキシーランド・ジャズを少し、スパニッシュ・ルンバ・ブルースがいくらかあって、ブードゥーはない。デキシーランド、ロックンロール、ファンクが交じり合って出来上がったアルバムです。

ドクター・ジョンのだみ声と跳ねるようなピアノ、初めは違和感がありますが、聴いているうちに病みつきになります。

ニューオリンズ・ミュージックがこの後ロック界に与えた影響は大きいものが有りました。

ドクター。ジョンはマック・レベナックの名前でも数多くのミュージシャンのレコーディングに参加しています。

1973年にはジョン・ハモンドとマイク・ブルームフィールドとの『三頭政治』を発表しています。

また1976年にはザ・バンドの映画『ラストワルツ』にも出演しており、その雄姿を見ることが出来ました。

 

2013年にはアルバム『Locked Down 』で最優秀ブルース・アルバム賞を受賞、6度目のグラミー賞受賞を果たしています。

 

現在76歳、化け物のような人です。まだまだいけるでしょう、頑張ってください。

 


Dr. John - Iko Iko (Gumbo)


Dr. John - Let The Good Times Roll (Studio)

それでは今日はこの辺で。

『ラヴ・スカルプチャー(Love Sculpture)』~『デイヴ・エドモンズ(Dave Edmunds)』

デイブ・エドモンズは1944年、イギリス・ウェールズカーディフの生まれです。作詞作曲、ヴォーカル、ギタリスト、プロデューサーで1960年代から活躍し、70年代以降はパブロックやニューウェイヴに大きな影響を与えた人です。

1968年にジョン・ウィリアムス(John Williams,b,vo,p)ボブ・ジョーンズ(Bob"Congo"Jones,ds,vo)と共に『ラヴ・スカルプチャー(Love Sculpture)』を結成します。

そしてファーストアルバム『Blues Helping』を発表します。

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これは完璧なブルースアルバムです。大好きです。フレディ・キング、B.B.キングレイ・チャールズエルモア・ジェイムス、フロイド・ジョーンズ、ジミー・ジョンソン、ウィリー・ディクソンなどのカバーで埋め尽くされ、白人ブルースの極致です。その中にガーシュインの「Summertime」が入ったりしてジャズの趣もあって最高です。

 

1970年にはセカンドアルバム『Forms & Feelings』をリリースします。

この中ではハチャトリアンの『剣の舞』やビゼーの『ファランドール』などクラシックをロックにアレンジして演奏しています。『剣の舞』はヒットしました。前作とは打って変わって当時でいうところのアートロックになっています。

 

ここでデイブ・エドモンズはあっさりと『ラブ・スカルプチャー』を解散してソロに転向します。そしてスマイリー・ルイスの「I Hear You Knocking」をカバーしたシングルが大ヒット、アメリカでも大ヒットします。

1972年にこのヒット曲を含むアルバム『Rockpile』をリリースします。

ここには「ラブ・スカルプチャー」のジョン・ウィリアムス、ペダル・スティールでB.J.コール、ギターでアンディ・フェザー・ロウ、ドラムスでテリー・ウィリアムスが参加していますが、ほとんどはデイヴ・エドモンズが手掛けています。

ニール・ヤングボブ・ディランチャック・ベリー、ジェイムス・バートンをカバーしています。ノリノリのロックアルバムです。

 

一方プロデュース面でも活躍し、ニック・ロウのプリンズレイ・シュウォルツなどのプロデュースを手掛けています。

 

そして1976年にはニック・ロウ、テリー・ウィリアムス、ビリー・ブレムナーと共に「ロックパイル」を結成します。

1980年にアルバム『Seconds of Pleasure』をリリースします。

 ここではジョー・テックスやチャック・ベリーをカバーしています。

 

翌年には解散し、「ロックパイル」名義ではこの1枚だけになりました。

 

その後もデイヴ・エドモンズはソロ活動、プロデュースと活躍しました。さすがに近年の活動は耳にしませんが、元気で頑張っていることと思います。73歳です。

 

当時(1970年代前半)はデイヴ・エドモンズやラブ・スカルプチャーのレコードが入手しづらく苦労した思い出があります。どうしても昔の音源が聴きたくて随分探しました。1970年代後半にもなると結構コンピレーション物が出てきて助かりました。

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だいぶ後になってからですがこんなものまで買ってしまいました。別に目新しい未発表音源が入っているわけでもないのに、正気の沙汰ではありません。

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才能あふれる人というのは、やっぱりいるんですね。

 

全く違う音楽が聴けます。


Dave Edmunds - I hear you knocking ( Original Footage 1970 High Quality )

 


Farandole - Love Sculpture

 


Dave Edmunds & Love Sculpture - Come Back Baby

それでは今日はこの辺で。

映画『ル・アーヴルの靴みがき』を観る

昨日のキネ旬シアターは『ル・アーヴルの靴みがき』でした。

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監督:アキ・カウリスマキ

主演:アンドレ・ウィルム、カティ・オウティネン、ジャン=ピエール・ダルッサン

制作:フィンランド、フランス、ドイツ、2011年公開(日本 2012年)

 

フランス北西部ノルマンディー地方の港町ル・アーヴルが舞台です。この町でベトナム移民のチャングと共にすでに老境の身ながら靴磨きで生計を立てているマルセル・マルクスアンドレ・ウィルム)が主人公。毎日わずかな収入を持ち帰り、妻のアルレッティ(カティ・オウティネン)に手渡します。

アルレッティはマルセルに毎日労いの言葉をかけ、時間をかけて手料理を作ります。マルセルは貧乏ですがこの生活に満足しています。愛犬のライカも頭脳明晰でよく懐いています。

そんなある日アルレッティが病で倒れ、病院に運ばれます。アルレッティは医師から治る見込みはない、余命も長くないと宣告されます。彼女はマルセルには絶対にこのことは言わないで欲しいと医師に頼みます。マルセルは子供みたいだからどうなるかわからないからと必死に頼みます。医師は渋々了承します。

 

一方、港に運ばれたコンテナの中にアフリカのガボンからの難民が潜んでいることが発覚しました。その中の一人の少年イドリッサが逃亡します。警察は必死に探しますが見つかりません。新聞の一面でも大々的に報道されます。

 

そんな時、マルセルが港の淵で昼食をとろうとしていると、海の中から黒人の少年が現れます。驚いたマルセルはすぐに逃亡した難民と気づき、食事を与えようとしますが、ちょうどその時警察が立ち寄ります。警視のモネ(ジャン=ピエール・ダルッサン)です。モネはマルセルを尋問し、不審者を見なかったかと訊ねますが、マルセルは見なかったと答えます。

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マルセルは少年のことが気になり、夜、食事を袋に入れ、中に現金を少々入れて、昼間の港にそっと置いてきました。

 

翌日、仕事から帰ると、愛犬のライカがいません。探すと納戸に少年と一緒にいました。少年は食事のお礼とお金を返しに来たのです。マルセルは少年から色々と事情を聞きだし匿う決心をしました。

ところが隣の住人が、黒人の少年が出入りするのを目撃し、警察に通報してしまいます。モネ警視はマルセルに付きまとい馬鹿な真似はするなと忠告します。

 

マルセルは収監されたイドリッサの祖父に会いに行きます。そしてロンドンにイドリッサの母親が住んでいる、そこに行くつもりだったが捕まってしまった。できればイドリッサをロンドンに行かせてほしいと頼まれます。マルセルはイドリッサを密航させる決心をします。

 

密航には3000ユーロが必要です。もちろんそんな金はありません。そこは港町の貧民街、皆仲良しで、顔も広い。それを利用して人気ロックスターのリトル・ボブ(ロベルト・ピアッツァ)にチャリティコンサートをお願いします。リトル・ボブは妻との和解を仲介することを条件に引き受け、約束を果たします。コンサートは盛大に行われ、資金は集まりました。

ちなみにリトル・ボブは実在のロックローラーです。

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そしていよいよ密航の日。警察の手は家まで捜索に入ってきました。近所の連中のチームプレーで何とかイドリッサを港まで運び船に乗せることが出来ました。しかし、そこに警視モネがやってきます。そして船の中を調べます。イドリッサとモネの目が合います。万事休すか。そこに他の警察官たちがやってきます。モネは中には誰もいないと言って、警官たちを返してしまいます。マルセルはモネにあなたを誤解していたと謝ります。イドリッサは無事ロンドンに向かいました。

 

翌日、マルセルはアルレッティの見舞いに病院に行きましたが、ベッドは空でした。看護師が先生がお呼びですと告げます。不審に思って医師の部屋に行くと、医師たちが不思議なことがあるもんだと頭をひねっています。奇跡が起きたのです。不治の病が治ってしまったのです。

退院して我が家に戻ると、庭には満開の桜が咲き誇っていました。

 

久しぶりにほのぼのとした映画を観ました。マルセルを取り巻く近所の人たちとの交流、老夫婦のお互いを気遣う気持ちなどが随所に見られ、思わず笑ったり涙ぐんだりしてしまいました。

ストーリー的にはよくあるパターンですが、ちょっと違うのは根底に流れるヨーロッパの難民受け入れ問題です。最近では中東、特にシリア難民の受け入れ問題でヨーロッパが揺れていますが、この映画が製作された当時はアフリカからの難民も中東と同じように多かったのでしょう。監督はフランスの難民対策を皮肉っているように思えます。

我が国ではまだまだ他人事のような出来事ですが、近い将来には当事者問題として考えなければいけない時がやって来るでしょう。

 

また、この少年イドリッサがよく躾けられていて、家の仕事から、靴みがきの手伝いまでこなし、何とか世話になった恩返しをしたいという気持ちがひしひしと伝わってきて、意地らしくさえなってきます。

それに愛犬のライカが賢くてかわいい。出演者のタイトルにも堂々と名前が出ているのには驚きました。たぶん有名な犬なのでしょう。インタビュー

 

あと、街中でイドリッサが靴みがきの仕事をしているところを目撃し、警察に電話をする男がいるのですが、この俳優見た覚えがあるのですが思い出せませんでした。あとで調べたらなんとジャン=ピエール・レオでした。彼はゴダールやトリフォーの映画、ヌーヴェルヴァーグ映画の代表的俳優です。まさかこんなちょい役で出ているとは思わずに気づきませんでした。 

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この監督、アキ・カウリスマキフィンランドの監督で2002年には『過去のない男』でカンヌ映画祭のグランプリを受賞しています。

音楽好きで、かつてはザ・クラッシュジョー・ストラマーを出演させたり、この映画でもリトル・ボブを出演させたりしています。映画の中でイドリッサがターンテーブルに乗っているレコードをかけるシーンがあります。流れてきたのは多分ブラインド・ウィリー・マクテルのブルースじゃないかと思われましたが、違っていたらごめんなさいです。

 

何故か1960~70年代のフランス映画を観ているような、懐かしい気持ちになりました。

 


映画『ル・アーヴルの靴みがき』予告編

 

実は先週もキネ旬シアターで『静かなふたり』という映画を観たのですが、感想を書けませんでした。理由は判りません。何故か書けませんでした。そういう事もありますね。

 

それでは今日はこの辺で。