先日、『フェア・ウォーニングの子供たち』という記事を書きました。最後に、子供たちを書いたら、親父のことも書かないわけにはいかないかな、みたいなことを書きましたので今日は調子に乗ってその親父について少し書いてみようと思います。
フェア・ウォーニングの母体は「ジーノ」です。ジーノはドイツを代表するべヴィメタバンド、スコーピオンズ(Scorpions)に在籍していたギタリスト、ウリ・ジョン・ロート(Uli Jon Roth)の実弟・ジーノ・ロート(zeno Roth)と彼の幼馴染のウレ・リトゲン(Ule Ritgen)が1980年代の中ごろに作ったバンドが元で、そこに当時売出し中のヴォーカリスト、マイケル・フレクシグ(Michael Flexig)が加わって正式に発足しました。
3人はウリ・ジョン・ロートのソロアルバムに参加したりしながらデモテープの制作をしていました。ウレはそれ以前にも、ウリがスコーピオンズ在籍中のレコーディングや、スコーピオンズ脱退後結成したエレクトリック・サンにも参加してウリとの関係は保っていました。
そしてデモテープを何曲か制作して大手レコード会社に売り込みました。大いに興味を持ったEMIが破格の契約金で契約しました。そして正式なドラマーなしでレコーディングを開始し、1986年に待望のファーストアルバム『ZENO』が発売されました。
全11曲中、9曲がジーノ・ロート、2曲がウレの曲です。今聴いても素晴らしいメロディアスハードです。マイケル・フレクシグのヴォーカルはフェア・ウォーニングのトミー・ハートとはまた違った繊細さがあり叙情的なメロディーにぴったりマッチしていました。
ジーノはヨーロッパツアーなども積極的に行いますが、反応は芳しくなく、レコード売り上げも期待ほどではありませんでした。EMIとの契約も終了してしまいました。バンドはセカンドアルバムの制作の取り掛かりますが、マイケル・フレクシグが脱退します。替わりのヴォーカリストとしてトミー・ハートが加入します。さらにドラムにC.C ベーレンス、ギター・ベースにヘルゲ・エンゲルケを迎え再スタートを切ります。しかし、レコード会社も見つからず、ジーノ・ロートもヴォーカルはやはりマイケルが良いとの思いから結局バンドの解散を決意します。こうしてジーノ・ロートはあっさりと第一線から退きます。残った他のメンバーはフェア・ウォーニング結成へと向かい、ジーノ・ロートは音楽ビジネスに懐疑的になり、曲作りに専念するとともに、執筆活動を開始します。結局、彼らの音楽性が、その後のメロハーブームの到来を思うと少し早すぎたのかもしれません。ジーノ・ロートは哲学などにも造詣が深く、哲学書や小説などの執筆に活躍します。そういった思想的なこともあってあまりに商業主義的な音楽ビジネスから1歩退いたのかもしれません。
それから9年の月日が流れ、1987年から1993年までにレコーディングされた曲を集めてアルバムを出そうという話がまとまり、1995年に『Zenology』が発売されました。
このアルバムは新旧メンバーのレコーディングが混ざり合っています。ヴォーカルもトミーが3曲ほど入っています。まとまりがないのでは、という懸念もありましたが、どっこい素晴らしいアルバムです。私などはファーストよりむしろこちらのほうがいいのでは、などと思ったりしています。
これに気をよくしたのか、ジーノ・ロートは3枚目の制作に意欲を燃やします。マイケル・フレクシグを呼び戻し、全曲ジーノ・ロートの作詞(1曲除く)・作曲でヴォーカル以外のパートはすべてジーノ・ロートがこなし(1曲だけドラムでC.C ベーレンス)、1998年に『Listen To The Light』を発表します。
相変わらずの叙情派メロディーでヴォーカルもマイケル節で、ギターもジーノ・ロートが唸っています。息子には負けてはいないぞ、という力のこもったアルバムです。
その後2005年に1983年から1989年までの未発表曲を集めた『Zenology Ⅱ』、2006年に8年ぶりのスタジオ制作『Runway To The Gods』を発表します。残念ながらこの2枚は未購入です。
フェア・ウォーニングのファーストアルバムで取り上げられた「The Heat Of Emotion」という曲を『Zenology』のオープニング曲に持ってきています。ジーノの遺伝子は間違いなく受け継がれています。ジーノ・ロートも完全復活で音楽界に戻ってきました。
フェア・ウォーニングの伯父?にあたる天才ギタリストのウリ・ジョン・ロート(イングヴェイ・マルムスティーンにも大きな影響を与えた)をはじめこの家族は血のつながり以上に、強い結びつきがあるのかもしれません。現にウリのソロアルバムなどのクレジットを見ていると、ジーノ、フェアウォーニングの関係者が顔を連ねています。
早く残りの2枚を聴きたいものです。
それでは今日はこの辺で。