Flying Skynyrdのブログ

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映画『ル・アーヴルの靴みがき』を観る

昨日のキネ旬シアターは『ル・アーヴルの靴みがき』でした。

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監督:アキ・カウリスマキ

主演:アンドレ・ウィルム、カティ・オウティネン、ジャン=ピエール・ダルッサン

制作:フィンランド、フランス、ドイツ、2011年公開(日本 2012年)

 

フランス北西部ノルマンディー地方の港町ル・アーヴルが舞台です。この町でベトナム移民のチャングと共にすでに老境の身ながら靴磨きで生計を立てているマルセル・マルクスアンドレ・ウィルム)が主人公。毎日わずかな収入を持ち帰り、妻のアルレッティ(カティ・オウティネン)に手渡します。

アルレッティはマルセルに毎日労いの言葉をかけ、時間をかけて手料理を作ります。マルセルは貧乏ですがこの生活に満足しています。愛犬のライカも頭脳明晰でよく懐いています。

そんなある日アルレッティが病で倒れ、病院に運ばれます。アルレッティは医師から治る見込みはない、余命も長くないと宣告されます。彼女はマルセルには絶対にこのことは言わないで欲しいと医師に頼みます。マルセルは子供みたいだからどうなるかわからないからと必死に頼みます。医師は渋々了承します。

 

一方、港に運ばれたコンテナの中にアフリカのガボンからの難民が潜んでいることが発覚しました。その中の一人の少年イドリッサが逃亡します。警察は必死に探しますが見つかりません。新聞の一面でも大々的に報道されます。

 

そんな時、マルセルが港の淵で昼食をとろうとしていると、海の中から黒人の少年が現れます。驚いたマルセルはすぐに逃亡した難民と気づき、食事を与えようとしますが、ちょうどその時警察が立ち寄ります。警視のモネ(ジャン=ピエール・ダルッサン)です。モネはマルセルを尋問し、不審者を見なかったかと訊ねますが、マルセルは見なかったと答えます。

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マルセルは少年のことが気になり、夜、食事を袋に入れ、中に現金を少々入れて、昼間の港にそっと置いてきました。

 

翌日、仕事から帰ると、愛犬のライカがいません。探すと納戸に少年と一緒にいました。少年は食事のお礼とお金を返しに来たのです。マルセルは少年から色々と事情を聞きだし匿う決心をしました。

ところが隣の住人が、黒人の少年が出入りするのを目撃し、警察に通報してしまいます。モネ警視はマルセルに付きまとい馬鹿な真似はするなと忠告します。

 

マルセルは収監されたイドリッサの祖父に会いに行きます。そしてロンドンにイドリッサの母親が住んでいる、そこに行くつもりだったが捕まってしまった。できればイドリッサをロンドンに行かせてほしいと頼まれます。マルセルはイドリッサを密航させる決心をします。

 

密航には3000ユーロが必要です。もちろんそんな金はありません。そこは港町の貧民街、皆仲良しで、顔も広い。それを利用して人気ロックスターのリトル・ボブ(ロベルト・ピアッツァ)にチャリティコンサートをお願いします。リトル・ボブは妻との和解を仲介することを条件に引き受け、約束を果たします。コンサートは盛大に行われ、資金は集まりました。

ちなみにリトル・ボブは実在のロックローラーです。

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そしていよいよ密航の日。警察の手は家まで捜索に入ってきました。近所の連中のチームプレーで何とかイドリッサを港まで運び船に乗せることが出来ました。しかし、そこに警視モネがやってきます。そして船の中を調べます。イドリッサとモネの目が合います。万事休すか。そこに他の警察官たちがやってきます。モネは中には誰もいないと言って、警官たちを返してしまいます。マルセルはモネにあなたを誤解していたと謝ります。イドリッサは無事ロンドンに向かいました。

 

翌日、マルセルはアルレッティの見舞いに病院に行きましたが、ベッドは空でした。看護師が先生がお呼びですと告げます。不審に思って医師の部屋に行くと、医師たちが不思議なことがあるもんだと頭をひねっています。奇跡が起きたのです。不治の病が治ってしまったのです。

退院して我が家に戻ると、庭には満開の桜が咲き誇っていました。

 

久しぶりにほのぼのとした映画を観ました。マルセルを取り巻く近所の人たちとの交流、老夫婦のお互いを気遣う気持ちなどが随所に見られ、思わず笑ったり涙ぐんだりしてしまいました。

ストーリー的にはよくあるパターンですが、ちょっと違うのは根底に流れるヨーロッパの難民受け入れ問題です。最近では中東、特にシリア難民の受け入れ問題でヨーロッパが揺れていますが、この映画が製作された当時はアフリカからの難民も中東と同じように多かったのでしょう。監督はフランスの難民対策を皮肉っているように思えます。

我が国ではまだまだ他人事のような出来事ですが、近い将来には当事者問題として考えなければいけない時がやって来るでしょう。

 

また、この少年イドリッサがよく躾けられていて、家の仕事から、靴みがきの手伝いまでこなし、何とか世話になった恩返しをしたいという気持ちがひしひしと伝わってきて、意地らしくさえなってきます。

それに愛犬のライカが賢くてかわいい。出演者のタイトルにも堂々と名前が出ているのには驚きました。たぶん有名な犬なのでしょう。インタビュー

 

あと、街中でイドリッサが靴みがきの仕事をしているところを目撃し、警察に電話をする男がいるのですが、この俳優見た覚えがあるのですが思い出せませんでした。あとで調べたらなんとジャン=ピエール・レオでした。彼はゴダールやトリフォーの映画、ヌーヴェルヴァーグ映画の代表的俳優です。まさかこんなちょい役で出ているとは思わずに気づきませんでした。 

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この監督、アキ・カウリスマキフィンランドの監督で2002年には『過去のない男』でカンヌ映画祭のグランプリを受賞しています。

音楽好きで、かつてはザ・クラッシュジョー・ストラマーを出演させたり、この映画でもリトル・ボブを出演させたりしています。映画の中でイドリッサがターンテーブルに乗っているレコードをかけるシーンがあります。流れてきたのは多分ブラインド・ウィリー・マクテルのブルースじゃないかと思われましたが、違っていたらごめんなさいです。

 

何故か1960~70年代のフランス映画を観ているような、懐かしい気持ちになりました。

 


映画『ル・アーヴルの靴みがき』予告編

 

実は先週もキネ旬シアターで『静かなふたり』という映画を観たのですが、感想を書けませんでした。理由は判りません。何故か書けませんでした。そういう事もありますね。

 

それでは今日はこの辺で。